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これからどうなる?−私はこう思う。
景気回復か経済縮小か――財政支出は何を引き出すか
2008.09.11 更新
*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。

 自民党総裁選と、その後に控えている総選挙の争点の一つは経済財政政策だ。とりわけ注目を集めているのが、景気対策を重視した財政出動である。ただ残念ながら、内外のメディアや市場関係者のあいだで、この政策の評判は芳しくない。

「マンデル・フレミングモデル」と呼ばれる経済理論がある。この理論を、資本が国内外を自由に往復し、変動相場制の為替を採用しているいまの日本に当てはめると、次のようになる。景気を浮揚させようと思って財政出動を行うと、赤字国債発行→金利上昇→円高→輸出減・輸入増→資本は海外へ、という経路を辿る。つまり借金をして国内にお金をバラまいても、その分は日本を素通りして海外に流出するだけで、景気がよくなるどころか、結局はただでさえ莫大な借金が、さらに膨らんでしまうというわけだ。

 もちろん、現実が理論どおりになるとはかぎらない。しかし、世界の投資家がきわめて“現金”であることも事実である。その国の政策がおかしいとか、将来的なリスクが大きいと判断すれば、いっせいに資金を引き上げる。いささか論は飛躍するが、その典型例がロシアだ。BRICsの一角として空前の好景気を誇ってきたロシア経済は、ここへ来て急激に失速している。世界経済減速の影響もあるが、拍車をかけたのがグルジアへの軍事介入だ。ロシア企業の主要株式指数であるRTSは、介入直後からあっという間に下落幅を広げ、昨今は5月のピーク時の半値強で推移している。通貨ルーブルやルーブル建て債券も下落基調だ。政治的にはいまなお絶大な支持を得ているプーチン・メドベージェフ政権だが、国内外の投資家からはそっぽを向かれているのである。いくら強権を誇る現政権も、投資家の心理までコントロールすることはできない。これはロシア経済にとって、きわめて深刻な事態である。最近になって譲歩の姿勢を見せはじめたのも、米欧首脳らの批判をかわせなくなったというより、資金流出が続く市場の動きを無視できなくなったためだ、といってよい。だとすれば、政治の民主主義とは別の“金融の民主主義”がうまく機能したということになる。

 日本はどうか。ロシアの例にならえば、国民的人気をバックに選ばれた宰相でも、投資家からは、かならずしも支持されるとはかぎらないのだ。総選挙のあとも“バラマキ”と変わらない経済政策が実行されれば(あるいはそういうメッセージが内外に伝われば)、資金は日本からクモの子を散らすように逃げていく可能性がある。政治家はそうした足音にそうっと耳を傾けることができるだろうか。そうしなければ、日本はふたたび失われた年月を歩むことになりかねない。

(島田栄昭 しまだ・よしあき=『日本の論点』スタッフライター)


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