*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。
日経新聞の調査によると、35歳から49歳の働き盛りの約7割が自分の年金記録に不安をもっているという(7月4日付夕刊)。しかしその不安を解消するため何らかの行動を起こした人は、全体の1割強しかいないと調査は伝えている。
具体的な行動の中身は、社会保険庁のホームページで年金加入状況を調べた人が41%、直接社保庁の窓口に出かけて加入状況を調べた人が21%、会社の担当部署に問い合わせた人が4%である。
年金記録漏れがこれだけ問題になっているのに、なぜ行動を起こす人が少ないのか。年金相談の待ち時間が1時間は当たり前と聞けば、答えは簡単で、仕事が忙しくて日中、社会保険事務所へ足を運ぶ時間がとれないからである。古い年金手帳など、自らの年金支払い記録などを探し出し、それらを整理する手間もばかにならない。さらに、何とか時間をやりくりして社会保険事務所に行ったとして、もし自分の加入記録が宙に浮いていたことがわかったら、いったいどういう申告手続きをすれば復活するのか、考えるだけでうっとうしくなるのが普通だろう。健康診断をして癌など見つかると困るから検査にいかないという人がいるが、それに似ている。
年金手帳さえあれば、すぐに確認できるではないかと思う人がいるかもしれないが、じつは個人事業所や中小・零細企業に勤める人たちで、20歳以降、とぎれることなく社会保険に入っているケースは案外少ない。一定以上の規模の事業所に厚生年金加入が原則義務づけられたのは1954年。親会社の健保組合に入れてもらって、厚生年金保険料と健康保険料を払っていたケースを除いて、従業員が5人以上の事業所はすべて(法人は1人でも加入義務あり)厚生年金と健康保険に加入することになった。しかし実際には、二階部分の被用者年金の支払い負担がきついので、小さな事業所では、労働保険(失業保険)だけに従業員を入れて、実際には国民年金+国民健康保険で働いてもらうということがよくあった。したがって小さな会社では、いまは厚生年金に入っているが、かつて国民年金だったという人、あるいは転職を繰り返したため、両方の年金保険を行き来していた人は、かなりの数におよぶはずだ。当然小さな会社なら、すでに倒産しているケースもあるだろうし、給与から保険料を徴収したものの、会社が払っていないことだって十分ありうる。
年金受給開始の申告遅れは5年までという時効が撤廃され、保険料の支払い領収書がなくとも客観状況が示せれば救済する案も固まりつつある。さらに、給与から天引きされたのに会社側が納入しなかったために未納扱いになっていた人を救済する特例法も、秋には成立しそうだ。
つまり、年金記録が心配だけど、どんな行動をとれば有効なのかわからないと感じている人たちは、ことの推移を見て、いろいろなことが決まってから社会保険事務所に行っても遅くはないと考えているのである。しかし大切なのは、この人たちは大企業の従業員ではなく、中小・零細企業に勤める人たちだということである。日本の企業の90パーセント以上が中小企業、あるいは零細企業だ。商工会議所や経団連も全国にようやく相談所を立ち上げ、会社単位の相談を受け付けはじめた。
小さくても会社によって、社会保険手続きを社会保険労務士に頼んでいる事業所がある。社保庁の杜撰さをいいつのっても、腹が立つだけで解決にはならない。この際、税理士が会社の経理のことで税務署とやりあうように、彼ら社労士の手を借りて記録の再確認を会社単位で行うことにしたらどうか。社労士の腕の見せどころだし専門家が代理で来れば、社会保険庁もいい加減な対応はできまい。
(舘石淳 たていし・じゅん=『日本の論点』スタッフライター)
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