1000の論客、1000の主張 日本最大の論争データベース『日本の論点PLUS』ついに誕生!!
日本の論点PLUSとは? 本サイトの読み方
日本の論点PLUS
執筆者検索 重要語検索
フリーワード検索  
検索の使い方
HOME 政治 外交・安全保障 経済・景気 行政・地方自治 科学・環境 医療・福祉 法律・人権 教育 社会・スポーツ
今週の必読・必勝 日本を読み解く定番論争 議論に勝つ常識一覧
論争を読み解くための重要語
官房機密費
2009.11.12 更新
 11月9日、平野博文官房長官は記者会見で、官房機密費(内閣官房報償費)について「政権が代わってまだ50日。報償費の使途を国民に出すことがいいのか、自分なりに検証したい」と述べ、使途の公開に含みを残した。平野氏は当初、「承知していない」と官房機密費の存在そのものをはぐらかし、次いで「内閣、政府にとって重要な情報収集への対価」と説明、使途の公開については否定的な見解を示していた。しかし、連立を組む社民党が官房機密費の透明性の確保を求めるなど批判が強まり、方針転換を模索し始めた。

 官房機密費とは、正式には「内閣官房報償費」といい「内政、外交といった国の事務や事業を円滑かつ効果的に遂行するため、そのつどの判断で機動的に使用する経費で、国政の遂行上不可欠のもの」とされている。取り扱いは官房長官の裁量に委ねられ、領収書は不要。しかも使途は一切明かされず、会計検査院のチェックも形式的なものとされている。実態がベールに包まれていることから、自民党政権下では権力の行使や国会対策における「潤滑油」と呼ばれてきた。2009年度予算では14億6165万円が計上されている。

 国会の答弁で官房機密費の定義をおこなったのは、鈴木善幸内閣の宮沢喜一官房長官だった。宮沢氏は「報償費は、国が国の仕事を円滑に推進するために、状況に応じて最も適当と考えられる方法で、機動的に使用される経費。総理として広く内政、外交の円滑な推進を図るうえにおいて、これに関する協力、努力、功労、またはそれらを促すために望ましいと思われる場合、状況に応じて支出される経費。高度の機密を保持する必要があり、内訳は言えない。適切に使われているかどうかはモラルの問題で、適切に使われていると思う」と答えている(松田喬和著『しったかぶり政治の"せ"の字がわかる本』、明日香出版社)。

 官房機密費の中身の一部が明るみに出たのは、01年1月、外務省の元要人外国訪問支援室長らが外交機密費(外務省報償費)を私的に流用していたことが発覚したときだ。当時、外務省は約56億円(本省分19億円、在外公館分37億円)の外交機密費を「情報収集」の名目で使用していた。また同年2月、共産党と一部マスコミが98年当時の首席内閣参事官が書いたとされる機密文書(形式的には外務省計上分を内閣官房に交付する形をとると表記)を暴露、そのなかには外交機密費から毎年20億円を官房機密費に上納すると記されていた。国会の議決を経ない計上は、経費の流用を禁じた明白な財政法違反だ。

 さらに、村山富市内閣のときの野坂浩賢官房長官が朝日新聞のインタビューで常時8000万円の現金が官房長官室の金庫にキープされ、議員の海外視察の餞別に使われていたことを明かした。02年4月には共産党が、宮沢内閣の加藤紘一官房長官が使っていた官房機密費の使途明細書を入手して公表した。それによると、1億4386万円が国会対策費として与野党の議員に背広代の名目などで配られたり、パーティー券購入に使われていた。

 このほか、テレビ番組の中で、小泉純一郎内閣の塩川正十郎財務相が宇野宗佑内閣の官房長官だったとき、常時4000〜5000万円の官房機密費を官邸会計課長のもとで管理し、野党対策に使っていたことを明らかにした。しかし、その後に国会で共産党から追及されると、「忘れました」ととぼける一幕があった。

 また共産党の志位和夫委員長も当時「国家機密の名のもとに、国民の税金を勝手放題なやり方で不当に流用してきた歴代政府の責任を追及し、政治腐敗の根源をなす腐ったシステムを日本の政界から根絶する」(しんぶん赤旗02年4月13日付)と、官房機密費の実態を公表した理由を強調していた。

 歳川隆雄「インサイドライン」編集長は、著書『機密費』(集英社新書)のなかで「使途がいっさい公開されていないことのほかに、それが会計検査の埒外(らちがい)におかれてきたことで聖域化されたブラックボックスになっている」と官房機密費の問題点を指摘している。

 官房機密費について、鳩山由紀夫首相は5日、「官房長官に任せてある。わたしはこの問題には一切触らない」と語ったが、じつは、鳩山首相が民主党代表のときの01年、「官房機密費流用防止法案」を通常国会に提出している。この法案の内容は、官房機密費を外交・安全に関連する機密費と一般経費に分け、厳しい用途制限を課すことや、機密性の高いものは25年、それ以外は10年の経過後に公表を義務付けるものだった。

バックナンバー


▲上へ

Copyright Bungeishunju Ltd.