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これからどうなる?−私はこう思う。
第三次石油危機は到来するか――原油200ドル時代の意味するもの
2008.07.04 更新
*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。

 7月3日のニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、根強い需給ひっ迫懸念を背景に続伸、米国産標準油種WTIの中心限月8月物は、同日早朝の時間外取引で、一時1バレル=145.85ドルまで値を上げ、2日連続で取引途中の過去最高値を更新した(時事通信)。

 5年前の2003年ごろまでは1バレル20ドル程度で推移していたのを思い起こすと、隔世の感がある。はたして、原油200ドル時代は到来するのか。

 この年初に100ドルを超えたばかりのニューヨーク原油先物相場が、短期間に40%も上がった最大の理由は、機関投資家による、市場へのマネーの流入である。ニューヨーク原油先物市場が創設された83年当時、市場の参加者は石油会社や航空会社など、実際に石油を生産したり、消費する企業だった。それが現在では8割以上がヘッジファンドや商品ファンドといった、投機資金で占められるようになった。これらの資金がこの数年のあいだに、米国の原油在庫の減少や中東危機、さらには中国をはじめとする途上国の需要増大を材料に、投資資金を積み増してきたのである。

 近年の動向でとくに注目されるのは、昨年夏以降、世界に波及したサブプライムローン問題による、米国発の金融不安である。危機を封じ込めるため米連邦準備理事会(FRB)が昨年来、利下げを重ねた結果、金融が緩和され、大量のマネーがあふれた。米国景気の先行きに影がさし、株価が低迷し始めたところで、行き場のないマネーがどっと原油市場に流れ込んだのだ。

 米投資銀行ゴールドマンサックスは、5月16日、世界の国内総生産は、新興国の牽引によって3.8%の成長を続けているのに対し、原油供給の伸びが1%にとどまっているというのを根拠に、年後半の原油価格見通しを、107ドルから141ドルに上げた。同じくクレディ・スイスが91ドルから120ドルに、投資家のブーン・ピケンズ氏も年内に150ドルとなると指摘した(日経新聞5月22日付)。これらの予測が、さらに投機資金を呼び込むことになったのはいうまでもない。

 しかし、短期的な価格の高騰が投機資金によるものだとしても、それが中長期の傾向を暗示しないとはいえない。実際、過去5年の原油価格の上昇は右肩上がりの一本調子だったし、投機資金が問題とされたのも今回が初めてではないからだ。

 高騰の根本的要因としてあげられるのは、いうまでもなく中国、インドをはじめとする、新興経済発展諸国の高度経済成長にともなう石油需要の急激な拡大だ。先進国が経済を引っぱっていた90年代までは、経済がサービス化、ソフト化していたことから、経済成長イコール、エネルギー・資源の増大とはならなかった。また、それらの国々の人口も7億人程度であり、地球全体から見れば限られていた。これに対し新興諸国の人口は、30億人に達する。これらの国々が持続的な高成長過程にはいったことで、インフラ整備などに必要な新たな資金需要が喚起され、その累積的効果が、需給ひっ迫となって市場に現れるようになった。「中国などが先進国に向かうまでの過渡期の現象とはいっても、中国・インドだけで25億人となると、その期間も10年や15年では済まない」(柴田明夫・丸紅経済研究所長、「エコノミスト」7月1日号)という見方だ。

 このまま原油価格の上昇がつづけば、200ドル時代の到来も視野の内に入る。では200ドル時代は、どのような事態を招来するのか。最大の影響は、遠く隔たった国との貿易にあらわれるという。輸送費のコストアップによって貿易相手は近隣諸国に限られることとなり、グローバリゼーションは後退を始める。そして世界の航空需要は4分の1が消失、航空業界は大幅な再編を余儀なくされるとともに、閉鎖される空港も続出する。また、自動車産業をはじめとする輸送関連業界すべてが、構造的な変化に直面するという。いっぽう、脱炭素社会指向とあいまって、自転車やスクーターなどが見直されるとともに、ビデオ会議システム業界は活気づくという(「ニューズウィーク 日本版」6月4日号)。

 遠い外国との貿易ができなくなると、自動車や、多くのハイテク製品を輸出して外貨を獲得してきた日本や韓国などは、大打撃を受ける。それでなくとも、これまでの石油をはじめとする資源価格の高騰で、日本の場合、07年度で21兆円の所得が海外へ流出したとする試算(水野和夫・三菱UFJ証券チーフエコノミスト、「エコノミスト」7月1日号)もある。

 メタンハイドレードなどの日本近海に眠る資源の採掘や、燃料電池などの未来技術の開発といった石油に代わるエネルギー革命の進展に時間がかかることを考えれば、この先、人々の生活態度は、大きな変更を迫られることになるのは間違いない。

(青山和樹 あおやま・かずき=フリージャーナリスト、「日本の論点」スタッフライター)


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