09年度の最低賃金改定案が、今年7月の中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関、以下中賃審)で示され、最低賃金が生活保護の給付水準を下回っている12都道府県(北海道、青森、秋田、宮城、埼玉、千葉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫、広島)に限って引き上げられることが決まった。これによって全国の最低賃金は、平均すると、前年度にくらべて7〜9円増の時給710〜712円になる予定だ。その他の35県は「現行水準の維持」にとどまった。
最低賃金は、毎年夏に出される中賃審が示した案をもとに、各都道府県の審議会を経たのち、各都道府県の労働局長によって時給が決められるという手順を踏む。決定した賃金より低い賃金の労働協約は、罰則の対象になる。たとえば、東京都は、東京地方最低賃金審議会が、中賃審の答申どおり25円の引き上げを決定し、10月1日から791円となる旨を東京労働局に8月5日に提出、最低賃金が改定される見込みだ。
昨年度の最低賃金は、全国平均703円で、仮に1日8時間週5日働くと、年収は140万円程度だ。かねて最低賃金が問題視されていたのは、生活保護費の給付水準の高い地域では、20〜40歳の単身者で月14万円ほどの給付を受けることになり、所得が生活保護の支給額を下回ってしまう可能性があるからだ。ちなみに、もっとも下回ったのは神奈川県で、昨年は、最低賃金766円、生活保護水準825円で、59円の開きがあった。
民主党はマニフェストで「全労働者の最低賃金を当面時給800円にし、最終的には全国平均で1000円を目標にする」とうたい、社民、共産、公明各党も1000円への引き上げを方針として掲げている。時給1000円になれば、1日8時間働いた場合で、年収は200万円程度ということになる。
いっぽう、人件費の上昇は製造コストの上昇を招くため、企業が採算割れし、ひいては雇用に悪影響を及ぼすという意見は根強い。舛添厚労大臣は、民主党のマニフェストに対して「最低賃金を1000円に上げると言っているが、中小企業がつぶれ、失業者がもっと増えることになりかねない」(産経新聞8月5日付)と一蹴、自民党も最低賃金の引き上げに慎重な姿勢を示している。北海道大大学院の安部由起子教授は「懸念は労働需要が縮小し、失業率が上がること。特に地方には影響が大きい」(産経新聞8月10日付)と分析する。
こうした指摘に対して、民主党は、負担が増える中小企業には年2200億円を助成することで、経営に配慮すると説明している。同志社大学で労働経済学専門の橘木俊詔(たちばなき・としあき)教授は「不況であっても、労働者が生活できる賃金を支払うのが企業の責任だという発想の徹底が大事」(読売新聞8月7日付)と指摘している。
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