生活保護とは、憲法が保障している「最低限度の生活を営む権利」にのっとって、国が定めた「最低生活費」を世帯収入が下回ったとき、その差額を支給するという制度である。
「最低生活費」は、支給の中心となる生活扶助のほかに、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、臨時の出産扶助などがある。生活扶助は、年齢を基準にする「第一類」と家族の人数を基準にする「第二類」を合計した金額だ。たとえば、都内23区に住む3人家族(夫33歳、妻30歳、子供9歳)の場合だとすると、第一類が3人合わせて合計11万7670円、第二類が3人家族なので5万3880円、合計17万1550円が生活扶助費となる。このケースでは子供が小学生なので、教育扶助として5250円が加算される。さらに住宅扶助も加わり、それらの総計が最低生活費となる。病気などで働くことができず、家計収入がこの最低生活費を下回るのであれば、生活保護を受給できることになっている。だが、不動産や貯金などの資産がある場合は、この対象とはならない。また受給には、年金や扶養義務者からの援助や扶養の有無も勘案される。
厚生労働省の集計では、09年1月の生活保護世帯数が、全国で116万8354世帯にのぼり、過去最多を記録した。昨年12月から8724世帯増えたことになり、前年同月比では5万2463世帯増えた計算になる。いうまでもなく、景気が後退し、失業者が増大したことが大きな原因だ。さらに、90年代と比較すると、生活保護世帯に占める高齢者世帯の割合は、一番高くなっている。95年に生活保護を受給していた高齢者世帯は25万世帯だったが、07年には倍の50万世帯に達している。
高齢者世帯が高い割合を占めるわけは、行政が、働ける現役世代に対する生活保護を抑制しているからだ。おもな理由は不正受給だ。ちなみに07年度の不正受給は約1万6000件に達し、そのうち55%が就労事実の無申告だった。つまり、働いて収入があるにもかかわらず、それを申告せずに生活保護を受給する人たちが目立ってきたのである。たとえば、厚労省の資料によると、傷病のある世帯主(59歳)は、タクシー会社で2年間就労していた事実を隠し、約350万円を過大に支給していたという。現役世代が生活保護を受けるハードルが高くなっているのはこういった背景がある。
働く能力があるにもかかわらず、生活保護を受けるというのは、国民や行政から理解を得られにくい。だが、失業後、新しい仕事を探し、職に就くまでには、相当な期間を生活する資金が必要だ。雇用保険の給付金では不十分という声が大きい。収入のない高齢者世帯の生活を保護することはもちろん、失業してなかなか仕事に就くことが出来ない現役世代にもセーフティネットの枠を広げるには、生活保護の制度では限界がある。児童手当の充実も含め、就労支援に抜本的な議論が叫ばれるゆえんである。
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