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日本年金機構
2010.01.07 更新
ずさんな年金記録管理によって国民の将来設計に不安を与えたとして批判をあびていた社会保険庁が、あらたに民間の特殊法人、日本年金機構法(Japan Pension Service)としてスタート。各紙に「私たちは変わります」と題する広告を掲載した1月4日、発足式が東京都杉並区の本部(旧社会保険事務センター)で行われた。
旧社会保険庁では2004年7月以降、ずさんな年金記録の管理ばかりか、職員による年金保険料の横領、不正免除などの不祥事が次々に発覚した。このため、自民・公明連立政権時代の07年3月、社保庁の解体と非公務員型の日本年金機構の新設を閣議決定、同年6月に法律が成立していた。
発足式では、監督責任を負う長妻昭厚生労働相が「もはや失敗は許されない。年金だけが頼りという人もいる。国民の老後を支えるのは自分たち、という使命感を持って職務に励んでほしい」とあいさつ、紀陸隆理事長も「年記録問題を胸に刻み、国民の負託に応えねばならない。お客さまの立場に立ったサービスを心がけてほしい」と訓示した。
1962年に厚生省の外局として設立された旧社会保険庁の職員構成は、少数のキャリアの厚生官僚と、社会保険庁採用組、さらに地方採用組の3層からなり、全職員約1万6800人のうち地方採用の国家公務員(地方事務官)が9割を占めるという特徴的な人事システムだった。これに対し、日本年金機構は、本部(職員約1080人、業務は全体の管理・企画)、ブロック本部(札幌など全国9カ所、約720人、年金事務所の指導・管理)、事務センター(47都道府県に1カ所、約3030人、書面の入力、審査や紙台帳の照合)、年金事務所(312カ所、約7450人、旧社会保険事務所で、年金相談や保険料の強制徴収などの対人業務)から成り、全国51カ所の年金相談センターは、全国社会保険労務士会連合会に業務委託され「街角の年金相談センター」に衣替えすることになった。役員は、理事長に紀陸隆・元日本経団連専務理事が就任、15人のうち理事長ら10人が民間から起用された。全職員の数は、有期雇用を含めて約2万3000人。このうち正規職員は1万2566人で、ほとんどが旧社保庁からの再就職組だが、民間からも約1100人が採用された。
なお、旧社保庁で懲戒処分を受けた職員や勧奨退職に応じなかった525人は「分限(ぶんげん)免職処分」にした。分限とは公務員の身分のことで、分限免職処分とは民間でいう解雇にあたる。国家公務員法の規定では、組織の改廃時に定員から漏れるなどした場合には分限免職処分となる。人事院によると、国家公務員の分限免職処分は1964年以来45年ぶりで、これほど大量に処分がおこなわれたのは戦後の混乱期を除いて初めてのことだ。525人のうち401人は退職金が上積みされる処分を希望しているが、再就職の支援が決まっていない者が59人いる。この処分をめぐっては「連合」や平野官房長官が救済を求めるなどの経緯があり、このため長妻厚労相は2年間に限り非常勤職員として採用する救済策を講じた。だが、処分を受けた職員の一部は「二重処分にあたる」と取り消し訴訟を起こす構えだ。
年金機構の最大の課題は、いまだ不明の5000万件におよぶ年金記録漏れへの対応だ。民主党政権としては2010年度と11年度を「集中対応期間」として、コンピューターの記録と過去の紙台帳記録(約8億5000万件)との照合を引き続き進める。また該当者不明の年金記録や厚生年金の記録改ざんについては、救済基準を緩和して記録の回復に取り組む。ただ、照合関連予算が減らされており、10〜13年の4年間で全件照合するのはむずかしそうだ。また、年金納付率も08年度は62.1%と落ち込んでいて、納付をどう向上させるかも懸案だ。
日本年金機構については、「年金記録課」を新設したり、悪質な保険料滞納者には国税庁が強制徴収にあたることや、電話は3コール内に出ることなど「お客様へのお約束10か条」を年金事務所に掲示したりと、信頼回復に積極的に取り組む姿勢を評価する声がある反面、「年金事務所や職員が、親方日の丸の旧態依然のままだと、たんなる看板の掛け替えになりかねない」と先行きを危惧する識者の指摘もある。
関連論文
筆者の掲載許可が得られない論文はリンクしていません。
96年以前の論文については随時追加していきます。ご了承ください。
◆
私の
主張
(2009年)「税方式か社会保険方式」かという年金議論自体の間違いを指摘する
西沢和彦(日本総合研究所主任研究員)
(2009年)税方式で一体何の問題が解決するというのか――議論に採点基準を設けよ
駒村康平(慶應義塾大学教授)
(2008年)マスコミ報道のワイドショー化の罠にまんまとはまった「安倍首相失脚」
田原総一朗(ジャーナリスト)
(2008年)保険料方式は不幸のもと――所得再分配機能のある消費税を財源に
西沢和彦(日本総合研究所調査部主任研究員)
(2008年)負担あってこその給付。消費税が財源の税方式は社会の活力を奪う
盛山和夫(東京大学大学院教授)
(2008年)温存される年金官僚の利権――関連委員会の連携プレーで断ち切れ
磯村元史(函館大学教授)
(2005年)年金制度が理解されないのは政府が「税」を保険料と強弁するからである
西沢和彦(日本総合研究所調査部経済・社会政策研究センター主任研究員)
(2005年)負担と給付が明確な「保険方式」こそ、将来の年金財政を安定させる
堀 勝洋(上智大学法学部教授)
(2004年)厚生年金の債務超過に目を向けよ――バランスシートが教える改革の道筋
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(2002年)年金危機の本質は世代間対立――拠出税方式なら若者の信頼を回復できる
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(2001年)国民年金は社会保険方式を堅持し、保険料未納者には各種ペナルティを
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(2001年)将来に不安のない年金をつくるには社会保障税を導入した大改革が必要
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◆
議論に勝つ
常識
(2009年)[年金制度改革についての基礎知識]
[基礎知識]いまの年金制度のどこが問題か?
(2008年)[年金制度改革についての基礎知識]
[基礎知識]主要国の年金制度はどうなっているか?
(2008年)[社保庁改革についての基礎知識]
[基礎知識]半世紀にもわたる社会保険庁の堕落の構造とは?
(2005年)[年金改革についての基礎知識]
「未納」で荒れた〇四年年金改革。何が変わった?
(2004年)[年金改革についての基礎知識]
公的年金の“世代間の不公平”をどう解消すべきか?
(2002年)年金改革についての基礎知識
年金は破綻しないか? 老後の生活は大丈夫か?
(2001年)誰もが納得できる公的年金制度を探るための基礎知識
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