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全入時代、大学の国際競争力はどこまで落ちるか?
2008.02.08 更新
*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。
大学受験シーズンの真っ最中である。これから国公立大学の2次試験と私立大学の一般入試がはじまるが、「厳しい受験戦争」という言葉はいっこうに聞こえてこない。“大学全入”の時代をむかえ、大学や学部さえ選ばなければ、誰でも大学に進学できるようになったからだ。すでに大学入学者の42.6%が一般入試を受けず、推薦入学や一芸入試などのAO(アドミッション・オフィス=入学試験事務局)入試で入学している。いまや大学がらみの競争といえば、もっぱら生き残りを賭けた大学間の“サバイバル戦”を指すようになったのである。
受験戦争が影をひそめたことに加え、授業時間を大幅に削減した“ゆとり教育”の実施によって、日本の生徒は勉強をしなくなった。そのため、生徒の学力は著しく低下した。OECDの「生徒の学習到達度調査」(PISA)によれば、2000年調査では数学的な能力を計る「数学的リテラシー」が世界第1位だったが、03年は6位に、06年は10位に転落し、教育関係者に衝撃を与えた。さらに「総合読解力」は、この6年間で8位から15位に、「科学的リテラシー」は2位から6位に落ちるなど、全分野で順位を下げる結果を招いてしまったのである。
学力の低下は、何をもたらすのか。英国「The Times」誌の別冊「THES」が07年11月に発表した『世界大学ランキング2007』によれば、日本の大学はベスト10に1校もランクされていない。1位のハーバード大学、2位のケンブリッジ大学など、10位までに米英の名門校がずらりと並ぶ。日本の大学で100位以内に留まっているのは、17位の東京大学、25位の京都大学、46位の大阪大学、90位の東京工業大学といった国立の4校にすぎない。200位以内の大学は、私立の慶応義塾大学(161位)と早稲田大学(180位)の2校を含め、わずか11校だった。このTHESランキングは04年に開始された。東大は、初回調査で14位だったが、その後3年連続で順位を下げた。06年にはアジアトップの座を14位の北京大学に明け渡し、19位にまで転落したのである。
THESランキングでは世界の大学を、研究力(研究者の評価40%、教員一人当たり論文引用数20%)、就職力(雇用者側の評価10%)、国際性(外国人教員比率5%、外国人学生比率5%)、教育力(教員数と学生数の比率20%)という観点から評価している。研究力に重点が置かれていることから、英語で論文を発表する国の大学が高く評価される傾向がある。アジアの大学には不利な面があるのだが、中国の上海交通大学が調査する『世界のトップ500大学』の調査でも、ベスト100のほとんどを米国の大学が占める結果となった。評価の基準は、ノーベル賞などを受賞した卒業生と教員数、「ネイチャー」「サイエンス」誌などへの掲載論文数、論文の被引用数などである。07年のトップ100をみると、20位の東大、22位の京大、67位の阪大など、日本の大学では国立大が6校しか入っていない。
日本の研究業績は、世界に遅れをとってきたわけではない。論文の占有率では、長らく米国に次いで2位を維持してきた。だが、論文がどれだけ引用されているかを表す「相対被引用比率」(被引用数の占有率を論文数の占有率で割ったもの)になると、米国、英国、ドイツ、フランスに次ぐ5位にすぎない。しかも中国とロシアが、猛烈な勢いで日本に迫っている。日本の研究者数も、すでに中国に抜かれ世界3位になった。中国では、膨大な科学技術予算を投じ、飛び級制度によるエリート教育を実施している。日本の大学が中国の大学に追い越されるのは、まさに時間の問題といえるだろう。
少子化が進むなかで、日本の各大学は研究機関の充実よりも、学生集めに躍起になっている。今後は、“大学全入”と“ゆとり教育”の影響が顕在化し、大学の国際競争力をさらに低下させるのはまちがいないだろう。
(福本博文 ふくもと・ひろふみ=ノンフィクション作家)
関連論文
筆者の掲載許可が得られない論文はリンクしていません。
96年以前の論文については随時追加していきます。ご了承ください。
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私の
主張
(2006年)ゆとり教育の見直しには学力低下だけではないもっと大きな理由がある
苅谷剛彦(東京大学大学院教授)
(2006年)ゆとり教育の見直しは拙速。「詰め込み」と「競争」では学力は向上しない
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(2004年)学生たちよ、清く正しく生きようとするな!真剣にぐれて生きよ!
中島義道(電気通信大学人間コミュニケーション学科教授)
(2003年)家庭環境の差が学力に表れる――新しい学習方針が見落とした決定的事実
苅谷剛彦(東京大学大学院教育学研究科教授)
(2003年)読み書き計算の反復学習が子どもの「学力」と「生きる力」をつけるわけ
陰山英男(小学校教諭)
(2003年)わが志木市は丁寧な授業、「二五人学級」をいかにして実現させたか
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(2002年)「ゆとり」教育は愚かな人体実験である。「つめこみ」こそが子どもを救う
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寺脇 研(文部省政策課長)
(2001年)ゆとり教育による学力低下は必至――大学は入試レベルを維持すべし
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議論に勝つ
常識
(2006年)[ゆとり教育についての基礎知識]
[基礎知識]学力低下の本当の原因は何か?
(2004年)[大学大衆化を考えるための基礎知識]
大学全入時代、大学はどう変わるか?
(2003年)学力低下と教育改革についての基礎知識
[基礎知識]「学力低下」論争は教育現場をどう変えたか?
(2002年)ゆとり教育についての基礎知識
新学習指導要領の導入は小中学校を変えるのか?
(2001年)「ゆとり教育」是非論の争点を整理するための基礎知識
(2001年)大学生の学力向上を図る方法を探るための基礎知識
(2000年)大学生の学力低下の実情と原因を探るための基礎知識
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