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地球シュミレーター
2007.08.02 更新
 英国における記録的な豪雨、イタリアの猛暑、欧州南部では熱波、中国の大規模水害、アルゼンチンに降った89年ぶりの雪など、この夏、世界各地で地球温暖化が原因とみられる異常気象が観測されている。こうした長期の気候変動や台風、地震などの予測に威力を発揮しているのが、地球環境の変化をまるごとシュミレーション(模擬実験)できる「地球シュミレーター」と呼ばれるスーパーコンピュータ(スパコン)だ。

   現在、独立行政法人・海洋研究開発機構の横浜研究所(横浜市金沢区)に設置され、2002年3月から稼働しているこのコンピュータは、本体380億円、建物70億円の費用をかけて1997年から5年越しでNECと共同開発されたものだ。計算ノードと呼ばれる、CPU(中央演算処理装置)を8つ持つ高性能コンピュータ合計640台で構成される計算機用のキャビネットはじめ、ネットワーク用、記憶装置用の各キャビネット数百台が、テニスコート6面が取れるほどの広さのフロアに置かれ、総延長約2500`の配線でつながれている。その性能は最大演算速度が35.86テラ・フロップス、つまり1秒間に35兆8600億回の計算が可能といわれる。

 米国とドイツの科学者グループが毎年2回発表している世界のスーパーコンピュータの演算処理速度ランキング(TOP500)で、世界最速と認定され、02年6月、第1位になった。かつて旧ソ連が米国を出し抜いて人工衛星を打ち上げたとき、「スプートニク・ショック」という言葉が流行したが、これにちなんで、このときアメリカで「コンピュートニク」と呼ばれたほどだ。その後、04年11月、米国IBMの「ブルージーン/L」に抜かれるまで5期連続でトップの座を続けた。

 国立環境研究所と東京大学は共同で、地球と同じ物理法則が埋め込まれた仮想地球の気候モデルをこのコンピュータの中につくり、地球温暖化が将来にどのような影響を及ぼすかを予測、その結果をさる7月2日、発表した。これは、1981〜2000年の20年間の平均気温などのデータと、2011〜30年の予測気温などのデータを比較したもので、世界が経済重視で移行したため、温室効果ガスの削減があまり進まないとの想定を前提に計算された。

 それによると、2030年の日本の気候は、最低気温27度以上の熱帯夜が現在の3倍、約70日に増えるほか、大気中の水蒸気が増えて降水量が増加、豪雨の頻度が高まる。また、冬季は寒気の吹き出しが弱まり、降雪量は全体的に減少する。21世紀末に二酸化炭素濃度が2倍になると、日本付近の黒潮の流れが現在より約30%速くなり、海水温が最大で3度上昇するという。

 また、▽北極の氷が減少し、2070年の夏には氷がなくなる▽南極全体では降水量の増加が氷の融解量を上回り、21世紀中には氷床が増える▽海面水位が徐々に上昇する▽グリーンランドの氷床やシベリアの永久凍土の一部が融解する▽南極周辺、北大西洋北部では、海流によって表層と深層の海水が混ざり合い、表面水面の温度上昇が遅れる――といったことが予測されている。

 地球シュミレーターは全体の55%が公募によるプログラムの研究に充てられ、25%が国のプロジェクト、残りが産業界や海外との共同研究。地球シュミレーターの効用について、海洋研究開発機構地球シュミレーターセンター長の佐藤哲哉氏は、「現在を基点に遠い過去の地球の再現から、未来の姿まで予測できるようになり、自然災害や環境破壊から人命と財産を守り、人類と地球とのやさしい共生関係に貢献できるようになった」と強調している。最近では、3月1日、大阪大学との間で、超高層建築物の耐震性能を評価する技術の開発について共同研究を行う契約を交わしたが、これも地球シュミレーターを活用することによって、建物の震動に関する詳細な三次元モデルに基づく大規模シュミレーションを展開できるようになったことが大きい。


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