横浜市教育委員会が、2012年度からすべての市立小中学校(小学校346校、中学校145校)を小中一貫校とする方針を固めた。現在、全国で小中一貫教育を実施している公立学校は1500校余りあるが、その多くは特区制度を利用した小規模な小中連携にすぎない。500校近い規模で小中一貫教育を導入するのは、全国でも初めての試みだ。
小中一貫教育とは、小学校と中学校を6年と3年に明確に分けず、弾力的なカリキュラムを組む教育方法をいう。2006年に教育基本法が改正された際、それまで「9年」と定められていた義務教育の年限が削除されたことが、公立の小中一貫校や中高一貫校の増設に拍車をかけた。
ひとつの自治体が全小中学校をいっせいに一貫化した先駆的な例としては、2006年に東京都品川区が導入した制度が知られる。その牽引役をつとめた若月秀夫教育長は、「同じ義務教育でありながら、小学校と中学校の学力観や指導観には違いがあり、教員は互いに不信感を抱いている」と指摘し、次のようにいう。
〈小学校が言うところの「みんないい子」が中学校で問題行動を起こし、中学校が厳しく指導するとその子どもはパニックを起こす。その結果、中学校の責任が問われることになる。これまでの小・中学校はこんな悪循環の繰り返しだった〉(『日本の論点2004』)
一般に、中学に入って急に不登校が増える現象を「中一ギャップ」と呼ぶ。その背景には、こうした指導観の違いがある。小学校と中学校は、いってみれば異文化なのである。品川区は、ふたつの文化を統合するために2000年度から少しずつ小中連携を進め、一貫化の準備に6年をかけた。
横浜市のほかにも、京都市、東京都八王子市、宇都宮市など、全市的な小中一貫化を進めている自治体がある。今後もこの動きは続くだろう。となると、一方で進んでいる中高一貫教育との兼ね合いはどうなるのか。
神奈川県では、今年4月、初めての公立中高一貫校(中等教育学校)が2校、開校する。2月1日の入試を前に、県教委が発表した倍率は一校が16.41倍、もう一校が6.45倍。両校合わせると、320人の募集定員に対して計3658人が応募した計算だ。同県の場合、中学に相当する3年間の学費を無料としたため、志願者が殺到したとみられているが、高校入試のない中高一貫校には、受験にあわせた一律の勉強ではなく、生徒それぞれに合った学習ができるというメリットがある。
小中一貫と中高一貫、どちらが子どものためになるのか、親にとっては悩ましい問題である。
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