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いつまでもデブと思うなよ、と、わたしも言いたい その1
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話題の新書、岡田斗司夫氏著書の『いつまでもデブと思うなよ』を読んだ。岡田斗司夫氏といえば、みずからを「オタキング」と称していたオタク界の巨魁、違う、巨頭である。しかも体重117キロという巨体の持ち主であり、名実ともに、まさに「オタキング」の名にふさわしい快男子であった。
某巨大匿名掲示板界隈では、オタクに対する捨て台詞として「ピザでも食ってろデブ!」ないし「デブでも食ってろピザ!」といった言い回しが流行っていた時期があったが、かつての氏の外観というのは、まさにこの、ピザを食べてふくよかになってしまったオタク男子というイメージにぴったりであった(余談だが、事実、氏はピザが好物であったらしい。本書のなかでは氏のかつての食生活の例として『宅配ピザを頼んだら一人でMサイズ全部食べて、サイドメニューのポテトとかチキンスティックとかアップルパイまで食べていた』と告白している)。
そのオタキングが痩せてしまった。
1年で50キロの減量に成功してしまった。
このため、わたしの周辺の男子のあいだでは、
「オタキングが俺たちを裏切った!」
という怨嗟の声が少なからず上がっていた。わたしは氏の名前は無論知ってはいたし、その外観もインパクトあるから知っていたのだけど、著書を手にしたことがなかった。この一件で氏の影響力の大きさを知るとともに、ダイエットに成功して賞賛される人は数多いけれど、ダイエットに成功して恨まれる人というのは珍しいんじゃないのと驚いた。
これが、あまたのダイエット本を無視して生きていたわたしが、氏の本を手にとった最初の動機だった。そこまで言われるオタキングってどんな人なんだろう。書店で本書を手にとり、ぱらりとめくってみたところ、1年前の岡田氏と現在の岡田氏を比較した写真が目に飛び込んできた。その瞬間、わたしは内心、このように叫んだ。
「ああっ、ふくよかな頃はオタクにしか見えないのに、痩せてからは肩書き通り大学教授に見える!」
『人は見た目が9割』という本が流行っていたのを思い出した。あの本も読んでないんだけど、わたしは自分の心の叫びから、
「たしかにわたしは見た目9割で人間を判断しているのかもしれない」
と思い知らされた。
で、ここからは私事になるのだけど、わたしはこの2年あまりのあいだに、20キロ太った。思い当たる理由はふたつある。ひとつは癌研有明病院の東京會舘である。病院によっては付き添いに「付き添い食」というのを提供してくれるところもあるが、癌研は表向きは完全介護を謳っているので、付き添い食というものが「あってはならない」のである。本当はわたしの父のようにせん妄になった患者なんかには家族の付き添いを要請されるんだけど、完全介護が前提になっているから、付き添い食はない。それでわたしは癌研のなかに入っている東京會舘でデミグラソースたっぷりのビーフシチューとかを、日に最低でも2回は、
「まいうー、まいうー」
と食べていた。付き添いをやってることへのストレスというのは、いま思い出すと半端じゃなかったんだけど、わたしが当時、唯一自分に許していたストレスの解消法というのが東京會舘での食事だったんである。ウェイターの人たちも顔を憶えてくれて、対応も優しく細やかで、
「いつもご苦労様です」
とか、
「今回のご入院はお父様のほうですか、それともお母様のほうですか。本当に大変ですね」
とか、父母ともに癌研にお世話になっているというこちらの事情を承知してくれていて、それとなく労わりの言葉をかけてくれるのも嬉しかった。だから足繁く通った。しかし問題は、ここのうまい洋食というのは、おそらくはすべてカロリーが高いってことである。これから癌と戦うぞと気合入れて太るために来るなら問題ないと思うんだけど、わたしは健康体なんである。術前術後の絶食とかもないんである。貯める一方で使う場所はないんである。それが大問題だった。
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