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東日本大震災以後、各地で頻発する地震は、はたして大地震の予兆なのか?
2012.02.08 更新
*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。
元旦のちょうど昼ごろ、北海道から近畿にかけて、列島は激しい揺れに見舞われた。震源が東京都心から約600キロ離れた鳥島付近(マグニチュード=M7)と遠かったにもかかわらず、都心や福島県いわき市周辺では震度4を記録した。東日本大震災から1年が経とうというのに、いまだ地震のおさまる気配はない。
3日には茨城県沖、6日に宮城県沖、23日には福島県沖など東日本を中心に、M5前後の中規模地震が頻発。さらに1月28日から29日にかけて、山梨県東部・富士五湖では、M5.5(震度5弱)の地震が発生、富士山噴火との関連が懸念された。
そんななか、東京大学地震研究所が1月23日にホームページで「M7クラスの首都直下型地震が発生する確率は、4年以内で70%」という研究結果を公表し、各方面にショッキングな波紋を広げた。
首都直下型地震については、これまで政府の地震調査研究推進本部(文科省所管)が、「30年以内に起きる確率は70%程度」との見解を発表していただけに、東大地震研の4年以内という短い期間の発生確率予測は、いっきょに切迫性を高めることになった。いつ起きてもおかしくないといわれる東海地震でさえ、「今後30年で87%の発生確率」とされるから、この首都直下型地震の「4年以内予測」は、首都圏住民の不安をいやがうえにもあおる結果になった。
ところが、それから一週間後の2月1日、今度は京都大学防災研究所が、同じM7級の地震が首都圏を襲う確率は、「5年以内に28%、30年以内で64%」と、東大地震研より低い確率の試算結果を発表した。いったいどちらの数字を信じたらいいのか。
最初の東大地震研の研究発表は、東日本大震災以降の半年間(2011年3月11日〜9月10日)の首都圏の地震活動の活発化に注目して、それ以前の半年間(2010年9月11日〜2011年3月10日)とのデータ比較によって試算したものだ。ちなみに気象庁の調べによると、大震災の前と後では、M3以上の地震発生が47回から343回へと7倍強に激増。M3〜6の地震は、大震災以降12月までに、1日当たり平均1.48回発生、震災前の約5倍に増加していることが明らかになった。東大地震研の平田直教授(観測地震学)らは、地震は規模が大きいほど発生頻度が低い(Mが1大きくなると、発生頻度が10分の1になる)という地震学の経験則にもとづいて、今回の試算結果を割り出したのである。
じつは京大防災研の計算方法も、東大と同じ手法を用いている。ただし計算のもとになる地震の観測データの期間の取り方が違っていて、東大が昨年3月11日〜9月10日までの期間なのに対して、京大は今年1月21日までに首都圏で起きたM3以上の地震を抽出しているのだ。つまり、地震発生回数が減ってきた9月以降のデータを加えた結果、東大の試算より小さな値になったというわけである。
東大地震研のセンセーショナルな試算結果には、疑問を呈する学者もいる。武蔵野学院大学の島村英紀特任教授(地震学)は、「(研究チームが使った)10分の1経験則は、世界中で起こった地震を踏まえて割り出したもの。これが特定の地震にどれだけ当てはまるのか、わからない部分が多い」と語る。だがそのいっぽうで、「(3.11以降)地震活動は海域から徐々に内陸部へと動きが移っており、福島県で(起きる地震)は海域の余震ではない、内陸の断層を震源とした活動が発生している。こうした動きがさらに南下し、首都圏の直下型地震を誘発する可能性もあり、注意が必要だ」とも指摘する(夕刊フジ1月24日付)。
京大防災研の遠田晋次准教授も、「首都圏は地下構造などよく分かっていない点が多く、(今回の計算は)試算でしかない。確率を気にするより、地震が起きやすい状態だということを忘れずに、そのときに備えてほしい」と語っている(朝日新聞2月1日付)
M7クラスの地震が発生すると、震源の浅いところで震度7(気象庁震度階級の上限値で激震状態)、深いところで6弱から5強の揺れが起きるとみられている。政府の中央防災会議(内閣府)は、2005年にM7.3の「東京湾北部地震」を想定したシミュレーションをおこなったが、その被害はきわめて甚大で、人びとの生命と生活に壊滅的なダメージをもたらす可能性が高い。
それによると、冬の夕方6時、風速毎秒15mの寒風が吹きつける状況下で、もし東京およびその周辺をM7クラスの直下型地震が直撃したとすると、死者約1万1000名、建物の全壊・焼失約85万棟、避難所生活者400万〜460万人、帰宅困難者は600万人におよび、経済的被害は約112兆円と試算した。
だからといってどうすればよいのか。それにしても4年以内に70%だの30年以内に70%、と確率ばかり喧伝されても……と、戸惑う国民も多いに違いない。今日、明日にも首都圏に巨大地震が発生するかもしれないし、あと30年起きないかもしれない。あくまで確率であって、かんたんに移住計画を立てるというわけにはいかなのだ。とすれば、最低限わが身を守るにはどうすればよいかを知って、あとは覚悟を決めるしかない、と考えて当然である。
経済アナリストの森永卓郎氏は、「自宅の一室は備蓄倉庫のようになっていて、水やお茶、ジュース、インスタント食品、約1年分の玄米が置いてありますから、これだけで3カ月ぐらいは生活できる。また、自家用車のガソリンはいつも満タンにしてあります」と、地震への備えをすすめる。
言語学者の外山滋比古氏は、逆に「天災が来たら諦める。これといった対策は全然考えていません。多少準備しても100%防げるわけではないし、想定外のことが必ず起きる。いつやってくるかわからない地震をおそれるよりも、今のうちにできることをやり、毎日の生活を良くしていくこと、良い人生を送ることが大事だと思っています」と、来たるべき震災への覚悟を語る(「週刊現代」2月11日号)。
いつ、どこで、どのくらいの規模の地震が起きるか? これが地震予知の三要素だが、残念ながら1965年に政府の地震予知研究計画がスタートし、69年に地震予知連絡会(国土地理院所管)が発足して以来今日にいたるまで、正確な予知は一度も成功していない。ただ東日本大震災の教訓を得たことで、地震の予測が、根拠のある、確度の高いものになってきたのも事実だ。この積み上げられた研究成果を防災にどう活かすか、そしてなにより、世界でも稀な地震列島に住んでいるという動かしがたい現実をどう認識するか、ひとえに私たち一人一人の自覚にかかっているのである。
(岩城真太郎 いわき・しんたろう=『日本の論点』スタッフライター)
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