2007.01.25
山崎マキコの時事音痴 文藝春秋編 日本の論点
●番外編●
番外編 狙われるオタクの財布とギャンブル依存症
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 6回に続いて眉間に縦皺がよるような話を書いていて、疲れた。
 なので今回はちょっと番外編、「パチンコ業界はオタクの財布を狙ってる」という話を書こうと思う。
 わたしは月刊アスキーという、いまはビジネス誌になってしまったけど、以前はPC誌であった雑誌に延々と連載を持っている。かれこれ、7〜8年は持っているはずだ。で、そのなかでコミケのフィギュア版であるワンダーフェスティバルというのを取材に行ったことがあるんだけど、3体買うと10万円突破、みたいな高額フィギュアが怒涛の勢いで売れていた。ワンフェスでお買い物をするときのルールみたいのがあるらしく、みんな手に札束を握り締めての現金決済。速く会計できるよう、他の人に迷惑がかからないよう、本当に手に札束を握って並ぶんである。イチ、ニイ、サン、シ、ゴ、ロク、シチ、ハチ……あ、これで百万円の売り上げだ、何分かかったかな、たったの3分か。暴動が起きそうな勢いでフィギュアは売れて行く。総額1000万は売ったな、というあたりで面倒になって見るのを止めてしまったけど、とにかくそういう勢いなんである。
 また、同人誌の売れ行きというのも、半端じゃない。転売されるような人気のある作家の同人誌が1冊1000円で20ページほどしか枚数がなくても、やっぱり飛ぶように売れて行く。秋葉のメッセサンオーの同人誌館の取材でそれをまのあたりにして、わたしは切なくすらなってしまった。というのも、「ビッグイシュー」というホームレスの人が販売して、その売上の半分を自分のものにできるという雑誌があるのだけど、1冊300円の雑誌を売るのに大の大人が冬の寒空の下、延々頑張っているのをよく見かけるからである。その同人誌、ホームレスの人に委託販売させてあげてくれないか? なんかそう思っちゃったのである。
 森永卓郎先生が書いた『萌え経済学』は読んでないが、萌え市場というのは森永先生が本1冊書けるほどに大きいのだ。オタクは趣味の金に糸目をつけない。それにいまもっとも着眼してマーケットを展開しているのは、パチンコ業界だと思う。
 わたしとパチンコ屋の関係というのは、27歳のころに切れた。なにが転換期になったのかは自分でもよくわからない。当時、「花満開」という機種があったんだけど、「さくら、さくら、やよいの空は、見渡す限り」というメロディーが鳴っていて、それがふっと虚しくなった。はて、わたしはなにをしているのだろう、苦労して稼いだ金をつぎ込んでさあ、だまされてるよね。そう、正気に戻るときがきた。
 以来、ときどきゆり戻しはあったにせよ、急速にパチンコ熱が醒めて、わたしとパチンコの縁は、田舎をドライブしていてトイレに困ったときに駆け込む先、という程度の仲に落ち着いた。つまり縁が切れた。パチンコ屋は街のくすんだ風景にとけこみ、なんの吸引力も持たなくなった。
 ところが、である。
 たしかあれは2年ぐらいの夏だったと思う。わたしがパチンコ屋で足をとめる日が来たのである。
「CRベルサイユのばら」
 そう、あの、池田理代子先生の、少女漫画史上に燦然と輝く名作、「ベルサイユのばら」が、パチンコになっていたんである。



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山崎マキコ自画像
山崎マキコ
1967年福島県生まれ。明治大学在学中、『健康ソフトハウス物語』でライターデビュー。パソコン雑誌を中心に活躍する。小説は別冊文藝春秋に連載された『ためらいもイエス』のほか、『マリモ』『さよなら、スナフキン』『声だけが耳に残る』。笑いと涙を誘うマキコ節には誰もがやみつきになる。『日本の論点』創刊時、「パソコンのプロ」として索引の作成を担当していた。その当時の編集部の様子はエッセイ集『恋愛音痴』に活写されている。
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