東京大学工学系研究科の加藤泰浩准教授(地球資源学)らの研究グループは、太平洋の深さ3500〜6000メートルの海底に、レアアースを大量に含む鉱床が存在することを、英国の科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス」(電子版の7月4日版)に発表した。日本や米国が参加する国際深海掘削計画の一環で、このときボーリング採取した海底堆積物の試料の組成を分析した結果、わかったもの。
レアアース(希土類元素ともいう)とは、スカンジウム、イットリウム、ランタンなど17の元素の総称で、18世紀に新鉱物の中から新たな物質として発見された。ハイブリッド車のモーターや液晶テレビ、LED照明などハイテク素材に少量添加するだけで性能が飛躍的に向上することから、「産業のビタミン」と呼ばれる。
アメリカ地質調査所によると、レアアースは、アメリカ、オーストラリア、インド、ブラジル、中国などに分布し、埋蔵量は約9900万トンといわれる。世界の産出量は、12万4000トン(2009年推定)で、このうち、中国(内モンゴル)の産出が9割を占める。日本の需要は年間2〜3万トンで、その9割を中国からの輸入に頼っている。
今回、鉱床が発見されたのは、仏領タヒチ付近の南東太平洋と、ハワイ付近の中央太平洋で、400ppm以上の濃度のレアアースを含む泥が分布していた。両海域の計1100平方キロメートルの総レアアース量は、世界の陸上埋蔵量1億1000万トンの800倍にあたる約880億トンとわかった。2キロ四方の埋蔵量で、日本の年間需要約3万トン(世界の生産量の24%を消費している)がまかなえることになる。ただ鉱床の大半が公海にあり、国際海底機構に申請すれば鉱区の獲得は可能だが、資源としての採掘例がないため、国際的な合意形成には時間がかかるとみられている。
今日、中国が国際市場で寡占化を果たした背景には、1980年代に外貨獲得のため市場に参入した中国が過剰に供給した結果、価格が低迷し、採算が合わなくなった西側企業が相次いで撤退、米国の有力鉱山も、環境問題を理由に採掘を休止してしまったという経緯がある。21世紀に入ると、競争相手のいなくなった中国は、自国の資源を保護するとともに内需を拡大し、高付加価値製品への輸出へとシフトしはじめた。レアアースやレアメタルの輸出について、年々制限を強めているのは、国際競争を優位に運ぶためだ。
これについては、欧米からも批判も多く、7月6日には、WTO(世界貿易機関)が、アメリカやEUなどによる中国の鉱物資源の輸出制限についての提訴を認め、「中国はWTOのルールに反する」との判断を示した。
中国からの輸入に依存する日本が、あらたな「元素戦略」の構築を迫られることになったのは、尖閣諸島における中国漁船拿捕事件で、中国が日本に対してレアアースの禁輸(2010年9月から11月)に踏み切ったのがきっかけだった。海底鉱床発見のニュースは、日本が将来の安定確保を目指して、インドの漂砂、ベトナムやオーストラリアのカーボナタイト、カザフスタンのウラン鉱床残渣など代替地の確保をはじめ、あらたな鉱山の開発、資源の備蓄、脱希土類技術およびリサイクル技術の開発に着手しはじめたところに届いたのだった。
今回の鉱床発見について、加藤准教授は、「中国の市場独占を打破する可能性を秘めた“夢の泥”は必ず日本の役に立つ。今後は日本の排他的経済水域(EEZ)内でも発見を目指す」(産経新聞7月4日付)と語る。ただ1000メートル以深の海底資源の採掘は、現段階では技術的にむずかしいのも事実。秋山義夫・資源地質学会会長は、「将来的には価値の大きい研究だ。ただ、海底資源の経済的な採掘技術は未確立で、陸上採掘とくらべ、コスト競争力が課題になる」(産経新聞同日付)と、クリアすべきハードルのあることを指摘している。
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