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論争を読み解くための重要語
廃炉
2012.01.26 更新
 1月24日、政府は原発の運転期間や規制官庁(原子力規制庁)の新設を盛り込んだ原子力安全改革法案を閣議決定した。原発の運転期間については、劣化を考え、原則40年とするが、電力会社など事業者が希望し、かつ安全基準に適合し、さらに環境大臣が認めた場合、1回にかぎり最長20年の延長を認めることになった。

 原子炉の寿命は、ひとえに核反応を閉じ込めている圧力容器にかかっているといわれる。周辺設備はひびや腐食、摩耗など経年劣化のデータから設計強度を下回る時点が予測され、そうなる前に補修や更新を実施できる。ところが圧力容器(原子炉)は、いったん核反応が始まれば手入れは不可能だ。メンテナンスなしに継続使用できるよう丈夫につくり、その作動状況を厳重に監視することで安全を確保しようというのがこれまでの考えだった。しかし、それでも原発が老朽化していく不安はぬぐえない。現在の原子炉等規制法は、運転開始から30年を迎える前に、事業者に、高経年化に伴う技術的評価をおこなうことを課し、以降は10年刻みで原子力安全・保安院が審査し、運転の許可を出すとしてきた。だが、今回の法案は、例外は認めつつ40年という運転期間の上限を初めて設定したことになる。

 そこでクローズアップされてきたのが原発の廃炉問題である。いまわが国の原発は続々と退役する時期を迎えている。事故で解体が決まった東電福島第一原発の4基を除いて、営業運転開始からすでに40年を超えている原発が2基ある(関電美浜1号、日本原電敦賀1号)。また、あと10年で運転期間40年を経過する原発が12基、同じく20年後で20基となっている。また、すでに2001〜2020年までに作業予定の日本原子力発電東海原発(定格16.6万kWh)、2003〜2029年までに作業予定の日本原子力開発機構(旧日本原子力研究所)敦賀原発「ふげん」(定格16.5万kWh)の解体も始まった。

 IAEA(国際原子力機関)は、廃炉方法について完全密封、遮蔽管理、即時撤去解体を指針に掲げているが、わが国もそれを踏まえつつ、通常の廃炉工程を以下の(1)〜(4)とし、その期間として30年前後を見込んでいる。(1)運転停止・燃料抜き取り、(2)系統除染・安全貯蔵、(3)設備解体撤去・廃棄物分別処理、(4)建屋解体・跡地整理。米国などではこの工程を10年程度でおこなっているケースも多い。あくまで安全性が前提だが、わが国でも廃炉工程をどう短縮するかは大きな課題となる。

 ではこの工程にどんな課題が残されているのか。(1)では残留放射能の除染と自然減を待ち、建屋・設備は原位置を動かさず5〜10年間放置するとしている。しかし東電福島第一原発1〜3号機では、もっとも強い放射線を放つ燃料体がメルトダウンによって損傷し移動している。この処理のために、放置期間は通常より長くせざるをえない。(2)では内部の設備の解体作業が先行。放射性物質を外部に飛散させないため建屋は残される。そこでは、安全・迅速な解体技術、ロボット作業の習熟、作業員の放射線防護、効果的な作業手順など、いっそうの技術開発が期待されるところだ。(3)では、1基の原発解体で出る50万トンもの鉄やコンクリートのガレキの中から、基準値以下の放射線量の廃棄物を選び出し、一般産業廃棄物にまわすことになるが、そのためにはしっかりした規制解除方針の確立が求められる。残りの汚染物質については、放射線レベルの高低に応じてそれぞれの貯蔵施設(処分場)に収容することになる。わが国では青森県六ケ所村の日本原燃の施設を利用することにはなっているが、法整備や地元との話し合いを含めて、計画はいまのところ進展していないのが現実だ。(4)では放射能で汚染された跡地の復原問題がある。

 世界では120基を超える原子炉が運転をやめ、その多くが解体を待っているといわれる(NHKスペシャル「原発解体」)。しかし、実際に解体工程を完了したのは、米国の14件とドイツの2件を除くと、1996年に解体終了した日本原子力開発機構の動力試験炉(JPDR、1963年わが国最初の原子力発電、定格1.5万kWh)の1例があるにすぎない。

 2002年、日本原子力発電が東海第2原発(定格110万kWh)をモデルにして解体・処分費用を545億円と見積もったことがあるが、実際に解体が始まった東海原発の小型原子炉(定格16.6万kWh)でも、解体・処分費用は930億円と積み上がってきている。東電福島第一原発1〜4号機の解体・処分費用については、周辺の除染費用を含めずに、すでに1兆1510億円という試算が出ている(東電に関する経営・財務調査委員会)。――これから20年、日本は原発から恩恵を得ることなく、ばく大な解体コストを支払うことになる。

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