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放射能安全証明書
2011.04.28 更新
 NYの国連本部では、チェルノブイリ原発事故から25年目にあたる4月26日、パンギムン事務総長が出席して犠牲者を追悼する追悼行事が開かれた。そのあと、ウクライナ政府などの主催で開かれた会合で、日本の西田恒夫国連大使は、福島第一原発の事故について「日本はIAEA(国際原子力機関)などから多大な支援を受けており、今後も国際社会と協力しながら一日も早い事態の収拾を目指す」と説明したうえで、「福島第一原発ではチェルノブイリの事故とは異なり、原子炉そのものは爆発しておらず、放出された放射性物質の量もはるかに少ない。日本への渡航制限といった過度な対応はとらないでほしい」と訴えた(NHKニュース)。

 西田大使がチェルノブイリ事故との違いを強調したのは、福島原発の事故では実際には被曝によって死亡した人はなく、周辺住民に被曝による健康被害を受けた人もいない状況にもかかわらず風評被害が拡大し、日本船舶の入港制限や日本産食品の輸入禁止、さらには工業製品の輸入に際しても放射能検査を厳格化する国が相次いでいるからだ。

 風評被害がここまで拡大した背景には、福島第一原発による放射能汚染をことさらに過大に報道し、不安を煽ってきた外国メディアに責任の一端がある。4月21日付の国際英字紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューンに、「放射能の日本」と見出しのついた新聞を手にした白雪姫が、老婆の魔女が手にするリンゴを虫眼鏡で見ながら「ちょっと待って、日本から来たの?」と険しい顔でたずねるという漫画が掲載されたのも、その一つだ。これには在NY総領事館が「日本からの食品に関して根拠のない不安をあおりかねない」と、同紙の親会社のニューヨーク・タイムズ社に抗議し、同紙は4月25日付の紙面で謝罪した。

 いま、福島原発事故による放射能汚染を懸念して、日本からの旅行者や船舶について放射能検査を実施したり、日本の輸出品に対して何らかの輸入規制を実施している国は、EUを含めて世界で30カ国・地域に及ぶ(農水省ホームページより)。このうち19カ国・地域では、放射線量の検査結果をしるした日本政府発行の放射能安全証明書の提出を要求している。検査結果がその国の許容水準の上限を超えた場合は、もちろん輸入禁止だ。

 許容水準の上限は各国それぞれに設定され、世界共通の安全基準は存在しない。政府の外郭機関である日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、たとえばEUが世界的にも厳しい日本の安全基準に合わせて4月12日に更新した許容水準の上限は、放射性ストロンチウムがベビーフードで食品1sあたり75ベクレル、乳製品で125ベクレル、飲料水で125ベクレル、その他の食品で750ベクレル。放射性ヨウ素が、ベビーフードで100ベクレル、乳製品300ベクレル、飲料水300ベクレル、その他の食品2000ベクレル、畜産物2000ベクレル。セシウムがベビーフードで200ベクレル、乳製品で200ベクレル、飲料水200ベクレル、その他食品500ベクレル、畜産物500ベクレルとしている(ジェトロホームページ)。

 安全基準の設定と同時に、数値に関わりなく特定の県産の食品を輸入禁止としている国もある。米国は、米食品医薬品局(FDA)が3月22日に福島原発の事故による放射能汚染を懸念して福島、茨城、栃木、群馬の4県で生産された原乳や乳製品、生鮮野菜・果物の輸入を差し止めることを発表し、いまも解除していない。

 中国も、中国国家品質監督検査検疫総局が4月8日、当初は福島、栃木、群馬、茨城、千葉の5県産に限定していた日本製食品の輸入禁止対象地域を東京、長野、山形、宮城、新潟、山梨、埼玉を加えて12都県に拡大することを発表。輸入禁止品目は、放射能検査結果の数値いかんにかかわらず食品全体と飼料とした。それ以外の道府県産の食品については原産地証明および専門機関による放射性物質検査検疫証明を付与することを義務づけている。実質上、日本の食品全体を輸入禁止にしたといってよい。

 事情は韓国も同じで、韓国食品医薬品安全庁は4月14日、これまでの福島、茨城、栃木、群馬、千葉に加えて静岡、新潟、神奈川、山形、埼玉、長野、宮城、東京で生産された一部農産物(韓国が指定)の輸入を禁止し、それ以外の食品については放射能汚染の安全性に関する証明書を日本政府に求める方針を明らかにした。このほかイタリアや台湾では、工業製品についてもサンプリング調査をおこない、ベルギーは日本車を、香港は化粧品まで放射線量検査の対象に加えた。

 しかし、日本には食品に含まれる放射性物質の検査が可能な政府機関は、厚生労働省関係機関の国立保健医療科学院(埼玉県和光市)など4行政機関と、(財)日本食品分析センター(東京都多摩市)、(財)食品環境検査協会の2登録検査機関の合計6カ所があるだけだ。福島第一原発事故の発生後、これらの機関には検査依頼が殺到している。いつもは年間で50件ほどの検査をおこなってきた日本食品分析センターでは、事故発生後1カ月で検査依頼件数が2000件を超えたという(産経新聞4月25日付)。他も推してしるべしで、現状では殺到する検査依頼を6カ所の検査機関ですべて処理するのは不可能にちかい。検査機関は自治体も所有しているが、いずれも国内に流通する食品の検査に追われて、とても輸出品の検査にまで手が回らないのが実情だ。

 中国や韓国は、4月24日に開かれた日中韓貿易相会合で、日本側が風評による農水産物の輸入規制を解除するように求めたのに対して、「科学的根拠に基づいて規制している」と輸入規制を解除する姿勢を見せなかった。中国や韓国、EUなどが求める「放射能安全証明書」を大量に発行する体制の整備、さらには外国に対する安全性のアピールが急がれているが、対策は遅々として進んでいない。

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