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DNA鑑定
2009.05.14 更新
 証拠物に付着したDNAが決め手となって刑が確定、現在服役している受刑者のDNA型が、あらためて証拠物を鑑定した結果、別人のものであることがわかった。

 1990年5月12日、栃木県足利市で保育園女児(当時4)が行方不明となり、翌日遺体となって発見された。この事件で栃木県警は、翌91年12月、女児のシャツに付いた体液のDNA型が一致したとして、元幼稚園バス運転手の菅谷利和受刑者を逮捕。菅谷受刑者は、1審途中から無罪を主張したが、1、2審、最高裁ともにDNA鑑定を有力な証拠と認め、2000年に無期懲役が確定した。

 今回おこなわれた再審請求のための証拠調べでは、鑑定人2人が、女児の下着のシャツから菅谷受刑者とは別の男性のDNA型を検出、当時のDNA鑑定の誤りを結論づけた。これにより、再審がおこなわれる公算が大きくなった。

 DNA鑑定とは、人の遺伝子の本体であるDNA(デオキシリボ核酸)の塩基配列が1人ひとり異なることから、これを比較して個人を特定しようとする鑑定法だ。日本では、89年から犯罪捜査に使われるようになり、現在では全国の科学捜査研究所で実施されている。具体的には、現場に残された微量の血痕や毛髪、唾液、精液、汗などからDNAを検出し、被疑者に由来するものであるかどうかを見きわめる(『日本の論点2009』基礎知識「DNA鑑定の精度はどこまで上がったか?」参照)。鑑定の実施件数は、精度の向上とともに増えていき、92年は51事件だったものが、昨年は3万74事件に達している。

 しかし、足利事件の鑑定がおこなわれた90年代初期は、DNA鑑定の精度はまだ低く、弁護団によると、「足利市周辺で同じ血液型、DNA型を持ち、性的犯罪が可能な男性は700人いる」といっておかしくない程度のものだったという(東京新聞5月9日付)。足利事件は、DNA鑑定が、容疑者を特定する「切り札」となった事件で、2000年には、最高裁がDNA鑑定の証拠能力を初めて認めたケースとしても注目された。だが、今回の再鑑定結果により、かつてのDNA鑑定そのものが冤罪を招いた可能性があり、初期のDNA鑑定を証拠としたほかの判決に影響が及ぼすこともあり得る。

 現在では、DNA鑑定は飛躍的に進歩し、およそ4兆7000億人に1人を特定できるまで精度が上がり、犯人の特定だけでなく、冤罪の防止にも役立つようになった。米国では、有罪が確定したあと、DNA鑑定によって無罪が立証されたケースがあいついでおり、ニューヨークのあるNPOの調査によると、これまでに239件の冤罪が明らかとなっている(毎日新聞5月9日付)。米国では、冤罪を防ぐため、死刑囚や懲役囚がDNAの再鑑定を求める権利が認められており、日本でも、今回の結果をきっかけとして、再鑑定のための法整備が議論されることになりそうだ。

 足利事件では、警察署や裁判所が、証拠物である女児のシャツを、14年間にわたって茶封筒に入れただけでロッカーなどに置いていたとされ、証拠物の保存法についての問題も指摘されている。04年からは氷点下80度で冷凍保管されているとのことだが、すでに犯人以外の第3者のDNAが付着している可能性は否定できない。

 今回の再鑑定結果を受けて東京高裁は、検察・弁護側双方に対し、6月12日までに意見書を提出するよう求めている。

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