*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。
6月1日、09年末の「防衛計画の大綱」改訂に向けた自民党国防部会・防衛政策検討小委員会の提言の最終案が明らかになった。敵基地攻撃能力としての巡航ミサイルの導入、集団的自衛権の行使容認といった項目と並んで、なかでも注目を集めているのが、武器輸出三原則を見直すべき、という主張だ。その背景には、迷走する航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)機種選定問題がある。
現在、空自が保有している戦闘機は、F-15が203機と、一世代前のF-4が90機。2005年度から2009年度までの中期防衛力整備計画(中期防)では、このうち老朽化が進むF-4を順次退役させ、代わりにFXの機種を選定し7機を調達予定だった。そこで空自は、米のF-22、F/A-18E/F、F-15FX、米英中心に共同開発されたF-35、仏のラファール、欧州共同開発のタイフーンの6機種を候補にあげ、調査をおこなった。そして内定したのが、高いステルス性(レーダーに映らない能力)と超音速での巡航能力を誇るF-22の導入だった。
ところが、最新技術の漏洩を懸念した米議会が、06年9月にF-22の輸出を2015年まで禁止することを決定、安倍首相(当時)が求めた性能データの開示すら拒んだ。輸出禁止の背景には、海上自衛隊からイージス艦の機密情報が流出したことや、日本が最新鋭機を入手するのを阻みたい中国のロビー活動などがあるといわれた。
さらに、08年秋から始まった世界的な金融危機は、オバマ政権にF-22の事実上の生産中止を迫ることになった。日本が導入すれば、F-22生産にかかわる2万5000人もの雇用が維持されることから、地元に工場を抱える議員などからは再考を求める声も上がった。しかし、5月1日に浜田靖一防衛相と会談したゲーツ国防長官は、日本側にF-22の輸出は困難だと伝え、「F-35も高い性能があり、いい戦闘機だ」とF-35の導入を打診したという(朝日新聞5月24日付)。空自や政府・自民党の一部は、いまだF-22の導入をあきらめていないが、かりに導入できても、おそらく国内メーカーによるライセンス生産は許されず、早期警戒衛星とリンクできるといわれる戦闘管制システムはブラックボックスになるだろう。修理のたびに米へ送り返すことになれば、稼働率は著しく低下する。
それでも日本側がF-22の導入にこだわる理由は、近年、中国空軍がロシア製のSu-27、国産のJ-10といったF-15と同世代の戦闘機を着々と導入していることにある。空母の建造に着手していることからも明らかなように、経済発展著しい中国は、東シナ海・太平洋のシーレーンと制空権を確保しようとしているのである。すでに空自は、沖縄・那覇基地のF-4部隊と茨城・百里基地のF-15部隊を交替させて中国方面の防空体制を強化しているが、数の面ではどうしても不利だ。そこで、F-15に対しても模擬戦闘で圧倒的な強さを発揮したF-22に頼ろうというわけである。
残る候補のうち、F/A-18E/F、F-15FX、ラファール、タイフーンは、F-22・F-35とF-15との中間の世代にあたり、将来の発展性の面では不満が残る。では、ゲーツ国防長官も推薦するF-35が最有力候補ということになるかというと、そこで立ちはだかるのが武器輸出三原則の壁だ。F-35は米英ほか7カ国が参加する統合打撃戦闘機(JSF)計画にもとづいて開発されており、出資割合に応じて性能に対する発言権や、性能データの開示を受ける権利をもつ。当然、供給される順番も出資額次第で、JSF計画に参加しない場合、日本が購入できるのは10年近く先になる可能性もあり、それまでに中国軍の優位が確立してしまう危険があるのだ。
F-35は、日本の事情に合った利点をもつ。米空軍・海軍・海兵隊、英空軍・海軍による導入が決まっているため、通常の戦闘機であるA型にくわえ、短距離離陸・垂直着陸(STOVL)能力をもつB型、空母艦載機であるC型といったバリエーションがある。したがって、中国の海洋進出に備えて南西方面の離島に基地を建設する場合、B型なら滑走路が短くてすむし、全通甲板をもつ「ひゅうが」型ヘリ護衛艦でも運用できる可能性がある。
三原則の緩和には、公明党内に反対意見が多いことに加えて、「平和国家ニッポン」のイメージダウンを懸念する声もある。とはいえ、すでに小泉内閣が04年、ミサイル防衛(MD)システムをアメリカと共同開発・生産することについて、武器輸出三原則の例外としている。F-22導入が絶望的となったいま、F-35を早期に導入できるようJSF計画へ参加するというのが、現実的な選択ではないか。
(高橋 理 たかはし・さとる=『日本の論点』スタッフライター)
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