一般に、日本の一戸建て住宅が欧米とくらべて住宅寿命が短いといわれるのは、平均して築後30年経つと取り壊されることが多いからだ。アメリカの平均住宅寿命は55年、イギリスは77年だ。日本の住宅が短期間で取り壊されるのは、耐久性に問題があるからではなく、地価が上昇する速度にくらべて、上もの、つまり住宅の資産価値が早く下がるためだ。したがって地価の上昇した土地は売られ、住宅は取り壊されてしまう。じっさい、日本の国富(資産)の内訳をみると、住宅は1割に満たないのに対して、土地は5割近い。
そこで資産価値が落ちない住宅の建設を、と07年に福田元首相が提言したのが「200年住宅ビジョン」である。良質な住宅をつくれば、その住宅は土地とともに長期にわたって資産価値は下がらない。こうした長持ちする住宅が普及すれば、自分の住宅を高く売ることもできるし、他の人が住んでいた良質な住宅に移り住むことができるから、住宅を新しく建てるよりコストがかからないですむ。また取り壊しの廃材が出ないから環境負荷も少ないというわけだ。
こうした住宅の建設を促すために、6月4日施行されたのが「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」だ。これによって、基準を満たした住宅をつくり自治体に申請すれば、税制面で優遇されることになった。たとえば、住宅ローンを組むと10年間に最大600万円の減税(一般住宅は500万円)、投資減税として費用の10%を所得税から控除、固定資産税における新築減税特例の適用期間を2年延長、不動産所得税の控除額が一般住宅より増額される、などの優遇措置が受けられる。ただし、住宅ローン減税は、2013年までに住宅を取得した人に限られる。また、所得税額の特別控除も2011年までの期間限定だ。
ただ現在のところ、新規住宅着工数は依然として厳しく、4月は前年同月比16%減と、7カ月連続の減少だった。大和ハウス工業の樋口武男会長は、今回の新制度について、「景気対策、雇用対策で先行きの見通しが明るくなれば、住宅関連の優遇策はインパクトがある」と期待する(産経新聞6月3日付)。
法政大学大学院教授で、住宅政策に詳しい小峰隆夫氏も、長期優良住宅が普及すれば、中古住宅市場が活発になると指摘、「個性的な家は市場での評価が下がるので、できるだけ他人に使いやすい標準的な家をたてるようになる。住宅の標準化が進むから建設コストは下がる。やがて売らなければならないと考えると、メインテナンスも丁寧に行うことになる。結果的に、長持ちして資産価値の高い家が主流となるはずだ」(『日本の論点』2009年版)と述べている。
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