8月24日、読売新聞が報じたところによると、厚生労働省は、いわゆる「ネットカフェ難民」の就労を支援するため、2009年度から、公共職業訓練の受講を条件に、訓練中の住居・生活費として月15万円(最大6カ月間)を融資する制度をつくることを決め、このための関連予算1億円が09年度予算案の概算要求に盛り込まれた。しかし、たとえ職を持っても年収が150万円に満たない受講者は返済が免除されるため、実質的には給付となる。
ネットカフェ難民とは、住むところがなく、日雇い派遣労働などをしながら、終夜営業のネットカフェや漫画喫茶に、1泊あたり1000〜2000円で寝泊まりしている人たちのことだ。日本テレビが07年1月に放送したドキュメント「ネットカフェ難民――漂流する貧困者たち」のなかで、「周囲から孤立し、未来への展望が抱けず、まるで難民のようだった」(水島宏明ディレクター)と呼ばれたのが発端で、いまではこの言葉がすっかり定着してしまった。
厚生労働省が初めて「住居喪失不安定就労者の実態に関する調査」と題したネットカフェ難民の調査結果を発表したのが、それから半年後の07年8月。全国のネットカフェ、漫画喫茶3246店舗に対して電話調査をおこなったもので、それによると、「ネットカフェ難民」は推計5400人おり、年齢別では、20代が26.5%で一番多く、次いで50代23.1%、30代19.0%、40代12.8%、60代8.7%の順で40代以上の中高年が半数を占めた。就労別では、アルバイトや派遣など非正規労働者が約2700人、休職中の失業者約1300人、無業者約900人、正社員約300人。ただし、この調査では、日本複合カフェ協会は「ネットカフェ難民は差別語だ」として協力を拒否している。
今回の融資制度は、住居がないため定職につけず、結果的に日雇い派遣などの低収入で不安定な生活を余儀なくされ、それが就労をさらに困難にするという悪循環をまず断ち切るという発想から生まれたもので、独立行政法人「雇用・能力開発機構」の「技術者育成資金」を活用して、職業訓練受講者に資金を貸し付けるというものだ。
これは、「働きながら学ぶ、学びながら働く」という教育と職業訓練を同時に進めるドイツのデュアルシステムや、若年失業者への職業紹介・職業訓練で50万人を就業させることに成功した英国の「ニューディール」政策にならった、企業と教育機関の連携による人材育成を目指す、いわば「日本版デュアルシステム」だ。制度創設の背景には、路上生活をしているホームレスに対しては、「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」(02年8月施行)によって、自治体や民間団体に財政上の支援を行っているが、ネットカフェ難民はその対象外だったことがある。
厚労省によると、対象は日雇い派遣などで働く30歳代後半まで。融資の期間は3〜6カ月。訓練期間中は働けないため、住居・生活費を支給し、訓練に専念させるようというもので、ネットカフェ難民にとっては「住居と就労の機会の両方を確保できる」というメリットがある。また、訓練修了後、年収150万円以下であれば、返済は全額免除。いっぽう、就労の意思がない給付金目当ての受講者を防ぐため、ハローワークでおこなわれる面接を活用する方針だ。
今回の融資制度創設は、福田内閣が6月に表明した社会保障の「五つの安心プラン」の重点項目に掲げた「非正規雇用対策」のひとつ。しかし、政府とは別に、すでに東京都がことし4月にネットカフェ難民の生活や就労の相談に応じ、住宅資金などを貸し付けるサポートセンター「TOKYOチャレンジネット」を新宿区歌舞伎町にオープン、全国で初めての試みを始めている。委託を受けた社会福祉法人「やまて福祉会」が年中無休で電話相談を受け、日曜・祝日を除いて面談に応じている。住まいを確保するための資金40万円、生活資金20万円の計60万円を無利子で貸し付けている。
今回の融資制度が年齢制限をもうけている点について、「高齢フリーターこそ何とかしなければならないはず」という批判があるいっぽう、月額15万円という“高額の支給”に対して、アパートに住み、アルバイトで、かつかつ自活している若者たちの間には「いかにも政府が考えそうな甘い制度だ」との声がある。
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