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論争を読み解くための重要語
検察審査会
2010.02.18 更新
 「裁判員制度」とならぶ、昨年の司法改革の目玉のひとつが、検察審査会法の改正だった。これによって、いままで検察が独占してきた公訴権(起訴して裁判にかけること)を一般市民も持つことができるようになった。

 検察審査会とは、検察官が下した不起訴処分が適切だったかどうかを、市民が審査し、「起訴相当」(3分の2以上の賛成が必要)か、再捜査を求める「不起訴不当」、あるいは「不起訴相当」か、3つのうちのいずれかの議決をおこなう場所だ。審査員は有権者のなかからくじで選ばれた11人で構成される(いままで54万人が選ばれている)。検察審査会は、全国の地方裁判所(支部を含む)の所在地に置かれ、現在は149カ所に165ある。全国の検察審査会がこれまでに審査した事件は、約15万件。なかでも水俣病事件、羽田沖日航機墜落事件、薬害エイズ事件など、行政の不作為が問題になった事件が知られている。

 昨年5月21日の改正によって、検察審査会で2度にわたり起訴相当の議決がおこなわれたばあいは、強制的に起訴(裁判所が指定した弁護士が検察官に代わって起訴、公判をおこなう)ができるようになった。

 この強制起訴第1号となったのが、01年の兵庫県明石市の花火大会事故で不起訴となった明石署の元副署長だ(1月27日、神戸第2検察審査会によって強制起訴)。また、東京地検特捜部が不起訴とした(2月4日)民主党の小沢幹事長の「陸山会」事件も、2月12日、市民団体から不起訴不当の申し立てがあり、目下、検察審査会の審査の行方が注目されている。

 明石市の花火大会事故とは、01年7月21日夜、花火を見ようと見物客が歩道橋に集中して多数が折り重なるようにして転倒し、11人が死亡した事件。神戸地検がこのとき警備を担当した責任者らを業務上過失致死傷罪で起訴、裁判の結果、兵庫県警明石署地域官ら2人が、1、2審において有罪判決を受けたが(上告中)、副署長は不起訴になった。これに対して、03年、遺族が不服の申し立てをおこなったが、06年6月まで3度にわたり不起訴が言い渡されていた。

 しかし昨年の、法改正を受け、遺族は改めて不服申し立てをおこなった。その結果、09年7月、神戸第2検察審査会は起訴相当を議決したが、それでも神戸地検は「危険性の認識はなかった」として、通算4度目の不起訴処分にした。そこで、11月から2度目の審査が行われ、今回、2度目の起訴相当の議決が出た。

 神戸第2検察審査会は、起訴相当の議決について、「公開裁判で事実関係や責任を明らかにし、事故の再発防止を望む」と意義を強調した。今後、有罪か無罪かは裁判で争われることになるが、実際の公判では、本来被告人の弁護をする弁護士が、今度は攻守ところを変え、訴追役を果たさなければならないため、「畑違いの弁護士が膨大な捜査資料を読み解き、十分に立証できるだろうか」という指摘もある(兵庫弁護士会の春名一典会長・読売新聞1月28日付)。

 過去、起訴相当や不起訴不当の議決がおこなわれたあと、改めて起訴された事件は1400件を超える。なかには不起訴が一転、懲役10年を科されたケースもある。他方、神戸の甲山事件(74年3月)のように不起訴不当の議決を受けて元保母が園児の殺人罪に問われ、20年におよぶ裁判の結果、無罪となり、冤罪がみとめられた例もある。

 検察審査会に詳しい元最高検検事の土本武司筑波大名誉教授(刑法)は、「起訴議決制度は司法の民主化という点で画期的だ。ただ、有罪の確信が得られた場合のみ起訴するという従来の検察官の立場と大きな隔たりがある。起訴の機能が変質しかねず、違和感を覚える」と起訴の仕方が変わることを懸念する。いっぽう、諸沢英道常磐大学教授(被害者学)は「起訴議決により公判が開かれ、被害者参加制度で直接質問できる意義は大きい。有罪か無罪か勝ち負けを意識するこれまでの裁判とは違って、国民感覚に立って事件を解決し、刑事責任を判断するのが大切との視点を打ち出した」と高く評価している(いずれも東京新聞1月28日付)。

関連論文

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私の主張
(2008年)検察権の行使が正しいかどうかは、国民の納得が得られるかどうかである
堀田 力(弁護士、さわやか福祉財団理事長)
(2007年)「秋霜烈日」の精神いずこ――権力意識ばかりが肥大化した検察を糺す
魚住 昭(ノンフィクション作家)
(2004年)検察審査会という最高の会議を知れば、裁判員制度は正しい選択である
佐野 洋(作家)

議論に勝つ常識
(2008年)[検察不祥事についての基礎知識]
[基礎知識]検察が間違いを犯すことはないのか?
(2007年)[検察批判についての基礎知識]
[基礎知識]「国策捜査」とはどんな捜査か?



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