麻生太郎首相は、19日、経済財政諮問会議で厚生労働省の分割を検討するように与謝野経済財政担当大臣に指示した。首相の構想する分割案とは、厚労省を「国民生活省」(雇用・少子化・男女共同参画を管轄)と「社会保障省」(年金・介護・医療を管轄)の二つに分けるというもの。去る15日におこなわれた安心社会実現会議で、読売グループ会長の渡辺恒雄氏が首相に提案したのを受けて、首相は「単に厚労省を2つに分割するのではなく、国民の安心を所管する省をつくりたい」(産経新聞5月25日付)との意向を示していた。
厚労省は、管轄する分野が年金をはじめ、医療、介護、少子化と多岐にわたる。また予算規模も一般歳出52兆円のうち約半分の25兆円を占めることから、かねて「大きすぎる」との声があった。縦割り行政の弊害もある。医師の養成は文部科学省、自治体病院は総務省、救急搬送は消防庁が所管。少子化対策は、他の省庁に分散され、非効率な行政が指摘されている。また、社会保険庁の不祥事や、年金記録の統合作業、高齢者医療や薬害問題など、山積する課題を大臣ひとりでは処理できなくなっていることも厚労省分割論が浮上した要因のひとつだ。
ただ、首相の提案があまりに唐突だったため、自民党内には慎重論も根強い。舛添厚労大臣は、「省庁再々編成をやるべきで、厚労省の問題ではない」(朝日新聞5月27日付)と不満を漏らすと、笹川自民党総務会長も「(厚労省だけを)分割すれば収まる話ではない。国交省も総務省も大きい」(同)とほかの省庁も含めた再編の必要性に言及した。
中央省庁の再編は、98年、橋本内閣によって進められ、01年、建設省、運輸省、国土庁が国土交通省に、郵政省、総務庁、自治省が総務省に、厚生省と労働省が厚生労働省に統合された。その再編から10年。行政の効率化が進んだかといえば、かならずしもそうとはいえない。たとえば、厚生労働省では、厚生省と労働省が統合した後も、トップの事務次官人事はたすきがけだし、天下りも年金関係の公益法人だけで400人が天下りしていることがわかっている。
関係閣僚は、週内に、分割に関する素案をまとめ、次期衆院選のマニフェストにも載せる予定になっているが、首相の指示からわずか10日ということもあって、選挙向けパフォーマンスだとの批判がある。中川秀直元幹事長は「厚生労働省分割案は本来、省庁再編の全体像から言わなくてはならない。インパクトがない。政権交代への機運は強く、このままいったら、自民党は負ける」と指摘する(毎日新聞5月27日付)。
すでに子どもと家庭に関する行政を一元化する「子ども家庭省」の創設をマニフェストに盛り込む(岡田克也幹事長)としている民主党は、鳩山代表が「なぜ今また、2つに分けるのかということが、必ずしも良く見えてまいりません」(FNN5月27日放送)と、この時期に分割案を打ち出すことに疑問符を投げかけた。
こうした内外の批判に、麻生首相は、28日、再編は必要としつつも「最初から(分割には)こだわっていない」と発言を修正。厚労省の分割論議は当分の間、迷走を続けそうだ。
|