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これからどうなる?−私はこう思う。
「最後の円高」は資産を増やす「最後のバーゲンセール」になる
2009.01.22 更新
*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。

 07年初めに120円前後、08年初めには110円前後だった対ドル円レートが、09年初めには90円前後と、急速に円高が進んでいる。

 教科書的ないい方をすれば、ある国の通貨が高いということは、その国の経済力を含めた国力が他国より勝っていると評価されていることを意味する。だが今日の円高は、だいぶ事情が違う。他国が金利を引き下げたことによって金利差が縮小、あるいは逆転したことにより、近年国内の低金利を嫌って外貨や外貨建ての投資商品で運用していた日本人が資金を円に戻したり、低金利の円で資金を調達して外貨に換える、いわゆる「円キャリートレード」を解消したりする動きが起きた。これは、円売りの巻き戻し、すなわち円買いという形になって現れる。さらには、各国の減税や公共事業などの景気刺激策と、それらをまかなうための債券発行が急増し、消去法として円が買われているにすぎないというのが現実である。

 目下の円高は、日本の輸出企業の業績を直撃している。08年3月期、じつに2兆2700億円もの連結営業利益を叩き出したトヨタ自動車は、今期は59年ぶりの連結営業赤字に転落する。ソニーも1月22日に今期2600億円の連結営業赤字に陥る見通しと発表した。

 今後も、こうした円高は続くのだろうか。大規模な介入が行われない限り、その可能性は高いだろう。ブッシュ前大統領の金融安定化策に続く、オバマ新大統領の約8250億ドルという空前の景気対策によって、ドル紙幣は今後も、ばら撒かれ続ける。中期的には1ドル50円という予測を掲げる識者もいるほどで、それはけっして絵空事ではない。

 だが、いっぽうで、円高は数々のメリットを享受できるチャンスでもある。身近なところでは海外旅行だ。08年、韓国ウォンは円に対して約50%もの下落を見せた。韓国人客をあてにしていた日本の観光地や、2010年までに外国人観光客数を1000万人まで増やすことを目標に発足した観光庁にとっては苦々しいだろうが、日本人が韓国に出向いて買い物をするには、大変お得な情勢である。

 お買い得なのは、ブランド物やエステばかりではない。M&Aをサポートする企業、レコフが発表した2008年の日本企業による海外M&Aの金額は、07年比2.6倍に急増したという。円高と世界的な株安で、ライバル企業や高成長企業を手に入れる絶好の機会となっているのだ。

 日本の人口は長期的な減少に転じた。しかも今後は、勤労者人口(15〜64歳)の減少率が総人口のそれを上回る。いうまでもなく、このことは日本の経済規模が縮小していくことにほかならない。

 未曾有の経済危機がいつ底入れし、いつ反転するのかは誰にもわからないが、かなりの時間がかかること、復活のきっかけは、新興国の成長にかかっているというのは、ほとんどの識者に共通する認識だ。

 為替相場が、その国の「国力」の反映ならば、現在起きている、そしてこれからの数年間進行するであろう円高は、長期的には「最後の円高」になる可能性があるのだ。それならば、現在の円高と世界的な株安は、日本の企業や個人にとって、成長力のある「よい資産」をバーゲン価格で買える最後のチャンスになるかもしれないのだ。とりわけ個人にとっては、今後世界景気のけん引役となる新興国の株式や、新興国に強い企業の株式は、注目にあたいする。

 もっとも、リーマン・ショック以後の株価下落で評価損が出ている日本企業も多いから、いつが買い時だ、と断言するのはむずかしい。だが、株式や投資信託への投資であれば、資金を細かく分けて投資する時期を分散することも可能だ。最近は使い勝手のよいETF(上場投資信託)も出てきている。

 また、年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、世界最大規模の150兆円もの資産を有している。しかし、日本には規制があるため、資産の7割以上は国内の債券である。外国株で保有しているのはわずか8.3%(08年度第2四半期)にすぎず、しかもそのほとんどは欧米先進国のものだ。現今の円高を利用して、新興国を含めた国々への投資をおこなえば、じり貧の年金財政にとって起死回生の逆転打となるかもしれない。それも最後のチャンスだとしたら……。年金資産運用における規制緩和の議論が起こることを期待したい。

(増澤健太郎 ますざわ・けんたろう=「日本の論点」スタッフライター)


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