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憲法改正への入口――国民投票法案の行方は
2007.04.05 更新
*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。
憲法改正のためにはどうしても避けて通れない、いわば入口にあたるのが手続き法である国民投票法案だ。自民、公明両党の与党修正案に基いて同法案は、4月13日にも衆院を賛成多数で通過する見込みとなり、その後、参院での審議を経て今国会で成立する公算が強くなった。憲法96条に改正の条件が明記されているのに、そのための投票の仕組みが60年の間つくられてこなかったのである。
国民投票法案は、昨年暮れまで、与党に野党の民主党も加わり修正協議が順調に行われてきた。しかし、12年ぶりに統一地方選と参院選が重なる「政治決戦の年」となった年明け、安倍首相は1月の施政方針演説で参院選の争点に「憲法改正」を掲げることを表明し、そのためには5月3日の憲法記念日までに法案を成立させると明言した。このため民主党が一転、態度を硬化させ、小沢一郎代表の号令一下、法案に反対する姿勢を鮮明にさせた。国民投票法案が後半国会での与野党対決の焦点に浮上したのはこのためである。
しかし、その構図はそんな簡単なものではない。一皮めくると与野党双方とも複雑な党内事情を抱えているからだ。民主党では、憲法改正に賛成の前原誠司前代表ら保守系議員が「手続き法であり、ことさら与党と対決すべきでない」と主張し、自民党では「本番での改正を考えれば、民主党との協調を重視すべきだ」とする中山太郎衆院憲法調査特別委員会委員長ら協調派と、衆院300議席を超す数の力を背景に、「強行突破もやむを得ない」という中川秀直幹事長ら強硬派に二分されている。
自民党の協調派は、民主党が主張する「18歳以上」を投票権者の年齢とすることと、運動を禁止する特定公務員は「選管職員などに限定する」を受け入れたほか、公聴会の日程についても地方公聴会を開くなど譲歩した。しかし現在、民主党執行部は、参院選での社民党との選挙協力を念頭に、「憲法改正以外に国政の重要問題も投票の対象にするという民主党案に賛成しない限りは反対する」(小沢代表)との姿勢を堅持したままだ。9日に党憲法調査会の総会を開き、意見集約を行うことになっているが、いまのままでは与野党激突は必至だ。
では、国民投票法案の行方はどうなるか――7月22日に参院選の投票が予定されているため、6月23日に会期末となる通常国会の会期延長は常識的には考えられないという制約を考慮すると、こうした重要法案は、成立、継続、廃案の3通りしかない。とすると、国民投票法案は、(1)与党だけで衆院を強行採決で突破し、参院で審議ストップなどの混乱を経て、事態収拾のため新たな修正(投票対象に民主党が主張する国政上の重要問題を追加する、またはテレビの有料広告を禁止する時期を投票日前2週間から7日間に改める)を条件に民主党を賛成に回らせ、成立させる、(2)衆院で強行後、参院で審議拒否など混乱が続き、審議時間切れで継続審議となる、(3)衆院で強行後、参院の混乱が収捨集不能となり、ついに時間切れで廃案に追い込まれる――という3つのケースが想定される。
しかし、(1)のケースになるだろう。というのは、衆院、参院ともに強行採決するという異常事態は、ほかの重要法案や参院選への影響を考えると、与党に決定的に不利になることから、とりわけ青木幹雄参院議員会長ら参院執行部が嫌い、最後は民主党との妥協を図ろうとするはずだからだ。与党としては、法案成立という実さえとれれば、中身で譲歩してもいっこうに構わない。自民党にとって改憲は結党以来の悲願だからだ。その意味では、このさい民主党を引きつけておくほうが有利だ。また、かりに強硬策をとっても、民主党の分裂を誘える、と考える向きも自民党の一部にあるのも事実で、結局、自民党は主戦論の旗の下、いっきに突っ込んでいく可能性が高い。
(松本泰高=まつもと・たいこう、政治ジャーナリスト、『日本の論点』スタッフライター)
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