8月末、民主党の鳩山由紀夫代表が月刊誌「Voice」9月号に発表した論文「私の政治哲学」の中で、アメリカ発グローバリズムを批判した部分が、米ニューヨーク・タイムズ(電子版)に紹介されたことで、アメリカから反米的だと攻撃を受けたことが話題になった。鳩山氏は「友愛について書いたものだが、真意が歪められて伝わった」と反論した。
この「友愛」という二文字、今年5月に民主党代表選挙に出馬したさい、「ともに生きる社会、『友愛社会』をつくるために、必ず政権交代を成し遂げたい」と支持を訴えて以来、つねに鳩山代表の口をついてでる言葉だ。鳩山氏は、その意味を「すべての人が互いに人の役に立ち、必要とされること」と説明するが、政党の理念としてはいまひとつピンとこないという人も多い。
鳩山代表が「友愛」を理念に掲げたのは、96年のさきがけ時代からで、旧民主党の「立党宣言」(1996年9月)にも「私たちがこれから社会の根底に据えたいと思っているのは『友愛』の精神である」とある。
友愛の理念を説いたのは、「汎ヨーロッパ」運動を提唱し、欧州連合(EU)の生みの親といわれるオーストリアの思想家、クーデンホフ・カレルギー伯(母は日本人の青山光子)だ。カレルギー伯の著書『全体主義国家対人間』(1935年刊)を、鳩山氏の祖父、一郎が『自由と人生』と改題して翻訳出版、このときフランス革命のスローガン「自由・平等・博愛」のうち、博愛(fraterniteフラタナティ)を友愛と訳した。
鳩山氏は先述の論文のなかで、「カレルギーの友愛革命は、左右の全体主義との激しい戦いを支える戦闘の理論」と指摘し、祖父の一郎は「(当時)勢いを増す社共両党に対抗しつつ、他方で官僚派吉田政権を打ち倒し、党人派鳩山政権を打ち立てる旗印として友愛を掲げた」と記している。ちなみに一郎がまとめた「友愛青年同志会綱領」(53年)にも、「われわれは自由主義の旗のもとに友愛革命に挺身し、左右両翼の極端なる思想を排除して、健全明朗なる民主社会の実現と自主独立の文化国家の建設に邁進する」と記されている。
冒頭に紹介した鳩山論文は、米紙の抄訳では「日本の新たな道(a new pass for Japan)」と題され、友愛に触れた冒頭部分は割愛された上、 (1)日本は米国主導のグローバリズムという名の市場原理主義に翻弄され続けてきた、(2)米国の国力が衰える情勢でのアジア統合の重要性、の2点が鳩山氏の主張だとして要約された。この論文に対し、米国では「強い反グローバリゼーション的傾向と反米色を含んでいて、登ろうとする山の手前で自ら穴を掘ったようなもの」(マイケル・グリーン米戦略国際問題研究所日本部長、読売新聞9月6日付)といった声が相次いでいた。
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