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これからどうなる?−私はこう思う。
どこへ行くのか朝鮮総連
2007.06.21 更新
*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。

 6月18日、東京地裁は、整理回収機構が朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)を相手取り、約627億円の返還を求めた訴訟で、機構の訴えを全面的に認める判決を言い渡した。同時に1審判決の段階で財産の差し押さえができる仮執行宣言も付けられた。これにより、総連が弁済しなければ、中央本部などの関連資産が差し押さえられ、競売の手続きが取られる可能性が出てきており、組織は存亡の瀬戸際に追い込まれたかたちだ。

 この判決は、結果としてみれば、長年続けてきた総連の乱脈経営が問われたもので、自ら墓穴を掘ったともいえる。そもそも弁済金は、破綻した16の在日朝鮮人系の朝鮮銀行信用組合から負担金などの名目で総連に流れた多額の資金が不良債権化したために発生したものだ。1997年、これら朝銀信組の破綻処理のため、国は総額1兆1440億円の公的資金を投入した。今回の訴えは、国に代わって整理回収機構がその債権を回収するために起こしたものだ。総連は、朝銀信組に半ば強制的に負担金を割り振っていたとされ、破綻の主な原因をつくった総連に返還命令が出たのは理の当然だった。

 朝鮮総連(1955年5月・設立)は、前身である在日本朝鮮人連盟を経て、南北朝鮮の統一や在日朝鮮人の権利擁護などを目的につくられた。東京・千代田区に中央本部を置き、都道府県ごとに地方本部、傘下には商工連合会など約40の団体・事業体がある。構成員は、最盛期は約20万人超だったのが、いまは約4万人とみられる(警察当局の調べ)。

 さる5月25日、総連の第21回全体大会(最高意思決定機関、3年ごとに開く)が東京・北区の朝鮮文化会館で開かれ、徐万述議長は「朝鮮総連、在日同胞に対する弾圧と民族差別、人権侵害に反対する運動を力強く展開する」との基調報告を行った。3年前の大会には自民、公明、民主の各党代表が出席、席上、小泉首相の自民党総裁として異例のメッセージが読み上げられたのは記憶に新しい。しかし、ことし政党関係者の出席はゼロだった。

 今回の訴訟にからみ中央本部の移転登記にかかわった緒方重威弁護士(元公安調査庁長官、仮装売買の容疑で取り調べ)が総連について、「在日朝鮮人のよりどころ。大使館のようなもの」と語ったが、実質的には北朝鮮の下部機関であり、50年代には帰国事業の中心的組織だった。総連は日本と国交のない、北朝鮮との外交窓口の役割も果たしてきた。現に、東京都が03年5月に東京本部に固定資産税を課すまでは、在外公館扱いの非課税だった。

 総連は60年代以降、健康保険や公営住宅に入れないといった在日朝鮮人に対する差別に対し、猛烈な抗議運動を展開、なかでも商工会と国税庁の取り決めで、一部の減免を行うなど納税に便宜を図ることもあった。いっぽう母国北朝鮮との関係で日本政府が冷淡になったのは、工作員の潜入、万景峰号を利用した不正送金などの非合法活動に総連が関与しているのではという疑いがつきまとっていたからだ。総連は、金日成政権の70年代以降は「集金マシーンと化した」といわれるように、経済難の北朝鮮をとくに資金面で支えた。パチンコ店や焼肉店を経営する経済人がその中心を担い、バブル期を通じては、朝銀信組が土地買収などのパイプに使われたといわれる。

 総連が危機的状況に陥ったのは、皮肉にも小泉首相の初訪朝(02年9月)がきっかけになった。金正日総書記が日本人拉致を認め謝罪したことが、在日朝鮮人に大きな衝撃を与えた。国家による犯罪は、祖国への信頼をいっきに失わせ、総連からの脱退者は2万人を数えたという。当然、日本社会の視線は厳しくなり、安倍政権になってからは、北朝鮮に対する経済制裁措置が強化され、「北朝鮮人権法」も制定された。加えて核開発の強行は、北朝鮮のイメージを最悪の状態に陥れた。

 こうした事態について、姜徹大阪経済法科大学客員教授は、「総連が主要施設を立ち退けば、民族教育と自主性の拠点を失い、日本に帰化する流れが強まる一方、弾圧と受け止める人が過激な行動に走ることが心配だ」と危惧している(東京新聞6月19日付)。

 利権を目当てに陰に陽に総連を支援したかつての特定政党の影はいまやない。カネが回らなくなり、影響力の衰えた総連は、これまで通り北朝鮮に忠誠を尽くすグループと、総連や母国と距離を置くことで独自の生き方を模索するグループに二極化していくとみられている。金総書記の健康問題もからんで、北朝鮮は、いまのままでは国際社会で孤立化がますます進む。当然、北朝鮮の動向が影響するが、これからは、これまで以上に、日本人と「共生」する運動体としての立て直してを迫られるだろうと指摘する識者は多い。

(松本泰高=まつもと・たいこう、政治ジャーナリスト、『日本の論点』スタッフライター)


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