1月5日、小泉首相は年頭の記者会見で、北朝鮮への対応について「拉致、核、ミサイルの問題を総合的、包括的に解決する方針は一貫している。誠意ある対応が北朝鮮の利益になることを伝えていきたい」と述べるにとどまり、こう着状態に陥っている拉致問題の打開策を示すことはできなかった。いっぽう、焦点の6カ国協議は、1月中旬にも再開するとみられていたが、「安全の保証」とエネルギー支援を要求する北朝鮮と、譲歩を拒否する米国の溝は埋まらず、中国の仲介交渉が不調に終わり、いまのところ見通しが立っていない。
こうしたなかで、日本では、1月19日から開会する通常国会に、北朝鮮制裁法案が提出される運びになってきた。「北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟」(拉致議連=平沼赳夫会長、自民30人、民主26人、公明1人=衆参の現職国会議員で構成)が中心となり準備されてきたもので、「外国為替・外国貿易法(外為法)」改正案のかたちをとる。この法案が成立すれば国連の制裁決議などがなくても、「わが国の平和と安全の維持のため必要があるとき」には閣議決定を経て、日本が独自に貿易制限や送金の停止ができるようになる。
12月17日に自民、公明両党の政策責任者会議が同法案を提出することで合意、民主党も送金停止を選挙公約で提案していることから、3党で議員立法として提出される予定だ。同法案は衆参両院につくられる「拉致問題特別委員会」(仮称)で審議される。また、これとは別に、自民党の有志議員で構成する「対北朝鮮外交カードを考える会」が、万景峰号はじめ北朝鮮籍船の日本寄港を阻止するため検討していた「特定外国船舶入港禁止・制限法案」(仮称)の提出も予定している。
これらの北朝鮮制裁法案は、「対話と圧力」という政府の方針が掛け声倒れになっているとして、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(家族会=横田滋代表)が強く求めてきていたもので、12月10日には東京都内で緊急国民集会を開いて機運を盛り上げた。だが、政府は6カ国協議が当面の交渉の舞台であるとの立場をとっており、「北朝鮮が状況を悪化させる対応に出た場合は考えなくてはいけない。いま、平和的な解決を目指して国際社会が協力している。現時点では経済制裁は考えていない」(11月2日、民放テレビ番組での小泉首相発言)というのが基本姿勢である。
しかし、こうした日本の動きに敏感に反応したのか、12月20、21日、北朝鮮は平沢勝栄・拉致議連事務局長らを北京に呼び、鄭泰和(チョン・テフア)・国交正常化担当大使が会談した。平沢氏によると、このとき北朝鮮側は「拉致問題を解決して日朝関係が進展するようにしたい」といい、拉致被害者が平壌空港まで来てくれれば(日本に帰った拉致被害者5人を約束どおり一度北朝鮮に帰すかたちをとれば)、家族と会わせ、帰国できるよう最大限の努力をする、と提案したという。また、制裁法案に対しては「事態が進めば大きな結果を招くだろう」と、ミサイル発射を含む脅しめいた発言もあった。
年末から年始にかけて、今後の北朝鮮の動向を占ういくつかの出来事があった。12月13日にイラクのフセイン元大統領が拘束されたのにつづき、「ならず者国家」とブッシュ大統領から名指しされたリビアの最高指導者カダフィ大佐が12月19日、大量破壊兵器の廃棄を宣言し「自国民の悲劇を避けるためにリビアの決定にならうべきだ」と、北朝鮮、イランなどに呼びかけた。1月1日付の「労働新聞」、「朝鮮人民軍」、「青年前衛」の党、軍、青年組織の3機関紙は共同社説で、「米朝間の核問題を対話を通じ平和的方法で解決しようとする我々の原則的立場は一貫している」と強調した。また、寧辺の核施設に1月6〜10日の間、米国の議会関係者や核専門家の視察を受け入れた。これらの兆候が北朝鮮の軟化を示唆するものだとすれば、北朝鮮は現在、相当追い詰められているといえそうだ。
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