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知らないと恥をかく新語・新知識
社会保障番号
2007.06.21 更新
 6月14日、安倍首相は、「消えた年金」問題をめぐる参院厚生労働委員会の質疑のなかで、年金記録漏れの対応策として、「制度や保険をまたがる情報を統一して社会保障番号のようなものをつくれば、処理も容易になり、国民にとっても利便性があると思う」と述べ、早急に社会保障番号の導入を検討する方針を明らかにした。これは、民主党が参院選の公約で、保険料納付履歴を記載する「年金通帳」の交付を掲げたことに対抗する狙いもある。

 社会保障番号とは、すべての国民に一つの番号を付与し、年金、医療、介護など社会保障に関する記録などを一元的に管理するものだ。年金加入者が持つ「基礎年金番号」や、住所、氏名、性別、生年月日の情報を管理する「住民基本台帳の住民票コード」と似ているが、基礎年金番号は対象が20歳以上に限定され、年金未加入者には割り当てられない。また、住民基本台帳の場合、ネットワークに参加しない自治体がある。

 社会保障番号は、安倍首相が小泉内閣で官房長官だった2006年5月、私的懇談会「社会保障の在り方に関する懇談会」(宮島洋座長)がまとめた報告書に「社会保障の負担と給付の公正を実現するため、すべての納税者に番号をつけて所得を捕捉する納税者番号制度や社会保障番号を導入する」と盛り込まれていたものだ。

 06年9月、関係省庁連絡会議がまとめた報告書にも、社会保障番号の具体的な課題として、(1)10けたの基礎年金番号を活用する、(2)住民基本台帳ネットワークで使われる11けたの住民票コ−ドを活用する、(3)新しい番号を創設する――の3つのパターンがあげられていた。また、基礎年金番号を活用した場合、初期費用が約1240億円と試算されていた。

 海外では、米国が「社会保障番号」を1936年に導入(税務は62年から)し、累計で4億200万人に対して社会保障税の納税額によって年金受給額を決定、社会保障計算書を国民に毎年通知している。スウェーデンでは、1947年から全住民を対象に「住民登録番号」を導入(社会保障、税務は67年から)、個人ごとに年金、児童手当などを管理し、予想年金受取額を国民に通知している。韓国では全住民を対象に、年金、医療などに関するオンライン申請の「住民登録番号」を1968年から(税務は93年から)導入、インターネットで保険料納付記録や年金受給見込み額の閲覧ができる。

 政府は、この社会保障番号とともに、IC(集積回路)を搭載した、健康保険証の役割を持つ「健康ITカード」(仮称)の導入も検討している。これが実現すれば、制度を横断した社会保障関連の情報の管理と事務処理が可能になる。

 導入のメリットとしては、(1)年金や医療などの保険料負担に対し、負担と受益の関係が随時、確認できる、(2)目先の負担が重く、将来の受益が見えにくい若い世代の不平等感の緩和につながる、(3)過去の健康診断の結果を管理することで、長期間にわたる健康状態の変化が把握でき、コンピューター断層撮影法(CT)などの検査結果も記録させておくことで無駄な検査の重複をなくせる、(4)生涯一つの番号のため、結婚、転職などの届け出が各制度に反映され、記録がだれのものかわからなくなるような記録漏れが起こらない――などが挙げられる。

 しかし、病歴を含む個人情報が公的機関に一元的に管理される危険性があり、「国民総背番号制の導入につながる」との懸念を指摘する識者もいる。また、最近、警察官のパソコンから捜査情報などが漏れた例があるなど、管理体制の不備を心配する声も少なくない。「社会保障を一体的に扱う仕組みを考えようという議論をしているのであって、まだまだコンセンサスがあるような話ではない」(塩崎官房長官)というのが現状のようだ。


関連論文

筆者の掲載許可が得られない論文はリンクしていません。
96年以前の論文については随時追加していきます。ご了承ください。

私の主張
(2005年)過剰な期待は禁物だが、納税者番号は税務行政の公平・効率化に不可欠
森信茂樹(政策研究大学院大学客員教授)
(2005年)納番制に合理的理由などない――真意は国民監視システムの導入である
石村耕治(白鴎大学大学院法学研究科長)
(1997年)国民年金は国庫負担増では解決しない。未加入・滞納者から徹底徴収せよ
山崎泰彦(上智大学文学部教授)

議論に勝つ常識
(2005年)[納税者番号制についての基礎知識]
納税者番号制のメリットとデメリットは?
(1997年)高齢化・少子化社会の年金制度のあり方を探るための基礎知識



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