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オバマ氏の考える対日政策とは?
2008.07.31 更新
*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。

 先頃、バラク・オバマ上院議員が欧州と中東を歴訪した。ドイツ・ベルリンでは戦勝記念塔の周りに20万人の群衆を集めたが、ヨーロッパにおける歓迎ぶりが選挙にどの程度影響するかは定かではない。しかし、少なくともオバマのスター性が証明されたことは確かだ。

 オバマのベルリン演説には、彼の対日政策を知るうえでいくつかのヒントが示されていた。注目すべきは二点ある。ひとつは、国際協調路線。もうひとつは、テロとの戦いへの強い決意である。これを合わせて考えるとき、ドイツのアメリカへの対応ほど参考になるものもない。

 ドイツの世論は、日本と同じように海外での武力行使に慎重である。それでもドイツはNATOの枠組みのなかで海外に軍を派遣しており、アフガニスタンにも約3500人の部隊を送った。そしてこれまでに約30名が命を落としている。国民の間には、ブッシュ政権が始めた戦争になぜドイツが協力し続けるのか、という批判が根強い。にもかかわらずドイツ政府は増派に応じる姿勢を示している。しかしそれだけの犠牲を払っても米国のドイツに対する見方は厳しく、ブッシュ政権の元スタッフは「人口8000万人の富裕な国なのに、しみったれた協力だ」と切り捨てた。ドイツが治安の悪化している東部・南部への派遣を渋っていることに不満があるからだろう。

 アフガニスタン情勢は昨年から悪化の一途をたどっている。オバマはイラクよりもアフガニスタンに兵を振り向けるべきだと主張する一方で、NATO諸国に応分の追加派遣を求めている。後者に関してはブッシュ大統領もマケイン上院議員も同じ意見だ。

 筆者が所属するシンクタンクの米国研究チームが6月に訪米した際、ちょうどライス国務長官がヘリテージ財団で対東アジア政策についての演説を行った。スピーチ自体は新味に欠けるものだったが、質疑応答は興味深いものだった。対テロ戦争への欧州諸国の貢献について聞かれたライスは、アフガニスタン作戦が平和維持(peace keeping)活動ではなくて平和構築(peace making)活動であることを、NATO諸国は国民にしっかり説明して、もっと積極的に協力すべきだと述べた。これこそ2006年以降のブッシュ政権の主張であり、米国流の国際協調路線の本質である。オバマもこれには異論があろうはずがない。対テロ戦争に関しても、オバマとブッシュとの間に大きな違いはないと言ってよい。

 昨年4月の安倍首相、11月の福田首相の訪米に際して、オバマは特別に歓迎のコメントを発表した。オバマはそこで、日本を「真のパートナー」と位置づけ、アジア太平洋を超えて世界レベルで日本が協力するよう「期待している」と述べた。これはオバマが対日関係を「重視」していることの証だと日本では受け止められた。マケインが「日本重視」といわれるのも、外交演説や論文でしばしば日本への高い期待を示しているからである。この「期待」がいつの間にか「重視」という言葉に変換されてしまうところに、じつはこの国のメディアや政治の問題が潜んでいる。「期待」という言葉はあきらかに「要求」の意味で使われているのである。

 オバマもマケインも、日本に対して、グローバルな安全保障問題に積極的にかかわるよう「要求」しているのだ。それはアフガニスタンやイラク問題にとどまらない。次期政権最大の外交課題の一つは対中政策だ。中国のアフリカやラテン・アメリカへの進出ぶりに、米国はかねてから警戒感を強めている。米国は6番目の地域統合軍であるアフリカ軍(AFRICOM)を昨年設立した。軍事面よりも外交面を重視した「新しいタイプの統合軍(a different kind of command)」を標榜しているAFRICOMには、当初から中国対策として設置されたのでは、という指摘があった。これは誇張された見方だが、だからといって中国対策として使わないはずはない。

 福田首相が、「日米同盟とアジア外交のシナジー」をアピールしている一方、米国は対中政策をグローバルな文脈で捉えている。そして米国の有力な次期大統領候補はすでに、日本にそうしたグローバルな舞台での役割を求めているのである。しかし、日本では対テロ特措法、イラク特措法、自衛隊海外派遣に関する恒久法のすべてが、ねじれ国会と連立パートナーの意向に左右される状況にある。米国の目には、福田政権がそれらを言い訳に使っているように映って不思議はない。

 前述のとおり、ドイツの世論は軍の海外派遣に厳しい。しかし、最近では明らかな変化が見られる。20歳代から30歳代の一般国民、軍人、そして政治家の間では、武力を伴う国際協力活動に積極的に貢献すべきだとの意見が高まっているのだ。とくに政治家の世代間ギャップは大きいと言われている。その意味でドイツは、一歩踏み出したかたちの武力をともなう国際協力活動へ、心の準備が整いつつあるといってよい。オバマに群がった20万人が「準備のできた」ドイツ人であるとすれば、米欧同盟は今後さらに強固になるだろう。はたして日本はどうするのか。外交政策、とりわけ安全保障を論ずるとき、まずは「重視」だの「軽視」だのといった表現をやめることから始めてはどうか。

(堀 圭一 ほり・けいいち=社団法人アジアフォーラム・ジャパン研究員)


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