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これからどうなる?−私はこう思う。
郵政“再国有化”に勝算はあるか
2010.02.22 更新
*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。

 2月上旬、政府は郵政改革の「素案」を発表した。(1)現行の5社体制(持ち株会社である日本郵政の傘下に、日本郵便・郵便局・ゆうちょ銀行・かんぽ生命の4社がそれぞれ独立しているかたち)から、3社体制(日本郵政と日本郵便・郵便局を統合し、ゆうちょ銀行、かんぽ生命がぶら下がるかたち)への移行、(2)日本郵政にユニバーサル(全国一律)サービスを義務づける、(3)ゆうちょ銀行、かんぽ生命の業務については、それぞれ業法に基づいて原則自由化(新規事業への参入可能に)する、(4)高い非正規雇用率を改善する、などがおもな柱だ。政府はこれをもとに「郵政改革法案」をまとめ、3月の国会に提出する予定という。

 そもそも小泉政権下の郵政民営化は、政府の関与を徐々に減らしながら、経営の自由度を徐々に広げていくというプログラムだった。とくにゆうちょ銀行・かんぽ保険については、10年をかけて政府から完全に切り離し、民間金融機関とまったく同じ競争条件になるはずだった。ところが今度の「素案」は、官業としての体制を固めつつ、収益の柱である金融業の拡大も目指すという、政府にとっては"いいとこ取り"の案である。当然ながら民間金融機関からの反発は激しい。

 さらに、この方向を決定づける2つの改革案についてもさらなる検討が行われている。ひとつは、ゆうちょ銀行の預金限度額(現行は1000万円)の引き上げまたは撤廃であり、もうひとつは、日本郵政に対する政府の将来的な出資比率(現在は100%)だ。「素案」ではまだ結論は出ていないが、今後、「法案」づくりの過程で大きな焦点になることは間違いない。

 政府がここまでなりふり構わぬ拡大路線を志向するのは、ひとえに危機感の表れだといってよい。郵便事業はEメール等の普及によって将来的に取扱量が漸減していき、事業の縮小が予想される。現在でも、ユニバーサルサービスの維持には年間1兆円以上の経費がかかるといわれている。正規雇用を増やせば、さらに嵩む。これらを賄うために、金融で、より大きな収益を得ようというわけだ。

 だが、思惑どおりにいくだろうか。そもそも政府が経営に関わる以上、大きなリスクをとることは避けなければならない。もし損失が生じれば、税金で補てんすることになってしまうからだ。それに、郵政はもともと民間や海外への投資・融資のノウハウを持っていない。結局のところ、資金の多くを国債で運用せざるを得なくなっているのだ。利幅は薄いが、だからこそ預金量(=国債購入量)を増やして利益を増やそうという算段なのだろう。これは、今後も財源を国債の大量発行に頼りそうな政府にとっても都合がよい。受け皿さえ確保できれば、未達を恐れる必要がなくなるからだ。郵政を再国営化した真の狙いはここにある、ともいわれている。

 しかし、この構図は、見方を変えれば国債の利払い(=将来の国民負担)によって現状の郵政を支えるということでもある。ユニバーサルサービスが重要だとはいえ、ただでさえ財政が危機的な状況にある中で、ごく一部の国民の便益にしか供さない配達網の維持が本当に必要なのか。民間の宅配事業やコンビニによって十分に代替できるのではないか。あるいは非正規雇用にできる仕事の正規雇用化に、どのような意味があるのか。国民全体の負担と便益の観点から、議論を重ねる必要があろう。

 もっとも、仮に預金限度額が引き上げられても、預金量がどれほど増えるかは微妙である。かつての郵便局のイメージからすれば、ゆうちょ銀行への預金には全額政府保証があるように思われがちだが、それは誤解だ。民営化後は、民間金融機関と同様、預金保険制度の対象となっている。つまり、保証されるのは元本1000万円とその利子までなのである。また金利についても、両者はほとんど差がない。むしろ今後は、民間金融機関のほうが高くなる可能性がある。というのも、ゆうちょ銀行は政府出資という後ろ楯があるので、民間金融機関よりリスクが小さい分、リターンも小さくなるはずだからだ。となると、つまり預金者から見て、わざわざ民間金融機関の預金をゆうちょ銀行に預け換える理由が見当たらないのである。

 預金量が増えなければ収益も増えず、ユニバーサルサービスの維持も難しくなろう。さらに今後、財政逼迫懸念が台頭してくれば、保有する国債の金利上昇(価格下落)によって膨大な赤字を抱えることになる。結局のところ、二兎を追う郵政は、それゆえに一兎も得られないことになるのではないか。

(島田栄昭 しまだ・よしあき=『日本の論点』スタッフライター)


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