12月3日、税制度の方向を決める政府税制調査会は、2010年度からたばこ税を1本あたり2〜5円引き上げることで合意した。最終的な引き上げ額が決まるのは、税制改正大綱をまとめる15日だが、増税になると、06年7月以来のこととなる。当初、厚生労働省は健康増進の立場から、主要銘柄のたばこ1箱(20本、300円)を600円にする大幅な増税を求めたが、値上げによる販売数の低下、つまり税収減を恐れた財務省が強く反対し、小幅増税にとどまった。
現在、主要銘柄のたばこ1箱300円には、国たばこ税、地方たばこ税、たばこ特別税合わせて174.88円(全体の58%)と消費税の14.28円(全体の5%)が小売価格に上乗せされている。いうなれば、たばこの値段の6割は税金で、1日に1箱吸う喫煙者なら、年間は7万円の税を払っている計算になる。
たばこ税の税収総額は、2兆795億円(09年度予算ベース)で、年間税収約40兆円の5%強を占める。専売公社が民営化されて以降過去3回増税されている(98年、1本あたり0.82円、03年1本0.82円、06年に1本0.852円値上げされた)が、「困った時のたばこ税」とか、「財政の帳尻合わせ」といわれるのも、財源不足に陥るたびに俎上にのぼるからだ。じっさい、98年のたばこ特別税は、旧国鉄の長期債務返済策に使われ、03年は企業減税の財源、06年は児童手当拡充の財源確保に充てられた。この3回のたばこ増税のうち、最初の2回は税収増につながったが、前回の06年の増税は、値上げによる売り上げ減が響いて税収減になった。1991年度以降、毎年度2兆円を超えていたたばこ税だが、健康志向で喫煙者が減り、国内たばこ市場は縮小が続いている。ちなみに国内たばこの売り上げ本数は、ピーク時(96年度)の3483億本から08年度の2458億本まで大きく減少した。
たばこ税の歴史をふりかえると、1876年(明治9年)、「煙草税則」が施行されたのが課税の最初で、1898年(同31年)、日清戦争後の財政難から葉タバコを専売制にして税収増を図った。1904年(同37年)、日露戦争の戦費調達のため、たばこの製造から販売まで国の管理下に置かれ、44年(昭和19年)、太平洋戦争の激化でたばこが配給制になる。49年からは日本専売公社(現:JT)がたばこ事業を引き継いたが、85年に専売公社が民営化、このとき、たばこ消費税(現在のたばこ税)が創設された。
海外の代表的な銘柄1箱あたりの税込価格(円換算)は、英国が1187円、米国(ニューヨーク州)830円、フランス773円、ドイツ644円と、日本よりも高い(08年7月現在、財務省の調べ)。
喫煙率を各国でくらべると、日本人は、全国民の24.9%(男性38.9%、女性11.9%、09年JT調べ)、米国20.8%(男性23.9%、女性18.1%、06年統計以下同)、英国22.0%(男性24.0%、女性21.0%)、フランス26.4%(男性30.0%、女性23.0%)、ドイツ27.2%(男性32.2%、女性22.4%)、ロシア38.8%(男性63.0%、女性18.0%)。日本の喫煙率は、女性の喫煙率の低さが目立つ以外は、標準的といわれる。
今回のたばこ増税をめぐる賛成、反対意見は以下のとおり。
(賛成派)
「たばこは健康の問題がある。ヨーロッパ並みの金額(約600円)にする必要がある」(長妻昭厚生労働相・11月1日テレビ番組で)
「喫煙率の低下や未成年の喫煙防止には、価格引き上げが一番の方法」(「禁煙推進議員連盟」事務局長、小宮山洋子議員・東京新聞12月8日付)
「たばこの価格を上げることで青少年の喫煙を減らす効果も期待できるうえ、医療費の節減にもつながります。(中略)たばこ税というのは一種の禁酒税的な目的がある。飲酒と同じで、消費が過度にならないようにする狙いがあります」(「禁煙ジャーナル」編集長、渡辺文学氏・産経新聞11月14日付)
(反対派)
「健康と増税の二兎を追うような言い方は、政治のけじめとして納得できない」(毎日新聞編集局顧問、岩見隆夫氏・『サンデー毎日』11月22日号)
「税をとるために100年以上もたばこを売ってきた政府が、健康増進を理由に、いきなり大幅増税するのは整合性がとれない」(依田高典京都大教授・読売新聞11月19日付)
「(増税によって)喫煙者がたばこをやめれば、平均寿命は延びますが、かりに寿命が3年延びると、3年分の年金給付が増える。これにより国民負担が年間1兆円分増え、減少する税収と寿命が延びることによる医療費増を含めると、国民負担は年間2兆円前後になる。国民負担が劇的に増えて、財政悪化も半端でなくなることを国民に問いたい」(経済評論家、森永卓郎氏・産経新聞11月14日付)
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