9月17日、原口一博総務相は就任後の記者会見で、長年の懸案である地方分権改革にからむ国の出先機関の廃止・縮小問題について、「国の出先機関の原則、廃止」を明言した。これを受けて29日には橋下徹大阪府知事ら首長連合のメンバーが「バックアップ」を表明するとともに、橋下府知事は独自に出先機関の受け皿として「関西広域連合」を充てるとの試案を明らかにした。
国の出先機関とは、中央省庁の地方支部(国家行政組織法では「地方支分部局」という)で、国会の承認を得て設置される国の地方行政機関(地方自治法)だ。××県にある国土交通省の支部は「××地方整備局」、農林水産省は「××地方農政局」、経済産業省は「××経済産業局」といった具合に、全国に3438機関(ブロック単位92、都道府県単位3346)が設置されている(地方分権改革推進委員会事務局の調査、08年12月現在)。これらの出先機関に勤める国家公務員は、21万人。国家公務員全体(約32万人)の7割近くを占めている。
仕事は、国が直轄する公共事業や雇用対策、農地や食糧の管理などの事務。いわば、国の政策の実行部隊だ。しかしじっさいには、補助金や許認可権限をもっているので、中央省庁にとっては地方自治体をコントロールする役割をはたしてきた。
しかしいっぽうで、官製談合の横行や道路特定財源の流用、汚染米の不正流通見逃しなどの不祥事が次々と明るみに出て、「中央省庁は国会、地方自治体は議会がチェックするが、出先機関はガバナンス(組織統治)が効いていない」(原口総務相)との批判があった。
もうひとつの批判に、国と地方自治体が同じ仕事をおこなう結果、行政コストがふくらむという「二重行政」問題がある。たとえば国交省と農水省の出先機関である北海道開発局は、道路や河川の管理事務をおこなうが、北海道庁の土木現業所も同じ仕事をおこなっている。
行政のスリム化は戦後歴代内閣が取り組んできたが、霞が関官僚の激しい抵抗にあって、遅々として進んでいない。なぜなら、地方分権=地方自治体に権限と財源・事務を移譲することは、出先機関を廃止・縮小することであり、それは、公務員の削減を意味するからだ。「組織、ヒト、カネに関する大改革であり、地方分権推進の本丸」(丹羽宇一郎・地方分権改革推進委員会委員長)だといわれるのはこのためだ。背景には、「出先機関は霞が関の中央省庁にとっては身内。その廃止は独立行政法人化より抵抗が強い」(増田寛也元総務相)という事情がある。
地方分権改革推進委員会は、昨年12月、8府省15の出先機関のうち9機関を廃止し、国交省の地方整備局など6機関を「地方振興局」と「地方公務局」に統合、約3万5000人の人員を削減するとの内容を盛り込んだ第2次勧告を麻生太郎首相に提言した。しかし、ことし3月の出先機関改革の工程表には、霞が関に配慮したのか、具体的なことは示されず、地方自治体から「骨抜きだ」と厳しく批判されていた。
全国知事会は、出先機関の廃止・縮小のメリットとして、(1)行政サービスをより住民に近いところでおこなう地方分権の主旨を体現する、(2)国と地方の二重行政を解消し、行政コストの大幅カットを実現する、(3)国が本来の役割に専念できる組織に変わる、ことを挙げた。
鳩山民主党内閣は、この問題にどう取り組むのか。これまでの地方分権改革推進委員会に代わり、あらたに鳩山首相を議長に関係閣僚、全国知事会など地方6団体をメンバーとする「国と地方の協議の場」を法制化、出先機関改革と国庫補助負担金の一括交付金化の設計を行う方針だ。すでに勧告済みの「都道府県から市町村への権限移譲」や、自治体の仕事を国が法令で細かく縛る、義務付け・枠付けの廃止・縮小を、「新地方分権一括法案」に盛り込み、来年の通常国会で成立を図る。
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