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これからどうなる?−私はこう思う。
はたして「国債バブルの崩壊」はあるのか
2010.01.14 更新
*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。

 1990年代のバブル崩壊後から今日まで、ひたすら低迷を続ける日本経済を尻目に、ほぼ一貫して買われ続けてきた金融商品がある。日本国債だ。

 周知のとおり、現在の日本の債務残高は莫大だ。約820兆円という金額もさることながら、一国の経済規模と比較しても大きい。CIA(米国中央情報局)の「THE WORLD FACTBOOK」によれば、2008年時点での日本の債務残高の対GDP比は172.1%。これは、調査対象となった世界126カ国・地域中、超インフレで名高いジンバブエの265.6%に次いで第2位だ。ちなみに先進各国では、イタリアが105.8%で5位、ドイツが66%で20位、アメリカが37. 5%で61位などとなっている。

 ところが、これほど借金を膨らませても、さらに新規発行される国債が売れ残ったことはない。むしろ90年に7〜8%だった長期金利は低下し続け、02〜03年ごろには1%を割っている。現在はやや上昇しているものの、なお1%台前半だ。つまり、それだけ国債の価格は上昇し続けたということだ。いまや「国債バブル」と称されるほどの"人気商品"なのである。

 その理由ははっきりしている。国債のおもな買い手は金融機関(銀行・生損保・年金基金)で、保有割合は66.5%にも達している。金融機関にとってみれば、潤沢な個人金融資産を預かったものの、景気低迷で有効な融資先を見出せず、国債ぐらいしか買えるものがなかったのである。それに金利が低くても、預金金利をさらに低く抑えることができたため、労せずして利ざやを稼ぐことができた。国債の大量発行を続けてきた政府にとっても、これはある意味で都合がよかったといえるだろう。

 だが問題は、この状態を今後も続けられることができるか否かだ。とりわけ税収の落ち込みによって、09〜10年度を合わせた新規国債発行額が100兆円程度にまで膨らむ点は見逃せない。低成長下に税収増が期待できないいっぽうで、高齢化にともなって医療・福祉予算は確実に増える。債務残高の対GDP比が200%を超えるのも時間の問題だ。さらにいえば、個人の貯蓄率は、高齢化が影響して低下傾向にある。発行額が増えて受け皿が縮小すれば、必然的に未達の可能性が高まることになる。

 そこで懸念すべきは、金利の上昇だ。国債はいままで9割以上が国内で消化されているが、それが難しいとなれば、海外に買い手を求めるしかない。しかし米国債(10年もの)の金利が4%弱で推移している昨今、日本国債も相応の金利にならなければ買い手はつかないだろう。あるいは日本の財政危機が認識され始めれば、リスクプレミアムとしての金利は上がっていく。

 これは国にとって、利払い負担の増加となる。税収が足りなければその分を賄うために、さらに巨額な国債発行が必要になり、それによってますます金利が上がる、という悪循環が待ち構えているのだ。また多額の国債を抱える金融機関にとっては、資産の劣化となる。そしてその被害を最小限に食い止めるため、われさきにと売りに転じる動きが加速すれば、まさに"バブル崩壊"である。金利は急騰して国債価格は急落し、「円」まで信用を失って通貨安が進む。デフレの針はインフレに振れる。いうまでもないことだが、こうした事態は虎の子である個人金融資産の大幅減価を意味する。

 これを避けるには、大きく二つの方策を考える必要がある。一つは消費税の大幅増税だ。そもそも政府債務がここまで膨らんだのは、低負担・高福祉の諸政策を実施した結果、歳出、歳入にギャップが生まれ、そのギャップを借金で穴埋めしてきたからである。もし政府に現状ないしそれ以上の福祉政策を求めるなら、消費税率を欧州並みの20%程度に引き上げることは最低限必要だろう。あるいは現状の税率を維持して、その分だけ低福祉国家を目指すという方向もある。これは国民の選択だが、いずれにせよ結論を先延ばしにすればするほど、債務はより膨らんでいくのは間違いない。少なくとも、政府が財政支出を大盤振る舞いするいっぽうで「消費税は上げない」と断言することは、財政の放任をアピールするのと同じことになる。これは国内外に不安を呼び起こし、かえって金利上昇要因になりかねない。

 もう一つの方策は、個人レベルの話になる。資産運用の見直しだ。当面は超低金利が続き、場合によってはインフレで減価しそうな預貯金に、全資産を放置しておく手はない。OECD(経済協力開発機構)が09年11月に発表した世界経済見通しによると、2010年の日本の実質経済成長率は、09年のマイナス5.3%から急回復して1.8%。この数字を信じるなら、日経平均株価もそれなりの上昇が期待できよう。また同見通しは、米国2.5%、OECD全体1.9%、中国10.2%、インド7.3%、ロシア4.9%の成長を予測している。

 となれば、世界経済の成長の恩恵を、莫大な金融資産を持つ日本人はもっと受けてよいはずで、海外への投資には為替リスクや地政学リスク、金融インフラの未整備等の課題があるが、ポートフォリオの一環として検討する価値はある。さらに、預貯金を引き出して投資に振り向ける動きが広がれば、国債の未達懸念が生じるため、政府も財政政策を見直さざるを得なくなる。いい方を換えれば、これは個人でできる国際貢献であり、財政再建でもある、と言えなくもないのではないか。

(島田栄昭 しまだ・よしあき=『日本の論点』スタッフライター)


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