政府の司法制度改革推進本部の「裁判員制度・刑事検討委員会」(座長・井上正仁東京大教授)は、10月28日、争点になっていた裁判員の人数について、「裁判官3人と裁判員4人で合議体を構成する」という座長案を公表した。
裁判員制度とは、有権者から無作為に選ばれた裁判員が、裁判官と協力し、有罪か無罪かを決め、量刑を判断するもので、「司法制度改革審議会」(1999年7月設置)が、2001年6月にまとめた最終意見書の柱のひとつだ。意見書は「統治主体、権利主体である国民は、司法の運営に主体的、有意的に参加し、国民のための司法を国民自ら実現し支えなければならない」とあり、国民の持つ社会常識を刑事裁判に反映させたいとしている。
裁判員は、米国や英国の「陪審員」、仏、独、伊の「参審員」と似ているが、その役割は参審員に近い。陪審員制度とは、市民たちが自ら有罪か無罪かの評決を下し、量刑は裁判官が決める。これに対し、参審員制度は、市民が裁判官と一緒に評決し、量刑も同様に二者の合議で決定する。
同検討委は、昨年2月以来、27回の会合を重ねてきた。今回、座長私案のかたちで公表されたが、人数については、「5人ないし6人も考えられる」との留保をつけた。というのも、裁判官を2人とするか、3人とするかをめぐり11人の委員の意見が対立したためだ。日本弁護士会連合会は、現行の刑事裁判制度は法律家の独善性に陥る危険性があり、国民がそれをチェックし、主体的に関与できるよう改めるべきだとの立場から、裁判員をできるだけ多数にするよう「裁判官1〜2人、裁判員9〜11人」を主張した。これに対し、最高裁や法務・検察当局は、現行制度は総じてうまく機能しており、国民の信頼を得ている、と裁判官3人のまま裁判員は同数程度でよいと譲っていない。この議論は与党の自民党内でも割れていて、「裁判官2人、裁判員7人」と、裁判員の数を増やすというのが多数意見だ。民主党は「裁判官1人、裁判員10人前後」という意見だ。
座長案ではこのほか、裁判員制度の対象事件は「法定刑に死刑または無期懲役を含む事件か、故意の犯罪により被害者を死亡させた事件のどちらかに該当する」重罪事件に限るとしている。殺人罪、傷害致死罪、危険運転致死罪が相当する。評決方法は「裁判官と裁判員の過半数によるが、最低でも裁判官、裁判員それぞれ1人の賛成が必要」と規定している。裁判員の守秘義務では「職務上知り得た秘密は漏らしてはならない」として、違反した場合には懲役刑を受けることもある。さらに、政府試案では、「報道機関は裁判員に事件に関する偏見を生じさせないよう、配慮しなければならない」とある程度の報道規制を考えていたのを、「報道機関が自主的ルールを策定しつつあることを踏まえてさらに検討する」と、メディア側の削除要求に一定の配慮をしている。
じつは、戦前の1928〜1943年、刑事裁判で12人の陪審員が被告の有罪か無罪かを決める陪審員制度が採用されていた。しかし、結論に拘束力がない、控訴ができない、被告人が陪審を請求して有罪になったら多額の費用負担がある――などの問題点があり、被告人側の辞退が相次いで施行停止になったいきさつがある。
政府は、来年の通常国会で法案を成立させ、11月までに裁判員制度を実現させたいとしている。しかし、たとえば裁判中の休業補償をどうするかなど、国民に大きな負担をかけずに裁判に参加しやすい環境を整えるには、残された課題はまだ多い。
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