民主党は、1月17日、政治改革推進本部総会を開き、(1)衆院の「一票の格差」是正のために、現在3選挙区ある山梨、福井、徳島、高知、佐賀の小選挙区をそれぞれ1つ減らして2選挙区とし、区割りも変更する(0増5減)、(2)歳費や政党助成金などの削減のために比例定数を180から100に削減する(80削減)、(3)人口の小ない県を優遇する、いわゆる一人別枠方式を廃止する、(4)選挙区の区割りの見直しを検討する衆院選挙区画定審議会の勧告期限を2月25日から半年延長する、などを盛り込んだ公職選挙法および衆院選挙区画定審議会設置法の改正案を正式決定した。
この案によれば、衆院の総定数は現行の480から395(85減)となる。内訳は小選挙区が300から295(5減)に、比例定数が180から100(80減)に減少する。比例定数削減の内訳は、北海道ブロックが8から4に、東北が14から7に、北関東が20から11に、南関東が22から13に、東京は17から10に、北陸信越は11から6に、東海は21から12に、近畿が29から16に、中国が11から6に、四国が6から3に、九州が12から21へと、定数は各ブロックでほぼ半減する。民主党としては、社会保障と税の一体改革を断行するにあたって、1月24日から始まる通常国会に国会議員も自ら身を削る意のあることを示すため、まずはこの改正案を提出し、国民の理解を得る狙いがある。
民主党がこの改正案を決定したもう一つの背景には、最高裁大法廷が「一票の格差」が最大2.3倍の状況下で実施された2009年8月の衆院選を「違憲状態」とし、「一人別枠方式」もやめるべきとした違憲判決がある。以来、「一票の格差」解消は、喫緊の政治課題となっていた。それまで「衆院で最大3倍、参院で6倍未満なら違憲とはいえない」という判断基準を示してきた最高裁が、2009年の衆院選を「違憲」と判断したのは、いつまでも抜本的な是正をしない国会に対する世論の厳しい批判を考慮したためだといわれる。その是非はともかく、最高裁の判決が出た以上、早急に是正しないかぎり、次の衆院選は実施できない。最高裁判決を無視して旧定数のまま衆院選を実施すれば、最高裁はその選挙を無効と宣言することができるからである。
民主党は、この最高裁判決を受けて、小選挙区については、格差を2倍未満に抑える「5増9減」または「6増6減」案を検討していたが、菅内閣で棚上げ状態になっため、この宿題は手つかずのまま野田内閣の手元に残されてしまった。東日本大震災や原発事故による政治の混乱も拍車をかけた。この結果、次回衆院選のための新たな選挙区の区割り案を勧告する期限が、2月25日に迫ってしまったというのが現実だ。
そこで民主党は野党の合意を取り付けるために、当時の自民党案だった「5減」を丸呑みすることに転換した。
しかし、小選挙区「0増5減」とワンセットで提起した比例定数の「80削減」は、民主党が2009年衆院選マニフェストをそのまま抜き出したものにほかならない。もしこれが実現すれば、現行の選挙制度では、小選挙区に強い民主党と自民党だけが一定の議席を確保し、他の野党(公明党、共産党、社民党、みんなの党、国民新党、新党大地)は、いずれも議席を失うか、半減する憂き目にあう。
公明党の井上幹事長は、1月18日の自民党との幹事長・国会対策委員長会談で、「比例定数の大幅削減は少数政党の存続を否定することになる」として、民主党案を拒否する考えを伝えた。「80削減」で影響を受けないはずの自民党の石原伸晃幹事長も「80削減に賛成しない」と述べ、公明党と足並みをそろえる姿勢を示した(読売新聞1月19日付)。
とりわけ公明党は、かねてから、選挙制度を小選挙区比例代表並立制から小選挙区比例代表連用性に変えたいと主張してきた。選挙区での議席獲得数に応じて比例配分を減らす連用性を導入すれば、公明党はじめ、みんなの党、共産党など少数政党は現有議席よりもはるかに議席増が望めるからだ。そうした選挙制度の抜本改革を議論しないで、定数削減だけ提起しても議論の土俵には上がれないという立場だ。
1月19日に開かれた与野党の幹事長・書記局長会談では、自民党も公明党もともに民主党が呼びかけた社会保障と税との一体改革についての与野党協議に応じないことを表明し、国会議員の定数是正についても昨年から協議を続けてきた衆院の選挙制度を協議会の場で議論していくとして、特別な与野党協議には応じないことを明らかにした(NHKニュース1月19日)。このため、今回の民主党の「一票の格差」是正と定数削減法案が、24日から始まる通常国会で成立するかどうかは、きわめて不透明になっている。
いっぽう、社会保障と税の一体改革を前に、岡田克也副総理が打ち出している「議員歳費8%以上の削減」も、当の民主党内で輿石東幹事長が反対し、暗礁に乗り上げている。国会議員1人当たりにかかる費用は、歳費の2200万円のほか、文書通信交通滞在費、公設秘書人件費、政党交付金、立法事務費、JR無料パスと航空券など、年間約1億円の税金がつぎ込まれている。野田佳彦首相は、国民に負担をお願いする前に、国会議員も身を切る覚悟が必要と訴えてはいるが、党内の内紛のあおりと野党の抵抗を受けて、このままでは行財政改革は何一つ進まず、総辞職に追い込まれることもありうる事態になってきた。
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