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刑事責任能力
2006.01.19 更新
 東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件で、誘拐、殺人などの罪に問われ、1、2審で死刑判決を受けた宮崎勤被告に対し、最高裁第3小法廷(藤田宙靖裁判長)は1月17日、上告を棄却、死刑が確定した。1990年3月の初公判から16年ぶり。公判では、犯行当時の刑事責任能力の有無が争点となった。弁護側は、宮崎被告が拘置所で幻聴を訴え、継続的に投薬を受けていることなどをあげ、高裁に差し戻して再度の精神鑑定をするよう求めていた。

 88〜89年にかけて東京、埼玉で4〜7歳の幼女4人が誘拐、殺害されたこの事件は、遺骨や、「今田勇子」を名乗る犯行声明が被害者の自宅や新聞社に送りつけられ、当時の社会に大きな衝撃を与えた。89年7月、別の強制わいせつ事件で逮捕された宮崎被告が犯行を自供し、97年4月に東京地裁の1審判決で死刑、ついで抗告した2001年6月に東京高裁では控訴棄却が言い渡されていた。

 公判では、被告が「覚めない夢の中でやったような感じ」など殺意を否認する、不可解な供述を繰り返していた。このため、弁護側が精神障害の疑いがあるとして精神鑑定を要求、1審の精神鑑定では、完全な刑事責任能力があったとする意見と、「統合失調症」、「多重人格が主体の反応性精神障害」として刑事責任能力が一部欠けていたとする2つの意見の計3種類の鑑定結果が出された。しかし、1、2審とも「精神障害の状態にはなく、極端な性格の偏りという人格障害の範囲内」として責任能力を認めた鑑定を支持し、上告審でもこの判断を正当と認めた。

 責任能力とは、善悪を判断し、その判断に従って行動する能力をいい、裁判で責任能力がないと判断されると、「心神喪失者」として無罪になる。責任能力を著しく欠く場合は、「心神耗弱者」として減刑される。「統合失調症」は、妄想や幻想、感覚の平板化といった症状が現れる精神障害で、刑事裁判では責任能力が認められないケースが多い。また、「多重人格」は、複数の人格が交互に現れる障害で、責任能力を認めるべきだとする意見が多い。

 藤田裁判長は、犯行は主な動機が「性的欲求や、死体などを撮影して自分だけのビデオテープを持ちたいという収集欲」と指摘し、そのうえで「冷酷かつ残忍な犯行で、結果は極めて重大。社会に与えた衝撃は大きい。犯行を重ねるほど計画性を強め、自己中心的、非道なもので、酌量の余地はない」と断罪した。しかし、この事件のあとにも連続児童殺傷事件(神戸)や女児殺害事件(奈良)が起こるなど、いずれも犯人のいわゆる「心の闇」が解明されないまま、未解決の社会的な病理として課題が残された。

 公判を最後まで傍聴した作家の佐木隆三氏は、「法廷では無表情で、他人事のように振る舞って、自分には刑事責任能力がない、との懸命の演技のよう。戦後の犯罪史において、子どもを被害者とする事件で、これほど悪質で残虐なものはない。いかに宮崎被告が演技しようとも、私はもはや幻惑されない」と指摘(読売新聞1月18日付)している。いっぽう、ノンフィクション作家の大泉実成氏は、「宮崎事件のようなわけのわからない事件は、人々に強い不安を与える。それがマス・ヒステリーを引き起こし、犯人を共同体から排除しようという強い力が働く。人格障害という言葉は、この際の排除や封印のための道具に成り果ててしまっているように感じられる」と問題提起(東京新聞1月16日付)している。



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