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レベル7
2011.04.14 更新
経産省原子力安全・保安院と原子力安全委員会は、4月12日、東電福島第一原発の事故の深刻度評価を、国際的な原発事故評価尺度(INES)で最悪の「レベル7」に引き上げることを発表した。INESは、国際原子力機関(IAEA)と経済開発協力機構(OECD)の原子力機関(OECD/NEA)が1992年に策定したもので、
事故の深刻度を健康や環境への影響の程度も考慮してレベル0から7までの8段階に分類し、レベル1から3は「異常な事象」、レベル4から7を「事故」としている。
このうちレベル4は、原子炉の炉心が損傷し、一般住民に数ミリシーベルトの被曝がある「局所的な影響を伴う事故」で、1999年の茨城県JCOウラン加工工場臨界事故がこれに相当する。レベル5は、数千ベクレルの放射性物質が外部に漏れる「広範囲な影響を伴う事故」で、1957年の米スリーマイル島原発事故がこれに相当。レベル6は、放射性物質の放出が数千〜数万ベクレルに達する「大事故」、そして
レベル7が、放射性物質の放出量が数万ベクレルを超える「深刻な事態」で、1986年に起きた旧ソ連チェルノブイリ原発事故のような最悪の事故を想定している。
保安院は、3月11日の大震災による福島第一原発事故の発生直後は、暫定的にレベル4と評価したが、その後、複数の水素爆発が起きるなど事故が悪化したことから、3月18日にはレベル5に引き上げていた。今回、さらにチェルノブイリ事故並みのレベル7に引き上げたのは、新たなモニタリングの測定結果や原子炉の状態などの解析結果から改めて保安院と原子力安全委員会が試算したところ、大気中に放出された放射性物質の総放射量が保安院の概算で37万テラベクレル(テラは1兆)倍、安全委員会発表値で63万テラベクレルに達し、レベル7(数万ベクレルを超える値)に当たることが判明したからだ。
ちなみに同じレベル7でも、チェルノブイリ事故の放射性物質の総放出量は、520万テラベクレルと計測されており、福島第一原発事故(=37〜63万テラベクレル)のおよそ10倍におよぶ。逆にいえば、福島第一原発事故の放出量はチェルノブイリ事故の1割程度ということになる。
保安院の発表もこの点を指摘し、「チェルノブイリとは違う」ことを強調した。
この発表について、国際社会の受け止め方は複雑だ。
IAEAのフローリー事務次長は、12日の記者会見で「チェルノブイリ原発事故は運転中の原子炉そのものが大きく爆発したが、福島第一原発の事故では地震で原子炉は運転停止し、原子炉内の爆発は起こっておらず、2つの事故の構造は大きく異なる」
と述べ、日本政府がIAEAに提出しているデータについても「信頼できるものだ」として日本政府の「放射線物質の放出量は、チェルノブイリの10分の1」とする日本政府の分析は妥当であるとの見方を示した(NHKニュース4月13日)。また、米原子力規制委員会(NRC)のヤツコ委員長も、4月12日、記者団に対して「日本当局の決定について、何も驚きはない。非常に深刻な事故であることは明らかだ」と異論を唱えることはなかった(日本経済新聞電子版4月13日)。
しかし、ロシアの国営原子力企業ロスアトムのノビコフ報道官は12日、レベル7への引き上げは「リスクの過大評価」とし、「国民からの批判を避けるのを狙った、いき過ぎた政治的な判断」だとする見方を明らかにした。また、米紙ニューヨークタイムスは、「レベル7の公式確認に1カ月もかかったことがもっとも驚き」という米専門家の見解を載せ、日本政府の動きの遅さを強調するなど、海外メディアでは、日本政府の対応の遅れを批判する声が少なくない(日本経済新聞電子版4月13日)。
菅直人首相は、12日の記者会見で、レベル5からレベル7への引き上げに時間がかかったことについて「遅れたとか軽く見たということはない」と釈明し、国民の不安を払拭するための配慮なのか、「今日の状況だけを見れば(事故処理は)一歩一歩前進をしている。放射性物質の放出も少なくなってきている」と述べた(日本経済新聞4月13日付)。
このレベル7引き上げを発表した前日の4月11日、枝野幸男官房長官が福島第一原発から20キロ圏外の一部地域(福島県葛尾村、浪江町、飯舘村と、南相馬市の一部、川俣町の一部)をあらたに「計画的避難区域」に指定したばかりだった。これまで政府は、半径20キロ圏に「避難指示」を出し、20〜30キロ圏には「屋内待避指示」を出したうえで自主避難を要請してきた。
今回もうひとつ加わった指示は、
半径20キロ圏より外側の地域で累積放射線量が事故発生から1年間で20ミリシーベルトに達する恐れのある区域を「計画的避難区域」として指定するというもので、この区域指定を受けると、原子力災害対策特別措置法にもとづいて市町村、県、国は、連携して避難者の受け入れ先や避難経路、避難手段などの避難計画を作成する責任を負うことになる。
政府はエリアの決め方が実態とは違うとの地域住民の批判を受け、これまでの同心円状に決める機械的なやり方から、測定された放射能量や風向きや地形の影響を考慮して決める方向へ転換を余儀なくされたというのが現実だ。
また、枝野官房長官は、原発から20〜30キロ圏のうち、今回の、「計画的避難区域」に指定されなかった地域を、これまでの「屋内待避指示」から「緊急時避難準備区域」に切り替える方針を発表した。そこで生活してもよいが、緊急の場合は、屋内待避や避難ができるよう前もって準備をしておく必要がある区域というのが、その説明である。この対象となるのは、福島県広野町、楢葉町、川内村、田村市の一部、南相馬市の一部で、いわき市(一部が30キロ圏内にかかる)は、屋内待避指示が解除される見通しだ。
こうした特別区域の追加は、当該の地域住民を混乱させるばかりか、周辺住民の不安をさらにかき立てることにもなる。
菅首相が原発の事故処理についていくら、「一歩一歩前進をしている」と楽観論を示しても、国民からすれば「それなら、なぜレベル7に引き上げたり、避難区域を拡大するのか。もしかすると事態はさらに悪化しているのではないか」と疑心暗鬼になって不思議はない。
折も折、菅首相は13日、首相公邸で松本健一内閣参与に、福島第一原発周辺の避難対象の区域について、「当面住めないだろう。10年住めないか、20年住めないのかという話になってくる」と語った、という報道が流れた(読売新聞電子版4月13日)。その後、松本氏は「発言は私の推測だ。首相は言っていない」と否定した(読売新聞電子版同日)が、避難したはいいがいつ戻れるのか、はたして農業は続けられるのか、悶々と不安な日々を過ごしている対象地域の人々は、このニュースをどう受け取っただろうか。避難した福島県の人たちを内陸部に住まわせるエコタウン構想を語るなかでのやりとりだったようだが、そのエコタウンはいったいいつできるのか。
公式には楽観論を語り、私的な場では悲観論を口にする。それが外部に漏れると、今度は、そんなことは言ってない、と気色ばむ――リーダーとしての器量が問われているゆえんである。
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