どの通信会社(NTTドコモやソフトバンク、KDDIなどのキャリア)でも携帯電話が使えるようにするため、SIM(Subscriber Identity Module=シム、契約者識別モジュール)のロックが年内にも解除されることになった。4月2日、総務省とNTTドコモなど携帯電話の大手4社が原則解除の方向で合意した。
シムとは、携帯電話番号など個人情報が記録された小型ICで、日本の通信会社の携帯電話は、他の会社のシムカードを差し込んでも通信できない仕組みにしている(シムロック)。これが解除されると、利用者は複数の通信会社を自由に利用できるようになる。さらに、通話料の値下げや魅力的な端末の開発がおこなわれ、メーカーの国際競争力の強化につながるといわれる。
シムロック解除を主導した総務省のあげる理由は、「携帯電話市場で日本の孤立を招いてはいけない」(原口一博総務相)、「利用者からの要望が多い」(内藤正光総務副大臣)といった抽象的なもので、なかば強引に解除合意を取り付けたかたちだ。一時は法制化も検討されたが、原口総務相は6日の会見で、「強制をかける考え方ではない」と語り、利用者の求めに応じて通信会社が自主的に解除に取り組むべき、との考え方を明らかにした。
携帯にシムロックがかけられているわけは、通信会社がメーカーから端末をすべて買い上げて販売店に卸し、1台あたり数万円の販売奨励金を支払うことで販売価格を引き下げ、利用者の囲い込みを進めるというビジネスモデルを採用しているからだ。いうなれば、シムロックは、販売奨励金にかかった費用を通信料金で回収するまで(約2年間)解約を防ぐ仕組みとして活用されている。こうしたやり方は世界から孤立、南東太平洋で外部から隔離され独自の生態系をもつガラパゴス諸島にたとえられ、日本の産業の「ガラパゴス化」と呼ばれてきた。
海外では、契約から一定期間(6〜24カ月)を経たあとシムロックを解除するか、最初からロックをかけないシムフリーの販売が一般的だ。域内の移動が活発な欧州では、通話料の安い現地の携帯電話会社に通信契約を切り替え、シムカードを差し替えることで同じ端末を使い続ける人が多い。
しかし、シムロック解除をしても、消費者にとってはメリットよりデメリットのほうが多いという声もある。通信会社が利用者の囲い込みを進める手段を失うため、企業間の競争がさらに激化して、業界が特定の会社に独占されるのではないか、という恐れだ。そうなれば、ユーザーはむしろ多様な選択肢をもてなくなる。以下が、シムロックの解除についての賛否両論。
通信業界に詳しいバークレイズ・キャピタル証券アナリストの津坂徹郎氏
「シムロック解除で、日本の携帯電話メーカーは、ドコモやソフトバンク向けの独自端末をつくることから解放され、海外進出が可能になる。今回の政策はメーカーの海外進出の背中を押す」(日本経済新聞4月3日付)
ソフトバンク社長・孫正義氏
「(シムロックは)いくつかの機種で試行可能だが、販売値引きできなくなり欧米のようにメーカーからの仕入価格に連動し消費者価格が約4万円高騰し販売総数が下落する。ノキアは、日本で(シムロックを)実施した結果4万円値上りし販売下落で日本から撤退した」(4月3日 自らのtwitterで)
ソフトバンクモバイル副社長・松本徹三氏
「シムロックの携帯をメーカーが作らなければならないという法律があるわけではない。シムロックをかけるのは、そのほうが売れると通信会社とメーカーが思っているから。シムロックがガラパゴスの象徴というのは全くの誤解で、世界はむしろシムロックをかける方向に向かっている。日本のメーカーの国際競争力はシムロックと無関係、というのはメーカーが一番よくわかっている」(RBB TODAY 4月2日報道関係者へ向けた説明会で)
NTTドコモ社長・山田隆持氏
「SIMロックに関しては、通信方式、周波数、サービスの問題という3つ問題をかかえている。しかしグローバル端末になってくると、そういう問題はなくなってくると思う。大きな方向はSIMロック解除の方向だ。重要なのは、顧客に周波数の問題などをどう理解してもらい、どう選択してもらうかだ」(RBB TODAY 4月1日付)
KDDI広報部長の古賀靖広氏
「日本の今の垂直統合モデルのなかでSIMロックを解除しようとするのは無理がある。それとは違うビジネスモデル、スマートフォンのような端末を使ったり、LTEを導入したりして、どの仕様もうまく入るのであれば、そういった端末が出てきて、自然とユーザーが乗り換える環境になるだろう」(ケータイWatch 3月31日付)
通信や電波に詳しい・上武大学大学院池田信夫教授
「SIMカードだけ取り替えても他のキャリアの端末が使えるようになるとは限りません。ドコモとソフトバンクの使う周波数が違い、SIMロックを前提にして端末が設計されているからです。ユーザーが望めば、それを解除するのはいいとしても、現状ではそれによって利便性が上がることも競争が促進されることもほとんど期待できない。次世代(LTE)では、こうした互換性に配慮して端末を設計すべきだと思います」(オピニオンサイト「アゴラ」4月3日付)
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