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これからどうなる?−私はこう思う。
プロ野球を経ないメジャー流出に打つ手はあるか
2009.10.25 更新
*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。

 メジャーリーグ挑戦か、日本のプロ野球入りか、進路が注目されていた岩手・花巻東の菊池雄星投手が25日、同校で記者会見を開き、「日本でプレーさせていただきたい」と国内残留を決めたことを表明した。

 菊池投手をめぐっては、先に国内全12球団とメジャー8球団のスカウトが本人のもとを訪れて面談を行うなど、異例ともいえる日米争奪戦が繰り広げられてきた。かりに今回、菊池がメジャー挑戦を選択していたとしても、29日のドラフト会議では、複数の球団が強行指名に動いたはずで、そうなれば進路問題はさらにこじれただろう。昨年、ドラフトを拒否して社会人野球から直接メジャー入りを果たした田沢純一投手(レッドソックス)には指名がなかったが、「田沢とはものが違う。菊池ほどの素材を黙って米国に渡すわけにはいかない」というプロ野球関係者は少なくなかった。ドラフト上位指名候補の高校生がメジャーに挑戦したケースは過去になく、注目度抜群の菊地がこれを実現すれば、アマチュアの逸材がプロ野球を素通りしていきなりメジャーへ流出する"悪しき前例"になりかねない。日本のアマ球界がメジャーの草刈り場になるか否かの瀬戸際だったわけだ。

 菊池は会見で「まだまだ自分のレベルでは世界に通用しない。メジャーは、日本で認められてからプレーしたいと思う」と語り、夢をひとまず封印した。これで"菊池狂想曲"は一応の収束を見たが、来年のドラフト候補にはメジャー志向を隠さない、あの斎藤佑樹投手(早大)がいる。トップアマのメジャー挑戦というこの流れ自体に、歯止めがかかることはおそらくないだろう。

 では、日本のプロ野球に活路はないのか。プロ球界はこれまで、選手の育成をあまりにもアマ球界に依存し過ぎていた。社会人野球や学生野球を、選手を一人前に育てて、毎年あたりまえのようにプロに送り出してくれる人材供給源と見なしてきた。しかし学生野球はともかく、社会人野球は不況のあおりを受けて休部、廃部が相次いでいる。各地に新設された独立リーグやクラブチームも運営基盤がぜい弱で、軌道に乗っているとはいいがたい。高校・大学の卒業時にはドラフトにかからなかったがプロを目指して野球を続けたい、磨けば光る――そんな若者の夢の受け皿は、確実に削られている。

 だとすれば、そんな非エリート選手にとっても、今後はメジャー挑戦が現実的な選択肢になっていくに違いない。現にここ数年、メジャー球団が独自のスカウティングで日本の無名選手と契約するケースは増えている。もちろんすぐにメジャーでプレーできるわけではなく、1Aから2A、3Aと日本のプロ以上に厳しい競争を勝ち抜かなければならないが、彼らが成功すれば、ドラフト候補生のプライドをどれほど刺激するか。それこそメジャー流出に拍車がかかるだろう。日本の各球団は、アマ球界が育てた一握りの有望株を奪い合うばかりでなく、自前の選手育成にもっと力を入れて、プロ野球を志す選手に門戸を開くべきではないか。

 2005年、育成を目的として球団の選手契約枠を拡大する育成選手制度が新設された。今季、巨人のリーグ3連覇を支えた若手選手の台頭は、同制度を活用した独自の選手育成システムの成果といわれる。いまや球界屈指のセットアッパーに成長した山口鉄也投手も、俊足好打で活躍する松本哲也外野手や隠善智也外野手も最低年俸240万円(一般選手は440万円)の育成枠出身。入団時は全くの無名で、松本は「育成枠がなければプロになれなかった」と断言する。

 しかし12球団で育成枠活用に最も熱心な巨人でさえ、採用した日本人選手は4年間で計15人に過ぎない。「金満補強」「外様頼み」と巨人をさんざん批判してきた他球団は、まだ同制度を十分に活用できていないのが現状だ。より大きな舞台を目指そうとする若者の夢に容喙(ようかい)する前に、やるべきことがあるのではないか。

(平林謙治 ひらばやし・けんじ 『日本の論点』スタッフライター)


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