2007.02.08
山崎マキコの時事音痴 文藝春秋編 日本の論点
●番外編●
全然役に立たない時事音痴 沖縄より地球温暖化を語る
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 皆様、2週間ぶりにこんにちは。今週は沖縄より原稿をお届けします。
 なぜわたしが沖縄にいるのかというと、カーッと照りつける太陽のもと、気合を入れて小説を書き上げようと思ったからである。じつをいうと書き始めて1年半もかかっている小説があるんだけど、そのあいだに父や母の癌とかがあって、介護しかないような日々を送っているうちに目一杯遅れてしまったのだ。その膨大な遅れを一気に取り戻そうという安直な考えで沖縄まで来たのである。
 なんで沖縄なのか。それはわたしがかかりつけの精神科の先生がこう言ったからである。
「沖縄ってね、全国的にみてとっても鬱病の罹患率が低いのよ。やっぱり日照不足は良くない。沖縄にいったら、鬱病も治っちゃうんじゃない?」
 わたしはこの10年ほど何回沖縄に来たか自分でも忘れてしまうような沖縄のリピーターなのだけど、たしかに、沖縄にいるあいだだけは抗うつ剤を飲み忘れたりする。東京でパソコンにむかって原稿を打ってるときは、うっかり飲み忘れるとパニックになるほど精神的に抗うつ剤に頼っているのに、沖縄に来ると平気で忘れる。これは、沖縄だと仕事をしなくていいせいなのか、沖縄の直射日光のせいなのか、よくわからないのだが、今回主治医の言葉を信じ、きっと沖縄に来れば小説のほうもなんとかなる、と信じて、というか、信じたい一心で、やってきた。するとホテルにチェックインするなりかかってきたのが、ボスこと、日本の論点の編集長の渡辺さんからの電話だったんである。うわあ、直射日光以外は東京にいるのとなんも変わらない環境が沖縄にも。
 で、ボスに、いま沖縄にいます、というと、いきなり言われた。
「どうだね。地球の温暖化が進むと沖縄っていうのはどうなるんだい」
 何を言ってるのかねえ。ただの旅行者に、沖縄の気候が温暖化でどう変わるかなんてわかんないですよ。ちなみに2007月2月7日の午後2時の沖縄の気温は23度だった。わたしは半そでを着て、ホテルのクーラーを効かせた部屋にいる。ぶっちゃけ、暑い。しかしこれが温暖化のせいかどうか判断のしようがない。そういう大局的なことは、気象の専門家に尋ねていただきたい。
 返事に困っていると、ボスはひとりで喋り始めた。
「小生が子どものころは、東京でも冬になると霜柱ができた。それを踏みしめながら学校にいったもんだ。ところがいまの子どもに霜柱を教えようにも、地ベタが土じゃないせいもあるが、霜柱ができない。あと、そこらへんの水溜りはみんな氷が張ったもんだ。それもない。つらら殺人事件ってわかる? 人が殺された。でも凶器が見つからない。それはつららで刺したからだ。凶器はみんな溶けちゃった。そんなミステリーをみんなよく考えただろ? けど、いまどき、つららもない。わたしはね、地球の温暖化でどんな危機が訪れるかとか、そういうのにはもう興味はない。しかしだな、地球の温暖化で四季の移り変わりといった情緒が失われるのは悲しい。で、沖縄はどうなのよ」
 うーむと頭を抱える。
 沖縄はそもそも亜熱帯である。4月から海開きしているような県である。そういう県に来ている旅行者にむかって、沖縄の四季の移り変わりはどうだと尋ねられたって、
「ここ沖縄には、四季というのはどうもないような気がしてならないんですよね」
としか答えようがない気がするんだけど、どうだろうか。




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山崎マキコ自画像
山崎マキコ
1967年福島県生まれ。明治大学在学中、『健康ソフトハウス物語』でライターデビュー。パソコン雑誌を中心に活躍する。小説は別冊文藝春秋に連載された『ためらいもイエス』のほか、『マリモ』『さよなら、スナフキン』『声だけが耳に残る』。笑いと涙を誘うマキコ節には誰もがやみつきになる。『日本の論点』創刊時、「パソコンのプロ」として索引の作成を担当していた。その当時の編集部の様子はエッセイ集『恋愛音痴』に活写されている。
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