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これからどうなる?−私はこう思う。
「喉元過ぎれば……」――米国経済における楽観的シナリオ
2008.07.18 更新
*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。

 米国経済の先行き不透明感が、あらためて増大している。ドル安傾向と空前の原油高・穀物高によるインフレ懸念が高まる一方で、住宅価格は下げ止まらない。先ごろは政府系住宅金融会社2社の経営悪化が表面化した。これを受けてFRBは2社への資金供給の拡大を、また、財務省は必要に応じて公的資金の注入を行うとの緊急救済策を打ち出した。だが規模があまりにも大きすぎるため、効果は未知数だ。場合によっては、さらなる金融不安やドル安・株安を誘発するおそれがある。

 悲観論は容易に展開できるが、楽観論はないのか。昨今の米国の状況を、しばしば日本のバブル崩壊当時と比較する人がいるが、大きく違う点がある。日本の住宅ローンの多くが「リコースローン」であるのに対し、米国のそれは「ノンリコースローン」であるということだ。家を買ったものの、ローンを払いきれなくなり、売り払わなければならなくなったとする。このとき、家の価値が下がって売却価格がどれほど安くなっていたとしても、当初のローンは完済しなければならない。これが「リコースローン」で、日本人にとっては当たり前の感覚だろう。だからバブルが崩壊した後、家をはじめとする財産をすべて処分してもなお、莫大な借金を背負った人が少なくなかった。ローンを回収しきれなかった(つまり不良債権を抱えた)金融機関側にとっても打撃だったが、これが個人の活力をも大いに削ぐことになった。

 これに対して「ノンリコースローン」の場合、責任は個人にまで及ばない。売却時に価値が下がっていたとしても、それを金融機関側に売った時点でローンは解消されるのだ。つまり持ち家を出ていくだけで、クルマも家具も預貯金も失うことはない。その“気楽さ”から、米国では低所得者でも立派な家を持つことができたのである。しかも住宅価格はほぼ一貫して右肩上がりだったから、しばらく住んでいるだけで資産が増えた。その差額分を担保に新たな借入れを行う「ホームエクイティローン」は、米国の個人消費を3%程度も押し上げていたといわれている。高金利のサブプライムローンのような商品は、そうした試算の値上がりを前提に、高格付け・ハイリターンの商品として証券化され、世界中にばらまかれたわけだ。

 そして住宅価格が下落に転じるやいなや、世界中に信用不安が広がってしまった。おかげで、金融機関が被った損失は計り知れないが、ローンを払えなくなったからといって、少なくとも彼らは、身ぐるみ剥がされたわけではない。家と将来的な値上がり益を失っただけで済んだのである。雇用情勢の悪化や資源高など、個人をめぐる環境がいいとはいえないが、住宅価格さえ反転すれば、もともと個人消費の旺盛な国柄だ、消費はしだいに増大し、金融は安定化し、景気回復の道筋が見えてくるのではないだろうか。それはとりもなおさず、日本経済、ひいては世界経済の復興を意味する。

 住宅価格の反転がいつになるか、予想はつかない。しかし、将来的にずっと下がり続けるとは考えにくい。日本と違って移民を受け入れている米国では、今後も人口が増え続けていくからだ。米国CSIS(戦略国際問題研究所)の予測によると、2030年時点でも出生率は2.0をキープし、総人口は3億7000万人に達するらしい(現在は約3億人)。しかも、産業と消費を支える労働年齢人口(15〜60歳)が05年時点より14%増えているという(ちなみに日本は18%減)から、必然的に、住宅への需要も高まるはずである。そのとき、あらためて「ノンリコースローン」や「ホームエクイティローン」の仕組みが彼らの下支えになるだろう。もっともその結果、住宅バブルが生まれ、クラッシュし、世界中に信用不安をまき散らし……、というどこかで見た光景が繰り返されないともかぎらないが。

(島田栄昭 しまだ・よしあき=『日本の論点』スタッフライター)


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