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これからどうなる?−私はこう思う。
石油輸出国の減産による歯止め効果――価格の反転上昇は不況に追い討ち
2008.12.11 更新
*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。

 原油価格の下落に危機感を強めている石油輸出国機構(OPEC)は、11月29日、カイロで緊急会合を開き、あらたな減産をとりあえず見送った。しかし、12月17日のアルジェリアで開かれるOPECの総会では、もう一段の減産に踏み切る公算が高い。石油輸出国にとって、03年から続く原油高騰は、歳入を大きく増やしたものの、それにともなって開発投資などの歳出も増大させていて、価格の大幅下落は、財政収支の悪化につながるからだ。

 OPECは10月に減産を決定、11月から日量150万バレルの減産(世界の1日当たり生産量の2%弱、OPEC諸国に限っては5%の大幅減産)に乗り出したが、ニューヨーク原油先物のWTIはその後も下落、12月5日には41.56ドルと2005年1月以来の安値を付けた。

 近年、ロシアなど非OPEC諸国の生産量が増えた結果、OPECの生産量は全体の4割程度と影響力が落ちているとはいえ、さらなる減産によって価格を反転上昇させることにでもなれば、日本のような純石油輸入国では、不況にさらに追い討ちをかけることになる。

 原油価格は02年までは20〜30ドルと低水準で安定していた。だが03年3月に開始されたイラク戦争は、価格を一本調子で上昇させることになった。さらに05年8月末、メキシコ湾を襲ったハリケーンが米国の油田と製油所にダメージを与えたのを引き金に、原油は歴史上初めて70ドルを突破した。中国、インドなどの新興国需要の伸びが目立つようになったのもこの頃で、価格上昇を後押しした。

 原油価格の決定要因が変わったのは07年。ヘッジファンドなど機関投資家があらたに原油、鉱物資源などの商品市場への投資を積極化し始めたことによる。それまで原油の急騰は、戦争など地政学的要因によるものはあっても、全体としては需給状況や在庫量で価格は形成されてきた。9月に80ドル、10月に90ドル、08年1月には100ドルを突破した。

 原油価格の相次ぐ高騰は、先進国を中心に需要を減退させた。そのうえ、サブプライムローン問題の深刻化による米国証券大手リーマン・ブラザーズの破綻を受けて、米国の実体経済の悪化に対する懸念がいっきょに顕在化。加えて、米国当局による金融株の空売り規制をきっかけとしたドル相場の底打ち、投機に対する監督強化の動きによって、原油価格はまたたくまに大幅反落した。ニューヨーク原油先物のWTIが史上最高値147.27ドルを付けたのは7月11日のことだが、その後わずか4カ月あまりの間に7割も値を下げたのである。

 たしかに原油高は産油国に大きな富をもたらした。07年だけで、中東の湾岸産油国に落ちた原油輸出収入は3000億ドル。空前の財政黒字は域内開発を活発にし、2兆ドルに上るプロジェクトが組まれた(日本経済新聞12月6日付)。急増した歳入に見合って歳出も拡大した。その結果、OPEC加盟国にとって「70ドルを下回るような水準は、健全な財政状況を維持する上で危険信号がともっている状態」(大越龍文野村證券シニアエコノミスト、「週刊ダイヤモンド」11月15日号)になってしまったのである。ちなみにイランでは今年度100億〜150億ドルの財政赤字が生じるといわれる。OPEC以外でも、ロシアの国策エネルギー資源会社であるロスチネフは資金繰りが悪化、政府からの緊急融資を受ける予定だ。

 いっぽう原油価格の下落は、石油輸入国にとっては景気の刺激材料となる。永浜利広第一生命経済研究所主席エコノミストは、今後、為替が1ドル100円、原油価格が50ドルで推移した場合、09年度の日本産業全体のコスト削減効果は7.5兆円。家計部門ではガソリンや電気料金の値下げなどを通じて年間3万7147円の負担軽減になる(「週刊エコノミスト」11月25日号)と試算している。日本と同様、海外資源依存度が高いOECD各国にもそれに近い効果があると考えれば、世界全体に与える景気刺激効果は少なくない。

 国際エネルギー機関(IEA)が5日発表した2013年までの世界のエネルギー需給見通しによると、景気の低迷と省エネにより、日米欧の石油消費は13年まで一貫して減り続けるという。OECD加盟国の09年の需要は、今年の実績見通しにくらべ1.7%、米国は2.2%と大きく減少している。ここ数年世界需要は、価格の上昇がつづくなか毎年1〜3%伸びていたが、09年は0.3%増と横ばいの見通しだ。

 この際、一定の価格下落を甘受して、世界景気の立ち直りを待つか、やみくもに減産して価格を戻し、不況を長引かせるか(実際、1974年の第一次石油危機では原油価格の高止まりとドル安によってスタグフレーションが続いた)――17日のOPEC総会が注目されるゆえんである。

(青山和樹 あおやま・かずき=「日本の論点」スタッフライター)


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