トヨタ自動車の大規模リコール(回収・無償修理)問題は、ついに米国議会の公聴会の場に持ち込まれた。トヨタのリコールを審議する公聴会は、23日午前11時(日本時間24日午前1時)から下院エネルギー商業委員会で開始され、次いで24日午前10時(同25日午前0時)から下院監視・政府改革委員会、3月2日には、上院商業科学運輸委員会でそれぞれおこなわれる。豊田章男社長は24日、下院監督・政府改革委員会の公聴会に出席し、「真に遺憾(deeply sorry)」と謝罪した。
米議会の各委員会は、通常、議員だけで審議をおこなうが、証人(witness)を頻繁に呼んで公聴会(hearing)を開くこともある。公聴会は、証人を強制的に招致したり、虚偽の発言をしないよう宣誓を求める権限をもち、証言(testimony)はすべて証拠となる。公聴会の俎上に上げられる論点は、大別すると法案を審議する「立法」、政策の見直しをおこなう「監督」、疑惑を追及する「調査」、人事などを検討する「承認」に分かれる。トヨタのリコール問題は、このうちの「調査」に入る。公聴会の模様は全米にテレビで生中継されるため、国民の注目度は高く、関係議員が世論向けのパフォーマンスを競い合う政治ショーになりそうだ。
23日の公聴会では、米国トヨタ自動車販売のジム・レンツ社長が証言。焦点のエンジンの燃料弁を制御する電子制御スロットル・システム(ETCS)について「問題がないと確信している」と、急加速の原因との見方を否定した。しかし、フロアマットの不具合やアクセルペダルの欠陥に関するリコールの対応が遅れたことについては過ちを認め、に陳謝した。
過去、世界の公聴会で注目を浴びた公聴会に、証言によってニクソン元大統領の辞任につながった「ウォーターゲート事件」の審議(1973年)、現役のシュルツ国務長官が召喚された、イランへの武器売却をめぐる「イラン・コントラ事件」の調査(87年)がある。また、1976年の上院公聴会は、ロッキード社幹部の証言が田中角栄元首相逮捕の引き金になった。08年12月には、公聴会出席のためにゼネラル・モーターズ(GM)など米3大自動車メーカーのトップが専用ジェット機でワシントン入りしたことに批判が集中、政府の支援が先送りされる事態となった。
今回の公聴会は、今秋の中間選挙を控えているだけに、トヨタ自動車への責任追及は厳しいものとなった。豊田章男社長は米国でMBAを取得していて英語には精通しているものの、証言次第ではブランドを大きく傷付ける恐れがあったため、公聴会では通訳が同行した。いっぽう、ケンタッキーやアラバマなどトヨタの生産拠点がある5州の知事はトヨタ自動車が地域経済の雇用に大きく貢献していることを評価、「公平な対応」を求める書簡を下院に届けた。
日本企業のトップがリコール問題で公聴会に招致される事態になったことについて、アービン・シェンクラー・ニューヨーク大経営大学院教授は「車は、米国では個人主義と自由という社会の基本原理と密接に結びついており、人々は車に強い絆を感じている。トヨタは信頼性で高い評価を確立してきただけに、大きな衝撃となった」と分析している(読売新聞2月23日付)。
作家の高村薫氏は、トヨタが、ハイブリッド車のブレーキが一瞬きかないというユーザーの苦情に対し、感覚の問題であって故障ではないとして、メンテナンス・サービスで対応しようとしたことについて「一昔前なら口が裂けても言わなかっただろう」と指摘。そのうえで「トヨタが急速に経営を拡大し、世界に生産拠点を構えるようになったとき、現地調達部品の品質管理や、汎用部品の綿密な試験などの工程がいくらか簡素化されていったのだろう。これはもはや当否の問題ではない。海外で問題が大きくなるまで国内の顧客への説明がなかったことを含めて、私たちはグローバル化した企業のひとつの姿をみているということなのだ」と強調、「リコールで苦境に立ったトヨタは、ものづくりの神話を捨ててしたたかな世界企業の顔に変わっていくのかもしれない」と分析している(東京新聞2月22日付夕刊、「社会時評」)。
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