*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。
この16日に発足した鳩山政権は、与党3党の合意事項として郵政事業の抜本見直しを掲げている。まずは政府が持つ郵政各社の株式売却を凍結し、さらに現行の4分社化体制の再編も視野に入れるという。かねてより民営化に異を唱えてきた国民新党代表の亀井静香氏が郵政・金融担当大臣に就任したことで、この流れは決定的になった。従来の政策がこれほど転換されるケースも珍しい。
郵政民営化とは何だったか、あらためてざっと振り返ってみよう。大蔵省資金運用部を通じ、市場より有利な条件(つまり国民負担)で自動的に財政投融資に使われてきた郵貯・簡保資金は、2001年から全額自主運用されることになった。これは「有利な条件」が消えたことを意味する。しかし国営である以上、大きなリスクはとれないため、結局は国債・公債で運用せざるを得ない。したがって利回りは低下した。加えて低迷が予想される郵便事業を丸抱えするとなると、やがて郵政事業そのものが破綻するおそれがあった。だから分社化・民営化によって、郵便事業は国がある程度関与する一方、郵貯・簡保は将来的に国から完全に切り離し、一民間銀行・民間生保として再生させようという策が生まれたのである。
「官から民へ」というスローガンの下、2005年のいわゆる郵政選挙では、この方針が国民に支持された。また同年の日経平均株価は、2000年代以降で初めて大きく急伸した。細かい中身はともかく、国民と内外の投資家が「改革」に期待を寄せた結果である。ところが、先の衆議院選挙では「民営化の見直し」を掲げる民主党が圧勝した。しかしこのときは、郵政問題自体、大きな争点にはなっていなかった。
見直すべき点はあろう。民営化とユニバーサル(全国一律)サービスをどう両立させるのか、まだまだ議論の余地はある。「かんぽの宿」の一括売却をめぐる取引の不透明性にも批判が集まった。しかし、07年10月に持ち株会社として発足した日本郵政は、グループ全体で08年3月期に連結純利益2773億円、09年3月期も4228億円を計上した。これは国内ではNTTグループの5380億円に次ぐ規模だ。10年3月期も4000億円を見込んでいる。税を免除されていた国営時代とは逆に、民間会社として国庫に貢献していることになる。預金量の減少や大量保有する国債の金利上昇局面における収益悪化も懸念されるが、だからこそますます経営の自由度を増やし、新規事業や他社との業務提携にも力を入れる必要があるのではないだろうか。
当初の予定では、ゆうちょ銀行・かんぽ生命の2社は2010年中にも上場を果たし、日本郵政は2017年9月までに両社の全株を売却することになっていた。実現すれば、両社は市場からよりフレキシブルな資金調達が可能になるとともに、国内外の不特定多数の投資家による監視機能も働くようになる。つまり“1人株主”の政府に縛られるより、はるかに健全で発展性のある経営が期待できると考える人は多い。金融危機後の相場環境を考えれば、上場のタイミングは慎重に検討する必要があるだろう。しかし、その可能性まで否定してしまうのは、いかにも惜しい。
(島田栄昭 しまだ・よしあき 政治ジャーナリスト、『日本の論点』スタッフライター)
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