個所付けとは、公共事業予算の具体的な配分(たとえば○○道路や△△ダムに××億円など)を決めることを指す言葉で、公共事業費の配分権はおもに国土交通省や農林水産省が握っているため、いきおい、地方自治体や経済界は、霞ヶ関参り(陳情)をすることになる。
通常なら、(1)各省庁からの「概算要求」の後、(2)政府によって「予算案」が決められ、(3)国会で審議し、そして(4)予算が成立すると、「個所付け」の具体的な分配額は各自治体へ伝わるというシステムになっている。
ところが、今回は異例なことに政府は、予算成立前の1月28日、政府が民主党の幹事長室の要求に応じて配分額の情報を提供し、これが党を通じて各自治体に伝えられた。予算が成立する前に、しかも民主党から情報が流れたことで、自民党ほか野党は「選挙のための利益誘導」「国会無視」「情報の漏えいは、国家公務員の守秘義務違反」などと強く反発した。
公共事業は、地方自治体も費用の一部を負担しなければならないため、事前に情報があれば予算が組みやすく、与党議員にとっては、いち早く個所付け情報を入手し、自らの選挙区である自治体に流すことで、選挙の支援を確実にすることができるのだ。
鳩山首相は、「国土交通省から自治体に伝わるべき情報が、党から回ってしまった。利益誘導型政治とか、選挙対策だとか思われてはいけない。今回の行為は遺憾な部分はあった」(1日の衆院予算委員会)と陳謝したが、じっさいに自治体に配られた配分資料によると、民主党県連や知事などから増額要望のあった道路308事業のうち186事業が概算要求のときよりも増額されていた。これに対し、要望のなかった241事業で増額されたのは、17事業にとどまっていた。
鳩山首相は2日に前原国土交通相を口頭注意処分にしたが、前原大臣は、党幹事長室からの要求で個所付けの資料を提供していた。このため、党側には何の処分もないことを訝る声がある。また、前原大臣自身、いままで所管官庁の官僚の判断で決まっていた「個所付け」の額を、国会で明らかにしたうえで審議するのが筋ではないか、との考えを持っていたが、民主党内で反対されたという経緯があった。
前原国交相は「事業評価と仮配分を事前に国会に提出する。国会での議論で、公共事業の透明性と客観性を担保する」(3月1日予算委員会)と新年度以降からは個所付けの透明化に意欲を示すいっぽう、「私に瑕疵(かし)があった。処分は厳粛に受け止めたい」(3月2日の記者会見)と述べた。
今回の個所付け情報の事前開示について、片山善博慶応大学教授(前鳥取県知事)は「政府の対応は、姑息で情けないほど低レベルだ。自民党のほうがまだコソコソと節度を持ってやっていた。レベルの低いインサイダー政治をやめようというための政権交代だったのではないか」(毎日新聞2月6日付)とした。山口二郎北海道大学教授も「公共事業がほしければ民主党に票を入れろという利益誘導政治の発想をここまで露骨に振りかざされると、国民も鼻白む。地方を施しの対象と見るような政党は、まず地域主権などという旗を降ろすべきである」(東京新聞2月14日付)と強調している。
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