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論争を読み解くための重要語
原発ストレステスト
2011.07.14 更新
 停止中の原発を再稼働させるにあたって、7月11日、菅首相は、EU(欧州連合)でおこなっているストレステスト(耐性評価)を参考に、わが国でも全原発を対象に同様のテストを実施すると表明した。評価は、2段階でおこなうとしている。第1段階は、現在停止中の原発を再稼働するかどうか、判断材料を提供するためのテスト、第2段階は、現在運転中の原発を継続するかどうかについてのテストで、目下のところ、テストを実施するという以外は、内容や時期、さらに判定体制や結果の扱いについても不明だ。

 福島第一原発の事故以来、電力事情が逼迫しそうな現状を受けて、政府は、海江田経産相が浜岡原発以外の原発の安全宣言をおこない、再稼働を各自治体に要請したばかりだった。しかし、菅首相が唐突にストレステストの導入を言い出したため、政府としては「統一見解」を出さざるを得なくなったという事情がある。この「2段階評価」が、原発早期稼働派と慎重派の妥協の産物だといわれるのはこのためだ。

 この内閣不統一について、「国に現実的なエネルギー政策がないため、国民が混乱している」(全国知事会にて福井県の西川一誠知事)ほか、各自治体からは批判が続出。経団連の米倉会長も、「こんなバカな話は考えられない。(電力供給が低下すれば)国内の設備投資は止まり、雇用の継続ができるか疑問だ」と、政府を厳しく批判した。

 EUが6月から始めた原発のストレステストは、福島原発で発生した「想定外」の事態が念頭にあった。具体的には、これまで原発の設置や運転の目安としていた安全基準を超えた状況が部材や装置を襲った場合、どのような兆候が現れ、限界症状を呈するのか、その結果、発電システムがどのよう破壊されていくか、をコンピュータシミュレーションによって解析するというものだ。

 EUのテストは、地震や風水害はもとより、航空機墜落、テロ攻撃からの脅威、原子炉冷却装置や使用年数もその対象とするなど、以下のように広範囲にわたっている。
(1)天災:地震、洪水、極端な低温、極端な高温、雪、氷、嵐、竜巻、豪雨、その他。
(2)人の起こす危険(失敗、行為):飛行機墜落、原発近辺での爆発(ガスコンテナー、近くでのタンカー爆発)、火災、テロ攻撃(飛行機により突っ込み、爆弾)。


 手順は、(a)プレアセスメント(原発の操業責任者がストレステストの質問に答え、証明する資料や研究、計画を提出する)、(b)ナショナル・レポート(各国の規制当局が、上記回答が正しいかどうかチェックする)、(c)ピア・レビュー(多国籍チームが(2)をレビューする)の3段階でおこなわれる。評価チームは、欧州委員会の1人と27カ国の規制当局から派遣された6人の合計7人から成り、現地訪問もおこなうことになっている。

 福島原発事故を実地検分したEU加盟27国のエネルギー相らは、すでに3月21日に緊急会合を開き、25日には欧州委員会が欧州原子力安全規制機関グループ(ENSREG)と協議し、域内143基の原発すべてを対象とした統一基準によるストレステストの検討に着手している。さらに5月には、「包括的なリスクと安全性評価の規模および手順」について合意がなされ、6月1日よりテスト開始の運びとなった。

 各国の事情もあって、テストの日程は予断を許さないが、予定では2012年4月をもってテストを完了し、6月のEU 理事会で報告と承認を受けるとされている。この点、菅首相が表明したストレステストには、具体的な明示がなく、とてもEUのテストを検討したとは、思えないものだった。

 EUには、今回の大規模なストレステストを通じて、現状の把握と同様に、新しい安全基準への道筋をつけ、原子力分野におけるグローバルスタンダード(国際標準)を揺るぎないものにしようとする狙いがある。すでに、ロシア圏や途上国へも原発安全性の再評価(ストレステスト)を呼びかけ、賛同を得つつある。

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