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いつ明らかになるのか? オバマ政権の対北朝鮮政策と駐日大使人事
2009.04.23 更新
*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。

 4月5日、北朝鮮がミサイル発射実験を強行したことに対して国連安保理が議長声明にとどめたことに、日本のみならず、米国でも強硬な態度(制裁決議・非難決議)を期待する立場からは強い批判が浴びせられた。オバマ政権の対北朝鮮政策はいったいどうなっているのだろうか。

 オバマ大統領は就任と同時に相当に意欲的な外交を展開してきたが、いま現在、北朝鮮問題では明確な戦略を打ち出していない。オバマ大統領は、北朝鮮担当特別代表にスティーブン・ボズワース元駐韓大使を任命したが、ボズワースは、タフツ大学フレッチャー・スクールのトップとの兼職であり、北朝鮮関係の仕事は「自分の仕事の3分の1から4分の1」だと発言している。

 北朝鮮のミサイル発射に関して興味深い調査結果がある。今回の発射前に大手調査会社ラスムセンが全米で実施した世論調査では、じつに57%の米国民が「北朝鮮のミサイル発射能力を破壊するための軍事行動」を支持していて、「北朝鮮の核の脅威を感じる」と答えた米国民は73%に上っている。少なくともこの調査からは、米国民がイラク戦争に懲りて、軍事行動におよび腰になっているという印象は浮かんでこない。

 ブッシュ前政権が新たな北朝鮮政策をまとめ上げたのは、就任から4カ月以上過ぎた6月であった。オバマ政権が、クリントン政権以降の「負の遺産」を相続したと考えるならば、政策見直しに相当の時間をかけているのは誰の目にも明らかだ。したがって今後の打つ手を予測することは簡単ではないが、たとえば次のような人事には注目しておきたい。

 まずは二人の国防次官だ。一人はミシェル・フローノイ次官(政策担当)である。「国防重視の民主党員(Pro-defense Democrat)」を自称するフローノイは、かつてリベラルから「ネオコンの巣窟」と揶揄(やゆ)された「新アメリカの世紀プロジェクト(PNAC)」の公開書簡に署名したこともある人物だ。もう一人は、アシュトン・カーター元国防次官補。彼は調達・技術等担当の次官に指名されている(4月22日現在、未承認)。カーターは2006年には、かつての上司であるウィリアム・ペリー元国防長官とともに、「北朝鮮がミサイルを発射する前に武力で破壊すべき」という主旨の主張を展開して注目された。クリントン政権時代には米朝合意枠組みに関わり、対北朝鮮武力行使計画にも携わった人物だ。しかし、フローノイもカーターもいわゆる強硬派でもネオコンでもない。もちろんオバマ大統領が現時点で対北朝鮮武力攻撃をオプションの上位に据えているわけでもない。しかし、そうはいってもオバマ政権がこうした人材を要所に配していることは認識しておく必要があろう。

 もう一つ注目すべき人事がある。財務省のテロリズム・金融情報担当の次官に留任したステュアート・レヴィーである。このポストは2004年にブッシュ政権が新設したもので、初代の担当次官に、当時司法省ナンバー3(次席司法副長官)の座にあったレヴィーが抜擢されている。ポストの設置目的は、国際テロや大量破壊兵器の拡散、あるいは麻薬取引に関する資金の流れを遮断することにあり、2001年にブッシュ前政権が成立させた愛国者法の第311条が根拠となっている。

 ここで思い出されるのが、2005年後半から2007年にかけて話題となった北朝鮮制裁の一つ、北朝鮮資金をめぐるバンコ・デルタ・アジア(BDA)の口座凍結だ。これは、財務省がマカオに拠点を置くBDAの北朝鮮関連口座を凍結し、反発した北朝鮮が6者協議を1年以上もボイコットしたというものである。結局、ブッシュ政権は凍結解除に踏み切ったが、これを支持する国務省と反対する財務省の間で大きな論争があったことは、記憶に新しい。このとき舞台裏で財務省側の「振付師」の役割を担当していたのがレヴィー次官であった。

 金融制裁は、まさに「マネーを標的としたピンポイント攻撃」のようなものだ。BDA問題では国務省が勝利したが、金融制裁の手法は、レヴィーの下でより精度を増しているといわれる。オバマ大統領がこの次官ポストを担当者付きでブッシュ前大統領から継承したということは、今後もさまざまなケースで、北朝鮮に対してこうした「攻撃」があり得ることを示しているといってよい。財務省は、去る3月にもイラン国営銀行の一つをターゲットに新たな制裁を発動している。中国の金融担当者が金融危機に乗じてドル批判を展開する裏には、こうした事情があるのかもしれない。

 さて、気になる駐日大使人事だが、政権発足後100日を過ぎたにもかかわらず、いまだ指名すらされていない(1月22日付の本サイト拙稿「オバマ政権は、駐日大使に誰を送り込むのか」参照)。オバマ政権の人事が歴代政権にくらべて遅れていることは事実で、これには駐中国大使人事が大きく絡んでいる。

 じっさい、駐中国大使人事もまた難航している。(5月16日、ようやくオバマ大統領は、新中国大使に、共和党員であり、現ユタ州知事のジョン・ハンツマン氏を指名すると発表した。私は4月23日付のこの項で、「オバマ政権は日本と中国に送り込む大使を同時に発表するスケジュールを立てているといわれている」と書いた。したがって近々、駐日大使が決まる可能性が大だ=5月18日追記)

 駐日大使に当確といわれたチャック・ヘーゲル前共和党上院議員(メイン州)、オバマ政権移行チーム責任者を務めたジョン・ポデスタ元大統領首席補佐官(クリントン政権)などの有力候補が浮かんでは消えるといった状況にある。現在では、共和党議員ながら大統領選でオバマを支持し、アジア通としても知られるジム・リーチ元下院議員(アイオワ州)を軸に調整が続いている。

(堀 圭一 ほり・けいいち=社団法人アジアフォーラム・ジャパン研究員 http://asianforum.jp/


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