次世代インターネットにおける、コンピュータとネットワークの関係を示すキーワード、「クラウド・コンピューティング」という考えが注目を集めている。これまでコンピューター端末に入っていたアプリケーションやデータを、すべてネット上で管理するというシステムを思い浮かべればよい。コンピュータ端末は、ネットワークという“雲(cloud)”から、ソフトやデータを好きなときに、好きな場所で取り出せるというわけだ。端末はパソコンである必要はなく、携帯でもテレビでも家電でもかまわない。ネットワーク上で処理が行われるので、端末はただの表示機器であれば、それでこと足りる。
この「クラウド・コンピューティング」は、もともと米グーグルのエリック・シュミットCEOが考え出した概念だ。シュミット氏は2006年8月の講演で、「今日私たちはクラウドのなかに住んでいる。私たちはクラウド・コンピューティングの時代に移行しつつあり、情報とアプリケーションは(中略)サイバースペースという拡散した大気のなかにある。ネットワークこそがコンピュータとなる」と述べ、以来この考えが少しずつIT業界に浸透していった。
実際、グーグルは、04年4月から消費者向けのメールサービス「Google mail」を展開、近年はワープロや表計算といったアプリケーションをつぎつぎと登場させている。ネットに接続しさえすれば、場所や端末が変わっても同じ環境を維持できるというメリットから、グーグル利用者は世界中で増えつづけている。
ただ、このようなネットのイメージは、人々のあいだである程度共有されており、いまや新しいものではない。私たちが携帯電話を使うときは、サーバーの存在など気にしておらず、その意味では「クラウド・コンピューティング」はすでに実現しているともいえる。
では、なぜいま「クラウド・コンピューティング」なのか。背景として、コンピュータ端末が安くなったこと、ネットワークの利用コストが劇的に安くなったこと、などが挙げられる。企業にとっては、膨大なデータやソフトを社内で管理せず、ネットワーク上におくことによって、維持費や人件費のコストをかけずにすむ時代が到来したのだ。そしてグーグルはいま、消費者向けのサービスから始めた「クラウド・コンピューティング」モデルを、法人分野、とりわけ大企業に向けて拡大しようとしているのだ。
グーグルやヤフーはこれまで、無料サービスを提供することで、法人から広告収入を得てきた。しかし今後は、法人向けのITサービスを進化させつつ、新しいビジネスモデルを模索していくことになろう。グーグルは、携帯電話用OS「アンドロイド(Android)」を無償公開しており、日本では2009年度中にNTTドコモから「グーグル携帯」が発売される予定だ。携帯電話はよりいっそうパソコンに近い存在となり、あらゆる家電製品がネットワーク化されるようになるだろう。
こうした「クラウド・コンピューティング」の世界がごく当たり前になったとき、何が起きるのか。最大の問題は、データの管理が個人や各々の企業の手を離れてしまい、「クラウド・コンピューティング」を提供する企業にすべて委ねられるようになることだ。ひとたびネットワークに障害が起きたときの影響は、現在とは比べものにならないほど大きくなる。データの流出による被害は甚大なものになると懸念される。
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