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ポスト原子力――再生可能エネルギーは何が最適か?
2011.06.16 更新
*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。
石油や石炭、ウランなど、いつかは枯渇する資源に対して、いくら使ってもなくならない資源を使ってつくるエネルギーを「再生可能エネルギー」という。代表的なものに「太陽光」「風力」「地熱」などがある。福島原発事故以来、これらに注目が集まっているが、はたして原発に代わるエネルギーになりうるのだろうか。
まず太陽光発電だが、2004年まで、日本は世界一の太陽光発電国だった。05年以降は、その座をドイツに奪われている。というのは、ドイツは2000年当時の連立政権が「段階的な脱原発」を決め、エネルギー政策を転換、再生可能エネルギーで生み出した電力を非常に高い値段で買い取る制度を作ったからだ。しかし、そのおかげで、政府がつぎ込む補助金は莫大なものとなり、09年の政権交代以後は、ドイツでは原発回帰の風が吹き始めていた。そんなとき、福島原発の事故が、ドイツのエネルギー政策にくさびを打ち込む強烈な一打となったのである。
太陽光発電のコストはたしかに高い。LNG火力発電が1キロワット時7円程度であるのに対し、太陽光は現在46〜47円。5月のG8サミットで、菅首相は、「2020年代に1000万戸の屋根に太陽光発電パネルを設置する」と表明したが、これを実現するためには、さらなる技術革新と量産によるコスト削減が必要だ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によれば、すでに23〜24円程度をめざす技術はできており、2030年までには火力並みの低コストを実現できる可能性があるという。
その点、風力発電のコストは、太陽光にくらべてはるかに低いものの、火力の2倍程度だ。しかも、風車を建設できる場所は限られ、地元では騒音や風の流れが変わるといった弊害が指摘されることが多い。
さらに太陽光、風力ともに、最大の課題となるのが、電力の供給量が安定しないことである。太陽光では夜間は発電できないし、天候にも左右される。風力発電は風がなければ発電できず、逆に暴風のときは風車が壊れることもある。
その意味で、安定供給が可能なのが地熱発電だ。日本のような火山国にとって、もっとも有望な発電方法だともいわれている。だが、これも課題は多い。地下の熱水の蒸気でタービンを回す方式だが、石油と同じで、実際に掘ってみないとモノになるかどうかわからず、開発に長い時間がかかる。しかも、たいていの火山は国立公園や国定公園の中にあるため、規制があって自由に掘るわけにはいかない。運よく掘り当てても、発電によって周辺の温泉の湯量が減る場合もあり、建設計画の段階で地元温泉街から反対運動が起きることも珍しくない。
だが、皮肉なことに、日本は世界一の地熱発電技術をもっているのだ。世界の地熱発電設備のおよそ7割のシェアを日本のメーカーが占めている。総発電量のじつに74%を再生エネルギーでまかなっているニュージーランドには、世界最大の地熱発電所があるが、この発電プラントも日本メーカーが納入したものだ。早くから地熱発電に力を入れていた九州電力(現在、管内に5つの地熱発電所をもつ)を例外として、これまで日本の電力会社は地熱発電に消極的だったが、ひとたび風向きが変われば、地熱発電大国になることも夢ではない。
日本の国情からすると、大規模な地熱発電より、小規模な施設で足りるバイナリー発電(温泉発電)のほうが、普及しやすいと思われる。これは水より沸点の低いアンモニアなどを気化させてタービンを回す方式で、水温がそれほど高くなくても発電できる。通常の温泉の源泉を使うことができ、温泉街とも共存しやすい。たとえば鹿児島県の霧島国際ホテルは、自家用の温泉発電施設を持っており、使用電力の4分の1をこれでまかなっている。
自治体の試みとしては、静岡県が2010年度から、温泉発電に適した場所の選定を進めてきた。今年5月、下田市、東伊豆町など4カ所の源泉について、事業化が可能と判断し、採算などをさらに調べる方針を表明している。新潟県の松之山温泉でも、2010年から、環境省の委託事業として温泉発電の実証実験がおこなわれている。これらの先駆的な試みが成功すれば、あとに続く自治体も増えるだろう。
そもそも再生可能エネルギーは、小規模の施設で発電し、地元の電力をまかなう――つまりエネルギーの地産地消をめざすのが原則だ。千葉大学とNPO法人環境エネルギー政策研究所がまとめた調査によると、再生可能エネルギーの自給率がもっとも高い都道府県は、地熱発電の進んだ大分県で、25.2%。2位は、地熱や風力発電を導入している秋田県で18.3%、3位は、小規模水力発電を活用している富山県で18.1%。市町村レベルでは自給率100%を達成している地域が57あり、そのうち26市町村は食料自給率も100%を超えているという。この中には過疎に悩む村もあるが、見方によってはエネルギーも食料も自前でまかなえる先進的な村なのである。
(舘石淳 たていし・じゅん=『日本の論点』スタッフライター)
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