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これからどうなる?−私はこう思う。
「最低賃金」のアップで格差は縮小に向かうか
2007.09.27 更新
*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。

 新たに発足した福田政権には、安倍政権から持ち越された多くの課題が待ち受けている。その一つが格差対策だ。厚生労働省が発表した推計によると、住所を持たず、常時ネットカフェなどで寝泊まりしている“ネットカフェ難民”の数は、全国でおよそ5400人。そのうち約2700人はパートやアルバイト、日雇い派遣などの非正規労働者であり、約1300人は失業者、約900人は無業者(ニート)だという。彼らへの聞き取り調査によると、住所を持たない理由を「仕事を辞めて家賃が払えなくなった」「仕事を辞めて寮や住み込み先を出た」と答えた人が約半数に達した。アパートを借りようとすれば、敷金、前家賃などの一時金がいる。もちろんそんな預金はない。一定以上の安定収入がないために住所を持てず、住所がないために正社員はもちろん、安定した長期の仕事になかなか就けない。だから収入が乏しい。彼らはそうした悪循環に陥っているのである。

 そういう低所得者層の収入の下支えをするのが、「最低賃金」だ。文字どおり企業側が労働者に支払う時給の下限を指すが、現在の最低賃金は673円。毎年、厚労相の諮問機関である「中央最低賃金審議会」が引き上げ額の目安を提示し、それをもとに各都道府県の地方審議会が金額を決定することになっている。全国平均で見ると、バブル以前はもちろん、90年代のバブル以降も一貫して上昇し続けてきたが、ここ数年はほぼ横ばい(2〜4円程度の上昇)で推移している。

 ところが今年は、8月に、中央審議会が引き上げの目安を「14円」と設定し、これを受けて、各都道府県とも大幅に引き上げた。東京と愛知はぐんと上げて20円、山形や愛媛、大分などはもっとも小幅だが、それでも7円の上昇だ。これによって、最低賃金の全国平均は来月中旬ごろから687円になる公算だ。

 引き上げの背景には、いわゆる「ワ―キングプア」の解消を図るとともに、生活保護の支給額との整合性を図ろうという狙いがある。最低賃金で働いて得られる収入が生活保護を下回るのなら、働かないほうがマシ、ということになるからだ。現実に、11の都道府県でこの逆転現象が起きていた。ただ今回の引き上げでも、なお9都道府県ではこれは解消されない。20円引き上げる東京も例外ではない。この状況は早急に改める必要があろう。

 安倍政権は今の臨時国会に、「生活保護水準に配慮する」という趣旨を盛り込んだ最低賃金法改正案を提出する予定だった。福田政権もこれを引き継ぐことになるだろう。一方、民主党は先の参院選で「3年以内に最低賃金1000円を目指す」とのマニフェストを掲げた。今後は、引き上げを前提として、その額とスピードを競うことになりそうだ。

 ただし、上がれば上がるほどよい、というほど単純なものではない。よくいわれるように、仮に大幅に引き上げられた局面で、企業が人件費の維持または抑制を考えれば、今度は削りやすい人員を削る。つまり、また失職する者が出てきて、より格差が拡大していくことになる。企業には、人員が不足しても、ITに置き換えるなり海外に移転するなり、あるいは残された人員により負荷をかけるなり、“オプション”はいろいろある。ちょうど、原油価格の高騰で代替エネルギーの普及が進んでいるのと似ている。

 もっとも有効なのは、一部にいまだに残る年功序列制によって必要以上の恩恵を受けてきた中高年正社員の給与を削り(またはリストラし)、それを最低賃金上昇の原資に充てることかもしれない。これなら、正規雇用と非正規雇用の“格差”も縮小される。もちろん最低賃金の大幅引き上げに熱心な労働組合が、こうした方針に賛同すればの話だが。

(島田栄昭 しまだ・よしあき=『日本の論点』スタッフライター)


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